山形県の制度融資/中小企業の資金調達のために

山形県で中小企業を営むみなさん。資金調達手段のひとつとして、制度融資を考えてみませんか?

 

制度融資とは地方自治体が中心となっておこなう公的な融資で、山形県には「山形県商工業振興資金融資制度」があります。一般的な銀行などからの融資に比べ、低金利で借り入れできるのが魅力。「開業したばかり」「事業規模が小さい」といった企業でも比較的融資を受けやすく、ニーズに合わせたさまざまな資金メニューが用意されています。

 

今回は、山形県商工業振興資金融資制度の基礎知識や、代表的な資金メニューなどわかりやすくご紹介します。

 

 

1.山形県商工業振興資金融資制度とは

山形県商工業振興資金融資制度は、商工業の振興や地域経済の活性化を目指し、県内の企業へ経営に必要な資金を融資する制度です。

 

山形県、山形県信用保証協会、金融機関、各商工会議所、商工会が連携して行なっており、県が金融機関へ融資原資の一部を預け入れること(預託)により、低金利での融資が実現しています。

 

信用保証協会は、中小企業の資金調達をサポートしてくれる公的機関で、融資を受ける際に「保証人」となってくれます。

 

例えば「創業したばかりで、一般的な銀行からの融資はハードルが高い…」という方でも、信用保証協会が間に入ることにより、比較的、融資を受けやすくなるのです。

 

▼信用保証協会について、詳しく知りたい方はこちら

信用保証協会とは/起業時の強い味方

 

信用保証協会を利用する場合、通常は所定の信用保証料が発生します。しかし、山形県商工業振興資金融資制度とあわせて利用する際には、山形県と市町村が信用保証料の一部を支援してくれるメリットがあります。

 

山形県商工業振興資金融資制度を利用できるのは、県内に本店や事業所のある中小企業者です。個人事業主やNPO法人(一部対象外となる場合もあり)も対象となっています。

 

「自分の事業は中小企業者に該当する?」と悩む方がいらっしゃるかもしれません。

中小企業者とは、中小企業信用保険法で定められた事業者のこと。以下の表を見ていただくとわかりやすいと思います。

 

「資本金の額」か「従業員の人数」、どちらかに該当すれば、融資を利用できます。個人事業主やNPO法人の場合は、従業員数を満たせば対象になります。

 

業種 資本金 従業員
製造業、建設業、運輸業、その他下記以外の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下

<引用元>山形県商工業振興資金融資制度のご利用について

https://www.pref.yamagata.jp/110013/sangyo/shokogyo/shien/17shikin.html

 

 

また、行政庁の許認可が必要な事業は、許認可を得ていることも利用条件のひとつとなっていますので、注意が必要です。

 

取扱金融機関は、山形銀行、山形信用金庫、商工中金(山形支店、酒田支店)などです。この制度が気になったら、まずは最寄りの取扱金融機関へ相談しましょう。

 

<参考>山形県 商工業振興資金融資制度のご利用について

https://www.pref.yamagata.jp/110013/sangyo/shokogyo/shien/17shikin.html

 

 

2.山形県商工業振興資金融資制度の概要

山形県商工業振興資金融資制度には、資金調達の目的や事業状況などに応じてさまざまな資金メニューがあります。その中から、3つをご紹介します。

 

(1)開業支援資金

新たに開業する方、廃業後に再び開業する方へ、運転資金や設備資金を融資する資金メニューです。それぞれの条件などは以下のとおりです。

 

  • 県内で新たに中小企業者として開業する方

「最大5000万円」を、運転資金は「最長10年間」、設備資金は「最長15年間(建物の新築は20年間)」借り入れることができます。

融資利率は、固定金利で「1.2%」ですが、以下に該当する方は「▲0.2%」の金利優遇があり「1.0%」で融資を受けられます。

 

・商工会議所が開催する創業塾(創業ノウハウが学べる)の修了者

・やまがたチャレンジ創業応援事業費補助金を受けた方

・女性

・30歳以下の若者

・55歳以上のシニア

・2年以内に県外から移住してきた方

 

担保や保証人については、取扱金融機関の定めるところによりますので、よく確認しましょう。

 

  • 廃業後5年以内に再起業に取り組む方で、山形県信用保証協会の「近代化資金保証制度(再挑戦支援)」を利用する方

「最大2000万円」を、運転資金・設備資金ともに「最長10年間」借り入れることができます。融資利率は、固定金利で「1.9%」です。

 

担保や保証人については、近代化資金保証制度の定めるところによりますので、よく確認しましょう。

 

<参考>山形県商工業振興資金のご案内(令和3年4月1日)

https://www.pref.yamagata.jp/documents/3321/20210401panfu.pdf

 

 

(2)小規模企業資金

従業員20人以下(商業やサービス業は5人以下)の小規模企業者(※)へ、運転資金や設備資金を融資する資金メニューです。「無担保」や「無担保・無保証人」での融資に特化しており、3種類に区分されています。

