ECの基礎知識/ネットショップ、オンラインショップの活用法

ECとは、”Electric Commerce”(電子商取引)の略で、ネットショップ、オンラインショップなどを通じ、インターネット上でモノやサービスを売買する取引の総称を指します。

 

近年、インターネットやパソコン、スマホやタブレットなどの普及により、ECの経済効果は急激に増大しており、今後のさらなる拡大も見込めるため、ECの利用は1つの大きなビジネスチャンスとなり得るでしょう。

 

とはいえ、いざECをはじめようと思っても、何からはじめれば良いのか、どのような注意点があるのかなどわからないことが多いと思います。本稿では以下、ECの一般的なメリットやデメリット、ECビジネスを始める場合の注意点等について説明します。

 

 

1、ECとは

 

前述の通り、ECとは、Electric Commerce=電子商取引の略で、インターネットを通じてモノやサービスを売買する取引の総称を指します。

 

以前はパソコンを利用した電話回線でのスローな取引しかなく、ECの普及は限定的なものでした。

 

しかしその後、高速インターネットの環境整備が進み、また、スマホやタブレットの急速な普及により、インターネットを利用する消費者の数は急激に増加しました。

 

これに伴いオンライン決済システムや情報セキュリティシステムも発達し、ネットショップやオンラインショップも増加の一途を辿るようになり、今やECは日本経済を語る上で不可欠な存在になっています。

 

ECショップは大手のインターネットショッピングモールを利用するショッピングモール型と、自らサイトを立ち上げる自社サイト型のものとに分けられます。

 

大手のショッピングモールを活用すれば比較的簡単にサイトを作成できることが多く、決済方式などもあらかじめ用意されていることもあるなど、結果的に自社の負担が少なくて済みます。さらに、モールのネームバリューを利用して集客力や閲覧率を格段に上げることができます。

 

これに対し、自社で一からサイトを立ち上げる場合は、そのような補助が受けられない代わりに、オリジナリティーを追求できますし、大手モールの場合と違って制約が少なく、自由度が高い特徴があります。商品力や有効な販売戦略さえ伴っていれば、過激な価格競争に陥ることも回避しやすいでしょう。

 

以下、ECでビジネスを始める場合のメリットとデメリットについて確認しましょう。

 

2、ECのメリットとデメリット

 

(1) ECのメリット

 

① 場所的時間的制限がない

 

ECのメリットとして1番に挙げられるのはやはりいつでもどこでも商取引が可能な点でしょうか。

 

従来の商取引においては、顧客は原則としてそもそも店舗まで実際に足を伸ばす必要があり、さらに店舗の営業時間内でのみ取引が可能であるという場所的、時間的な制約がありました。

 

しかし、ECにおいてはインターネット環境とパソコンなどのデバイスさえあれば、いつでもどこでもお互いに商取引が可能です。顧客は店舗に足を運ぶ必要はなく、注文受付や店舗内閲覧には時間帯や曜日などの制限もありません。

 

一定の商圏範囲にとらわれず、日本中ひいては世界中の顧客との間でいつでも取引が可能になるのです。

 

② 実店舗が要らない

 

従前のビジネス形態では、提供する物やサービスに応じて想定される顧客の行動範囲に即した、適切な立地の店舗を用意する必要がありました。

 

そして店舗を選定した後は、賃貸借契約の締結、電気や水道などインフラの整備、備品や什器等の用意、開店を知らせるチラシ等の広告展開など、様々な事前準備が必要でしたが、ECにおいてはこれらは必ずしも不可欠なものではありません。

 

③ 顧客情報の収集が容易

 

従来型の対面販売では、顧客が商品を受け取り金額を支払えば取引はそこで終了するため、顧客情報は簡単に取得できません。そのため、店舗側が顧客情報を収集するためには、ポイントカードや会員カードを活用するなど、工夫が必要です。

 

