法人の節税方法|役員報酬や決算賞与などそれぞれの節税効果を比較!

起業する際に考慮しなければいけないのが「節税」です。正しい解釈のもとで行う節税は、資金繰りの大きな助けになります。ただし、節税ばかりに集中しすぎると、事業の拡大が難しくなるという本末転倒な結果になってしまうこともあるので注意が必要です。ここでは、法人の節税方法について解説します。節税の本質を理解して、自社に最適な節税方法を把握する参考にしてください。

節税の種類

法人の節税は「永久節税型」と「繰延節税型」に大別されます。同じ節税でも内容が全く違うため、上手に使い分ける必要があります。
引用:公認会計士事務所
引用:法人の節税対策とは? 正しく税負担を軽減する方法
引用:やってはいけない節税

  • 永久節税型
    国の政策による特例制度、所得控除や税額控除を適用することによって実際の税金支払い額が減少し、その効果が永久的に続くものです。人や物への投資もこれに含まれます。この節税について知らずに高い税金を払い続けているケースもあるので、知識をつけておきましょう。
  • 繰延節税型
    繰延節税とは、税金を支払うタイミングを遅らせることを言います。本来は収益が発生した事業年度に支払う税金を、次年度以降に先延ばしする節税方法で、決算の前に行う会社が大半です。繰延した分は後に支払わなければなりませんが、タイミングによっては税額が減ることがあります。

永久節税型

会社を設立したら、まず理解しておきたいのが永久節税の種類です。多くの会社に該当する節税対象項目を以下に4つご紹介します。税務上認められている範囲で有効に活用してください。この他、少額減価償却資産の特例や、消耗品(1個あたり10万円未満)の購入なども節税の対象となります。
引用:法人の節税対策とは? 正しく税負担を軽減する方法

  • 役員報酬
  • 社員旅行
  • 健康診断
  • 旅費規定の作成

役員報酬

取締役、監査役などの役員への報酬は、毎月同額を支給する場合に限り、損金として計上できます。そのため、あらかじめ役員報酬を高く設定しておくことにより、法人税が低く抑えられます。
ただし報酬を高額にしすぎると、役員が支払う所得税率が上がるので注意が必要です。
例えば、所得税・住民税などの最高税率が55%、法人税などの税率が23.2%とした場合、31.8%もの税金を余分に払うことになります。
役員報酬をどう設定するかに関しては、法人税と所得税のバランスをトータルで考えることが必要です。
引用:国税庁
引用:所得税税率4,000万以上は45%
引用:住民税率は一律10%
引用:法人税率
引用:より効果的な節税が可能!?「役員報酬」は控えめにすべき理由

社員旅行

一時は減少していましたが、近年見直されてきている社員旅行。この旅費を福利厚生費として計上できます。条件としては、4泊5日以内で社員の50%以上が参加することなどです。
ただし、社員旅行は必ず税務署に詳細をチェックされ、役員だけでの旅行や規定を超えた長期の日程、過度に贅沢な旅行内容などは認められません。旅費に関しては、社員の給与から旅行積立金として控除することができますが、労使協定に明記しておくことが必要です。
社員旅行費を福利厚生費として計上するためには、旅行の報告書などとともに、明確に福利厚生の一環とわかる書類を作っておくと安心です。
引用:福利厚生費になるもの、ならないものとは?課税対象になる基準も解説

健康診断

社員の健康を守るために会社負担で健康診断を行う場合、一定の条件を満たせば福利厚生費として認められます。基本的に社員全員が受けることが必要ですが「40歳以上は全員受診」などと、一定の年齢以上に限定することも可能です。また、健康診断の内容が常識の範囲内であることや、会社が直接医療機関に対する費用を負担することなどが決められています。社員が費用を立て替えたり、役員だけ費用の高い健診を受けたりした場合は、福利厚生としては認められないので注意してください。
健康診断についても、社員旅行同様、就業規則などに福利厚生であることを明記しておくと安心です。
引用:従業員への健康診断は義務? 経費で落とせるのか? 個人事業主と健康診断の関係とは

旅費規程の作成

法人の場合、出張旅費規程を策定しておくことで節税対策ができます。出張旅費規程とは、出張に関する経費のルールを決めたもので、交通費や宿泊費、日当など各社独自の項目によって決定されます。当てはまるものについては、経費に計上することにより法人税・消費税・住民税を抑えることが可能です。
なお、日当は食費や通信費など、交通費と宿泊費以外の出張経費をひとまとめの固定額にして支給するもので、面倒な実費計算から解放されるだけでなく、経費に計上することによって節税できます。さらに、旅費規程を作成しておくと、支給される側の社員にとっても所得税と住民税が課税されないというメリットがあります。
引用:出張費で節税!?出張旅費規程のメリットと作成の6つのポイント
引用:出張旅費規定を分かりやすく解説!|誰でもわかる出張旅費規程!