(※)宿泊業・娯楽業は従業員20人まで小規模企業者に該当

 

  • 県特……信用保証協会から「少額融資保証制度(県特)」の利用認定を受けた方

「最大3000万円」を、運転資金・設備資金ともに「最長7年間」、固定利率「1.9%」、原則「無担保」で借り入れることができます。利用にあたり、商工会議所もしくは商工会または市町村の意見書が必要です。

 

  • 特別小口……信用保証協会から「少額融資保証制度(特別小口)」の利用認定を受けた方

「最大2000万円」を、運転資金・設備資金ともに「最長7年間」、固定利率「1.8%」、原則「無担保・無保証人」で借り入れることができます。利用にあたり、商工会議所もしくは商工会または市町村の意見書が必要です。

 

  • 小口零細……保証付き融資残高が2000万円以下の方

「最大2000万円(既存の保証付き融資残高を含む)」を、運転資金・設備資金ともに「最長7年間」、固定利率「1.8%」、原則「無担保」で借り入れることができます。NPO法人は対象外となりますので注意しましょう。

 

<参考>山形県商工業振興資金のご案内(令和3年4月1日)

https://www.pref.yamagata.jp/documents/3321/20210401panfu.pdf

 

 

(3)新型コロナウイルス感染症対応資金

新型コロナウイルスの影響を受けて、売上高の減少など経営に支障が出ている中小企業者に対し、経営安定に必要な運転資金や設備資金を融資する資金メニューです。

 

「最大6000万円」を「最長10年間」、固定利率で「年1.6%」と低金利で借り入れできます(※)。

このメニューの取扱期間は、「令和2年2月25日から当分の間」となっていますので、事前に利用できる期間内かどうか確認した方が安心です。

 

メニューの対象となるのは、以下①〜③のいずれかに該当し、信用保証協会の信用保証制度「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」「危機関連保証」のいずれかを利用する中小企業者です。それぞれの信用保証料に関する特徴もまとめました。

 

①【新型コロナウイルス感染症対応資金第1号】

・中小企業信用保険法第2条第5項第4号の認定を受けている

・信用保証制度「セーフティネット保証4号」を利用している

 

「0.85%(ただし経営者保証免除対応適用(※)の場合は1.05%)」の信用保証料は、国により全額補助されます。信用保証協会による責任共有制度の対象外です。

 

 

②【新型コロナウイルス感染症対応資金第2号】

・中小企業信用保険法第2条第5項第5号の認定を受けている

・信用保証制度「セーフティネット保証5号」を利用している

 

信用保証料として「0.85%(ただし経営者保証免除対応適用(※)の場合は1.05%)」かかります。ただし、以下に該当する場合は国により全額補助されます。

・中小企業信用保険法第2条第3項に規定する「小規模企業者」に該当する個人事業主

・中小企業信用保険法第2条第5項第5号の認定書にある「売上高等の減少率が15%以上」の中小企業者

 

上記に該当しない場合でも、保証料の半額は補助してもらえます。信用保証協会による責任共有制度の対象です。

 

 

③【新型コロナウイルス感染症対応資金第3号】

・中小企業信用保険法第2条第6項第4号の認定を受けている

・信用保証制度「危機関連保証」を利用している

 

「0.85%(ただし経営者保証免除対応適用(※)の場合は1.05%)」の信用保証料は、国により全額補助されます。信用保証協会による責任共有制度の対象外です。

 

 

(※)経営者保証免除対応…以下の①②を満たす事業者は、保証料率が0.2%上乗せとなる代わりに、保証人(法人代表者)が不要となります。①直近の決算書が資産超過である②法人とその経営者の資産および経理が明確に区分されており、法人とその経営者の間の資金のやりとりが社会通念条適切な範囲を超えていないこと

 

 

このメニューはすべて、既設定根抵当権を除いて「無担保」で借り入れ可能です。また、保証人については法人の場合、原則として法人代表者(経営者保証免除対応適用の場合は不要)、個人の場合は不要です。

 

なお、①〜③に該当する中小企業者のうち、以下に該当する方は貸付日から起算して3年間は「無利子」となります。

 

・中小企業信用保険法第2条第3項に規定する「小規模企業者」に該当する個人事業主

・中小企業信用保険法第2条第5項第5号の認定書にある「売上高等の減少率が15%以上」の中小企業者

 

 

利用条件が細かく設定されているので、ご自身の事業がどれに該当するのかよく確認しましょう。

 

 

3.まとめ

山形県商工業振興資金融資制度についてご紹介しました。

特に、開業したばかりの方は、資金調達先に悩むケースが多いかと思います。ぜひ、こうした公的な制度も視野に入れてみてください。もし「一人では決断できない」「どのような融資がよいのか、アドバイスが欲しい」といった場合には、資金調達の専門家に相談し、プロの意見を聞いてみるのもおすすめです。

 

 

執筆者:吉田 裕美(よしだ ゆみ)

金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。

お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。