これに対し、ECにおいては、基本的に商品を相手方住所に配送する必要があるため、顧客の住所や電話番号などの個人情報を必然的に取得できますし、顧客側も当然のことと認識するので、その情報提供にためらいがありません。

 

このように、ECにおいては顧客データを容易に収集できるメリットがあります。

 

このようにして集めた顧客情報を有効活用すれば、それぞれの顧客の趣向や購買傾向を把握することにより、各顧客のニーズに応じた適切な商品・サービスを提案できるようになります。

 

すなわち「ある商品Aを購入する人物は別の商品Bも購入する傾向にある」などといった購買傾向を把握してこれを利用すれば「商品Aを購入する顧客に対し商品Bを提案する」などといった顧客の潜在的ニーズをも掘り起こすことができるのです。

 

さらにこれら各種情報を類型化することにより、それぞれの年代や性別などに応じた購買傾向をつかみ、新たな販路を拡大することも可能になるなど、顧客情報はビジネス拡大につながる情報の宝庫なのです。

 

 

(2) ECのデメリット

 

① 価格競争に陥りがち

 

以前と違い膨大な数のネットショップが存在する現在では、過剰な価格競争が起きやすいという問題があります。

 

顧客からすれば、他店で入手できないよほど魅力的な商品であれば別として、似たような商品が並んでいる場合は、検索結果の中からとかく安価なものを選びがちです。

 

実店舗と違って購入場所が自宅から近くである必要はありませんし、店舗スタッフとの人的つながりもないならば、特定のショップで買わなければならない理由がないからです。

 

そこで店舗側としては顧客から買ってもらうための価格競争に追い込まれてしまうのです。

 

② 顧客に見つけてもらう難しさ

 

すでに述べたように無数のECショップが濫立している現在では、商品や店舗によほどのブランド力や人気がなければ、ただショッピングサイトを開いただけでは顧客に見つけてもらえません。

 

③ 顧客の生の反応が掴みにくい。

 

ECの取引では顧客の生の反応が見えないため、店舗内での改善点や、顧客とスタッフとの間のちょっとした会話から推測出来うる顧客の要望等に気づきにくいという問題点があります。

 

逆に顧客の側からすれば、たとえば衣類や靴などの試着ができない、色や素材を直接確認できないなどの不満が発生します。そしてこのような不満に対応するには実店舗との併用や無料試着サービスなどが有効な対策となりますが、これらを実行するためにはかなりの資金力や組織力が必要となってしまいます。

 

3、ECをはじめるには

 

それでは実際にECサイトを始める場合の手順について以下説明します。

 

(1) ECのウェブサイトを開く

 

まずはECのウェブサイトを開く必要があります。この点、前述のように、ECサイトには、大手ショッピングモールに参加するショッピングモール型と、ECサイトを自分で開く自社サイト型が存在します。

 

大手ショッピングモール型では、前述の通り簡単にサイトを開設しやすい、ネームバリューによる集客性が高いなどのメリットがあります。

 

その反面、ライバルが多く価格競争に簡単に陥りやすい点や、一定額以上の手数料がかかる、制約が多く条件変更に交渉が必要であるなど、自由度が低いというデメリットも存在します。

 

これに対し、自社サイト型は、初期設定が非常に面倒なのでITに精通していないと開設が難しい、ネームバリューがないので顧客から探してもらいにくいなどのデメリットがありますが、他方、大手からの圧力を受ける危険がありませんし、過剰な価格競争に巻き込まれにくいというメリットがあります。

 

なお、最近では、簡単にECショップを立ち上げるためのテンプレートやサービスも充実しているので、自社サイトの立ち上げもそれほど困難ではないかもしれません。

 

以上、どちらも一長一短ありますので、よく吟味したうえで自社に適した方を選ぶのが良いでしょう。

 

(2) サイト閲覧が増えるような対策を実施する

 

ECショップを開いた後は、サイトの閲覧が増えるような対策を実施しましょう。

とはいえ、確実に巨大な販売利益が見込める場合でもない限り、いきなり大きな広告を打つのはお勧めできません。

 