繰延節税型

納税の時期を先に延ばすことによって、当年の税の軽減や、有利な資金繰りを狙うのが繰延節税です。単純に先延ばしにしただけでは支払額は減らないので、どのような経費をどのタイミングで繰延するのか、しっかり計画を立てることが重要です。繰延で節税が見込める例を3つご紹介します。

  • 生命保険
  • 決算賞与
  • 家賃年払い

生命保険

法人用の生命保険に加入すると、支払額の全額または半分が経費として計上できます。これを利用すると、加入年度は損金として税金を減らすことができ、将来的に発生する退職金や不慮の事態に、解約して払い戻し金を利用することができます。保険という枠の中に会社の資金を保管することで、経営状況に合わせて税金を支払うタイミングをコントロールする節税法です。また、貯蓄性の高い保険を選ぶことで金利も期待できます。
ただし、高額な保険料を支払って利益を圧縮し、保険料の返戻金で取り返すという手法に歯止めをかけるため、国税庁により令和元年10月に課税水準が改正されたので注意が必要です。
引用:国税庁 節税保険の取り扱い改正
引用:「節税保険」で生保にクギ 国税庁の隠された一手
引用:生命保険契約に加入する

決算賞与

決算の前に賞与を支給することで損金を計上し、法人税額を抑える資金繰りテクニックがあります。収益が一時的に上がった年度などに実行する企業が少なくありません。決算時に未払いであっても従業員全員に賞与支給の事実を通知すること、事業年度が変わってから遅くとも1か月以内に支払うなど、一定の条件を満たせば損金計上として認められます。
決算賞与には必ず税務調査が入るので、早いうちに支払い済みにしておきましょう。また、賞与支給の通知をしてから退職した社員が賞与を受け取っていない場合や支給日在籍要件を適用している場合などは、今期の損金処理として認められないので、賞与の通知を出す前に要件を慎重に確認しておきましょう。
引用:決算賞与による節税対策|要件とメリット・デメリット
引用:利益が出たら「決算賞与」を使って節税する

家賃年払い

地代家賃などの前払いは、継続的に役務の提供を受けるために支出した(前払い)費用であること、支払い日から1年以内に提供を受ける(短期前払費用)、毎期継続して支払い時点に損金処理する、収益の計上と対応させる必要がない、という要件を満たすことによって全額を損金に計上することができます。
ただし、家賃前払いは貸主の許可と契約書への記載が必要なので、契約によってはできない場合もあります。まずは事務所の所有者に年払いができるか相談してください。なお、地代家賃以外にも、保険料、保守料、駐車場代、リース料などが前払い可能です。
引用:保険料や家賃を年払いにして節税対策になる?
引用:「短期前払費用」の特例を活用した節税対策

未払費用・短期前払費用

未払い費用の計上は、決算前に多くの会社が行う節税対策で、家賃前払いもこれに含まれます。債務が確定していることや、金額に合理性があることなど一定の条件がありますが、決算前の経費調整としては有効な方法と言えます。
対象となる項目には、従業員の給与や会社負担の社会保険料、社員が業務で使用した交通費、交際費や宣伝広告費なども含まれます。また、融資などの借入金も、後払いの利息分があれば未払費用として計上できる場合があります。
短期前払費用は、前払費用として支払った費用のうち、支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるものです。前払費用としての要件を備えていること、毎期継続して同様の経理処理を行うこと、収益と直接対応させるものでないこと、といった条件を満たすと損金計上が可能になります。
引用:「未払費用」を活用した節税法とは?
引用:【決算期にできる節税】「未払金・未払費用」を計上するときのポイント

まとめ

法人として事業を行う以上、税金は必ず支払うべきものですが、規則に従い、節税することは可能です。税金のシステムは複雑なので、知識を身につけるのは大変かもしれませんが、自社の手元資金を増やせるチャンスでもあります。積極的に知識を身につけ、活用していきましょう。