カスタマージャーニーとは/ジャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーとは、お客さまが商品を認知してから購入・利用に至る過程すべてを指します。それらを形にしたのがジャーニーマップです。

 

ジャーニーマップを作成すれば、顧客の行動や心理を正確に把握でき、適切な戦略が立てられます。

 

ただし、簡単に作れるものではなく、精度の低いジャーニーマップだと役に立ちません。ジャーニーマップの正しい作り方を知っておきましょう。

 

今回は、カスタマージャーニーの基礎知識、ジャーニーマップの作り方と留意点について分かりやすく解説します。

 

1.カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは、「カスタマー:顧客」+「ジャーニー:旅」という意味。お客様が商品やサービスを発見してから検討期間を経て購入に至り、利用した後までの一連の流れを旅に見立てたものです。

 

例えば、広告で自社商品を発見し、比較サイトで価格差を確認してからネットショップで購入、商品が家に届いたら利用が開始され最後には廃棄…このすべての過程をまとめてカスタマージャーニーと言います。

 

2.カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは、カスタマージャーニーの内容を可視化したものです。特徴は、お客様が自社商品と接点を持った時の行動や感情が記載してあること。

 

カスタマージャーニーマップを作るとタッチポイントを線でつなげるので、顧客が体験した流れ全体を把握できます。

 

カスタマージャーニーマップが必要な理由は、消費者行動が複雑になったからです。一昔前なら「テレビや雑誌等で知った商品を店舗で探して買う」こんなパターンが一般的でした。でも、今は商品を認知するきっかけが何種類もあり、すべてのステップで選択肢が増えました。

 

多種多様なプロセスで自社商品が利用されているので、適切なマーケティング施策を実施するのが難しいです。そのため、顧客体験を把握できるカスタマージャーニーマップの重要性が増しています。

 

【例】顧客が商品を認知する手段がSNSだと分かった

→必要な施策「顧客が利用しているSNSのインフルエンサーに新商品の宣伝を依頼する」

 

このように、カスタマージャーニーマップを作成すれば、タッチポイントごとに「売上を上げるためにすべきこと」が見えてきます。他にもメリットがあるので、次はジャーニーマップの利点について詳しく見ていきましょう。

 

(1)カスタマージャーニーマップのメリット

カスタマージャーニーマップのメリットは、この3点です。

 

<カスタマージャーニーマップのメリット>

 

・顧客目線で考えるようになるので効果的な戦略を立てられる

・他部署の関係者ともイメージを共有できるのでスムーズに施策が実施できる

・より良い顧客体験を提供できるので企業のファンが増える

 

◆顧客目線で考えるようになるので効果的な戦略を立てられる

カスタマージャーニーマップのメリットは、顧客目線で考えるようになることです。サービスや商品を提供する仕事をしていると知らず知らずのうちに業界の考え方が染みついて、一般消費者の感覚を忘れがちです。

 

それに、メインターゲットが自分とかけ離れた立場の人の場合は、何を考えてどんな行動をしているかイメージできません。お客様の気持ちが分からないと、的外れな戦略を立てて失敗するリスクが高いです。

 

そんな問題を解決できるのが、カスタマージャーニーマップです。ステップに沿って行動や思考が変化していく過程を追体験できるので、顧客を深く理解できます。

 

重要なポイントは、購買行動の全体像を把握できることです。1つのステップだけを見るよりも、一連の流れをイメージしたほうがお客様の心理を理解しやすいです。ジャーニーマップを活用すれば、効果的なマーケティング施策が立てられるでしょう。

 

また、カスタマージャーニーマップを作成する行為そのものが、顧客目線で考える能力を培うトレーニングになるのもメリットです。何度も繰り返しジャーニーマップを作れば、より正確に顧客の心理を把握できます。

 

◆関係者全員でイメージを共有できるのでスムーズに施策が実施できる

カスタマージャーニーマップの2つ目のメリットは、関係者全員でイメージを共有できること。

 

商品がお客様の手元に届くまでには、企画・開発、営業、マーケティング担当、店舗スタッフ、カスタマーサービスなどたくさんの人が関わります。施策を成功させるためには全員で足並みを揃える必要がありますが、部署が違うと共通認識を持ちにくいです。それに、同じ部署でも認識のズレが生じることが珍しくありません。

 

購買行動の全プロセスを一覧にまとめたカスタマージャーニーマップを用意すれば、部署の垣根を超えて方向性を共有でき、チーム内の相互理解も深まります。そうすれば、スムーズに施策を実施できるでしょう。

 

◆より良い顧客体験を提供できるので企業のファンが増える

カスタマージャーニーマップの3つ目のメリットは、より良い顧客体験を提供できること。ジャーニーマップを作成すると課題が明確になるので、商品やサービスをブラッシュアップできるからです。

 

顧客満足度が高いサービス提供はリピーター獲得につながり、最終的には企業イメージの向上にもつながるでしょう。

 

(2)カスタマージャーニーマップの作り方

ここからは、カスタマージャーニーマップの作り方について説明します。

 

■ペルソナ(ブランドパーソナリティ)の設定

カスタマージャーニーマップの作成で欠かせないのが、ペルソナ設定です。ペルソナとは、自社商品を利用するユーザーを想定したもの。ペルソナ設定では、性別、年齢、職業、経済状況、ライフスタイルなどを細かく想定します。