まずは無料のSNSなどを利用した集客方法が無難です。ただ、多数のフォロワーが存在するなど特段の事情がない限り、これだけで広告効果を期待する事は現実的ではありません。

 

次に、検索上位にヒットするためのSEOを意識したサイト作りが重要です。SEOとは、Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)の略で、検索エンジンを通じ、自社の商品やサービスに対し適切なニーズを持った潜在的顧客を誘引するようにサイトを調整することです。

 

といっても素人や初心者には非常に難しい技術ですので、自社にその道の熟練者がいない限り、こちらに関してはSEOのプロフェッショナルに業務を委託したり、実績のある人物を長期的または一時的に雇用するなどの対応が望ましいでしょう。

 

なお、環境保護や食品ロスの防止、災害復興支援など、商品やサービスに特定のコンセプトを掲げている場合や、他にない新技術などをアピールする場合、クラウドファンディングに登録することで当該コンセプトに賛同する消費者層等に対し周知性が高まることもあります。

 

また、各地で開催される見本市や物産展などに参加して商品を知ってもらう方法もあります。

 

現代社会に即したいろいろな手段を用いて顧客認知度を高めていきましょう。

 

(3) 商品やサービスの選定

ネットショップで販売できる商品には各種制約があり、どんな商品でも取り扱いが可能なわけではありません。

 

たとえば銃器類や危険物、非合法商品が販売できないのはもちろんのこと、医薬品や化粧品、中古品、ペットや酒類、食品、肥料など、販売に特別の許認可または届出が必要なものがありますので、注意が必要です。

 

自社が取り扱う商品についてはあらかじめ法的規制の有無及び許認可の内容やその届出先などを調べておきましょう。

 

 

(4) 顧客からの問い合わせ対応

 

店舗がない以上、顧客との密な連絡は非常に重要です。顧客はいつでもネット上で他の店舗を選択し得るわけですから、商品の良さや発送の早さだけでなく、問い合わせに対する対応の丁寧さや迅速性は、ライバル店舗との差別化を考えても重要な要素です。

 

この点、サイト内で店舗の休業・営業日をリアルタイムにカレンダー形式で表示したり、「問い合わせメール受信後2営業日以内に返信いたします」など、顧客が問い合わせをした後どれくらいのスパンで回答を得られるのか目安を示しておくと良いでしょう。

 

実際には、顧客の問い合わせに対する対応は早ければ早いほど好印象です。顧客からの問い合わせをリアルタイムで覚知できるよう、通知を設定しておくと良いでしょう

 

(5)  セキュリティ管理

EC取引においては、支払いにクレジットカードやキャリア決済、デビットカードなどが使用されることが多く、これら顧客の個人情報が狙われがちです。

 

顧客からの信用性を維持するためにも、カード情報の送信にはSSLをはじめとする暗号化システムを利用する、専門的な決済代行サービスを利用するなど、情報漏洩を防止するためのセキュリティ管理を徹底しましょう。

 

さらに顧客に対しても、自社に使用されているIDやパスワードの使い回しを防止するよう要請する、偽サイトに誘導されないよう自社のURLをお気に入りに定期的に登録してもらうようリマインドするなど、できれば専門家の監修を受けつつ、総合的なセキュリティ対策を行うことが望ましいです。

 

 

4、まとめ

 

パソコンをはじめスマホやタブレットなどインターネットが国民に浸透した現在、ECは新規販路を獲得しビジネスを拡大するために重要なビジネスツールです。

他店との競争に耐えうるよう、かつ顧客からの信用を取得できるよう、時には専門家の手を借りるなどして、有効にECを活用すると良いでしょう。

 

 

執筆者:豊田 かよ (とよた かよ)
弁護士業、事務職員等を経て、現在は英語講師やライター業務等に従事。得意ジャンルは一般法務のほか、男女・夫婦間の問題、英語教育など。英検1級。