売掛債権をスピーディーに現金化できるなど、新たな資金調達方法として注目されているファクタリング。手元現金の不足をできるだけ早く解消したい経営者にとって、魅力的なサービスではないでしょうか。ファクタリングを利用する中小企業も増えていますが、良い点ばかりというわけではありません。
この記事では、ファクタリングの利用を検討している経営者向けに、その仕組みや注意点について、わかりやすく説明します。
1 ファクタリングとは
ファクタリングとは簡単に言うと、売掛債権(売掛金など)の買取業務のことです。依頼企業は決済日前の売掛債権を第三者に買い取ってもらい、その代金を現金として受け取ります。ファクタリングは欧米で発展してきたサービスですが、日本国内にも普及し始め、利用する中小企業は年々増加傾向にあります。
ファクタリングは、従来の資金調達方法(融資やローン)とは異なる特長を持っています。例えば、融資やローンは金融機関から借り入れする際、保証人や担保が必要ですが、ファクタリングは必要としません。そして、その分手続きがスムーズになります。
ファクタリングには、対象とする債権や取引形態などの違いにより、いくつか種類があります。通常ファクタリングと言うと、売掛金などの債権をファクタリング会社に譲渡し、現金化することを目的とする「買取型」を指します。資金調達を目的とする場合は、この買取型を利用することになります。次の章から、買取型の仕組みについて詳しく説明していきます。
2 ファクタリングの仕組み
買取型にかかわるのは、売掛金を支払う「支払企業(売掛先)」と、債権の買取りを依頼する「自社」そして、「ファクタリング会社」の3組織です。
これら3組織のかかわり方によって買取型は、「2者間ファクタリング」と「3者間ファクタリング」とに分けられます。両者の仕組みについて、それぞれ詳しく説明します。
(1)2者間ファクタリング
2者間ファクタリング(以下2者間)とは、支払企業に知らせることなく、自社とファクタリング会社のみでやりとりをする取引形態です。取引きの基本的な流れは次のようになります。
①自社とファクタリング会社が契約を交わす
②自社とファクタリング会社に売掛債権を渡す
③ファクタリング会社が自社に売掛債権の買取金額を支払う
④支払企業は、請求された売掛債権の金額を自社に支払う
⑤自社とファクタリング会社に売掛債権の金額を支払う
2者間のメリットは、支払企業に知らせる必要がないため、支払企業の反応(企業によっては自社に対する債権が第三者に譲渡されることに違和感を持つ可能性があるでしょう)を心配することなく、現金化できるという点です。さらに、資金調達のスピードも早く、即日現金化も珍しくありません。
反対にデメリットは、ファクタリング会社に支払う手数料が、他の資金調達法や3者間ファクタリングよりも割高な傾向にあるという点です。手数料はファクタリング会社によってばらつきがありますが、売掛先の信用度が低い債権になるほど、高くなります。中には、売掛債権の回収で得た利益の25%前後を手数料と設定する会社もあります。
また、債権の買取りを依頼する企業と、ファクタリング会社間の取引きになりますので、自社は売掛金をファクタリング会社に支払う必要があり、振り込み手続き等の手間がかかってしまします。2者間は、支払企業に知らせずに、できるだけ早く資金調達したいという中小企業に向いている取引形態と言えます。
(2)3者間ファクタリング
3者間ファクタリング(以下3者間)は、自社とファクタリング会社、そして支払企業との間でおこなわれる取引きになります。おもな取引の流れは以下のとおりです(カッコ内は、その行動を起こす組織を指します)。
①支払企業からファクタリングの承諾を得て、承諾書に署名・捺印してもらう(自社)
②ファクタリング会社に審査の申し込みをする(自社)
③審査が通った後、自社とファクタリング会社、支払先との間で契約を結ぶ(自社)
④売掛債権の買取金額が自社の口座に振り込まれる(ファクタリング会社)
⑤売掛債権支払期日までに、ファクタリング会社に売掛金を支払う(支払企業)
3者間は、2者間よりも手数料が割安になります。取引に支払企業が参加することにより、ファクタリング会社は、売掛債権を支払企業から直接回収できるため、貸し倒れのリスクが低下するというのがその理由です。貸し倒れのリスクが低くなるということは、審査のハードルが下がるというメリットにも繋ります。
3者間は、はじめに支払企業の承諾を得る必要があるため、2者間よりも資金調達に時間がかかります。また、ファクタリングに対してマイナスのイメージを持っている経営者も少なくなく、「売掛債権を譲渡するとは、資金繰りがかなり厳しいのかもしれない」と勘繰られ、取引先を変えられてしまうリスクも考えられます。
3者間は、支払企業からの同意が得やすく、手数料を抑えて現金化したい中小企業向けの取引形態と言えるでしょう。
3 ファクタリングの注意点
ファクタリングを実際に利用する際に、注意すべき点について説明します。
①取引先との契約上、債権譲渡が禁止されていないかどうか確認する
買取型を利用する場合、債権譲渡が禁止されていないかどうか、必ず契約書を確認しましょう。債権譲渡禁止の条項(債権譲渡禁止特約)が契約書に盛り込まれている場合、原則としてファクタリングの利用はできません。
2017年5月の債権譲渡禁止特約改正で、譲渡禁止の債権は譲渡可能となりましたが、債権譲渡禁止特約を有効と主張する権利(抗弁権)は、債務者に残されています。また、ファクタリングでは、譲渡禁止の売掛債権は、対象外である場合がほとんどですので、契約書に債権譲渡禁止特約が盛り込まれているかどうかの事前確認は不可欠です。
②売掛債権が不良債権になっていないかどうか確認する
売掛金が支払期日通りに支払われなかった場合、不良債権となります。そして、ほとんどのファクタリング会社は、不良債権の買取りを対象外としています。利用前に売掛債権が売却可能かどうか確認しておきましょう。
③ファクタリングの手数料に注意する
ファクタリング会社を利用する際は、事前に手数料を必ずチェックしましょう。設定している手数料は、割高であるだけでなく、ファクタリング会社によって金額が大きく異なるからです。
2者間の手数料の相場は10~30%と、かなり幅が広くなっています。3者間の相場も1~10%と、大きな開きがあります。3者間は、2者間よりも手数料は安くなりますが、選ぶ会社によっては、割高と感じることがあるかもしれません。利用の際は、ファクタリング会社から事前に見積もりを取り寄せ、およその金額を把握することが大切です。
④ファクタリング会社を見極める
ファクタリング会社を見極める必要があるのは、全ての会社が、良心的というわけではないからです。中には詐欺まがいの行為をするところもありますので、慎重に選ぶことが望まれます。
良い会社を見極めるポイントは、法外な手数料を設定しているかどうかもそうですが、極端に手数料を低くしている会社も避けましょう。低い手数料をちらつかせ、審査間際に手数料を引き上げるというケースもあるからです。
会社情報を隠したり、一度も面会することなく契約しようとする会社にも注意しましょう。ホームページに連絡先や会社情報を明記しているかどうか、電話で問い合わせたときの対応はどうかなど、気がかりな点について、事前に確認しておくことが、見極めのポイントになります。
4 まとめ
ファクタリングの意味や仕組み、そして注意点について説明しました。買取型のファクタリングは、現金化のスピードが早く、資金調達方法として魅力的な面を持っていますが、手数料が高く、一般的な資金調達方法とは言い切れません。検討順位は低くなるかもしれませんが、ファクタリングは手元の現金を確保するのに適した方法です。選択する可能性を考え、知識だけは持っておくと良いでしょう。
英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。