 

ペルソナ設定が必要な理由は、お客様の行動や考えを正しく把握するためです。例えば、年代によって情報収集の仕方が異なります。若い世代だと新聞を読む人が少ないので、20代向けの商品なら新聞ではなくインターネットを使ったPR活動が適切だと予測できます。

 

年齢設定をしてないと、新商品の宣伝をしたくてもどこに広告を打てば良いかが分かりません。年齢以外の他の項目でも同様の差があるので、細かくペルソナ設定したほうが、的確な施策を立てやすいです。

 

■カスタマージャーニーマップ作成の目的設定

カスタマージャーニーマップを作成する際には、目的設定も重要ポイントです。目的とは、webサイトへの訪問数増加、コンバージョン率の改善、問い合わせ数の増加、リピーター客の増加など。

 

webサイトへの訪問数を増やしたいなら、認知度を上げるための施策が必要。コンバージョン率を改善したい場合は、見込み顧客に購買を促す施策が必要です。このように目的ごとに最適なアプローチが違うので、何のためにカスタマージャーニーマップを作成するかを明確にしましょう。

 

■カスタマージャーニーマップの軸を設定

次は、カスタマージャーニーマップの「軸」を決めます。「軸」とはマップの構成を決めるもの。横軸にプロセス、縦軸にステップごとの顧客行動や心理を記入します。

 

ステップ 商品の認知 商品を購入 商品を利用 商品の利用後
タッチポイント

顧客行動

Web検索

比較サイト閲覧

店舗で実物確認してから購入 自宅で商品を使用 SNSに感想を投稿
顧客心理 水道代を節約できる洗濯機が欲しい

 

自宅まで無料で運んで欲しい

パンフレットの色と違うけど許容範囲内かな…

 

他の洗濯機よりも大きくて圧迫感がある

最初は使い方が分からず大変だった

 

汚れ落ちがイマイチだった

N社の洗濯機に変えて、1ヶ月の水道代が〇円節約できた!
課題 機能や強みをアピールする手段は?

 

配送料を安くする方法は?

正確に商品情報を伝えるための対策は?

 

コンパクトな商品展開が必要?

困った時のフォロー体制は?

 

洗浄力の事前チェックは十分か?

利用者の感想の拡散方法は?

 

利用者の声はどこで確認できる?

 

このようにカスタマージャーニーマップは、横軸と縦軸によって構成が決まります。

 

<横軸の例>

 

認知、興味、情報収取、比較検討、計画、予約、来店、お試し、購入、廃棄、再購入

 

<縦軸の例>

 

タッチポイント、顧客の行動、顧客の思考、購買意欲、自社課題、自社アクション

 

■顧客情報を収集

カスタマージャーニーマップのフレームができたら、次は顧客情報を収集します。

 

<情報収集の方法>

 

・問い合わせ内容やサポートセンターの通話記録を見る

・アクセス解析ツールでサイト上の行動データを見る

・アンケート、インタビュー、満足度調査を行う

 

客観的なデータが不十分だと、実態と違う予測を立ててしまう恐れがあります。現状を正しく把握するために、なるべくたくさんの情報を集めましょう。

 

■ラフにマッピングしてみる

お客様の情報を集めたら、ステップごとに分類してマッピングします。この作業は部署や役職が異なるメンバーを集めて行うと理想的です。立場の違う人が意見を出し合うことで、充実した内容のカスタマージャーニーマップが出来上がります。

 

■物語を作る

ラフにマッピングした後は、情報を整理してペルソナの行動を1つの物語として組み立てます。イラストを用いたり、購買意欲を○△×で表示するなどの工夫をするとストーリーの流れを理解しやすいです。

 

(3)カスタマージャーニーマップの留意点

カスタマージャーニーマップは、事業者の思い込みを排除しないと精度が低い内容になってしまいます。「恐らくこう動くだろう」と無意識に思っていないか常に確認してください。ジャーニーマップを作る時には、徹底的に顧客目線に拘ることが大切です。

 

そのため、できる限りデータに基づいた内容でカスタマージャーニーマップを作成しましょう。顧客情報がない部分については、色々な立場の人の意見を聞いて十分に検証してからストーリーに落とし込みます。

 

また、最初はシンプルな構造のカスタマージャーニーマップからスタートするのがおすすめです。複雑な構造だと十分なデータを集めるのに手間がかかり、情報不足の状態で作成すると正確性に欠けるジャーニーマップしかできません。

 

完成した後に情報を追加してブラッシュアップしていけば良いので、まずは基本形のカスタマージャーニーマップを作ってみましょう。

 

3.まとめ

顧客心理を理解するためには、カスタマージャーニーマップが大変役に立ちます。それに、作成する過程で新たな気付きがたくさんあるはずです。顧客体験を正確に把握できれば、適切なアクションを起こせるのがメリット。お客様の心をぐっとつかむサービスを提供しましょう。

 

注意点は、カスタマージャーニーマップは常にバージョンアップさせる必要があること。タッチポイントも顧客目線も時間の流れと共に変化しているので、内容の見直し作業が必須です。「1年に1回」と決めて定期的に内容を見直すか、商品の改定を行ったタイミングや消費者行動が大きく変化した時などにアップデートしましょう。

 

執筆者:宮林 有紀(みやばやし ゆうき)

医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。