山梨県の制度融資/中小企業の資金調達のために

山梨県商工業振興資金は、山梨県が中心となって実施している、中小企業者向けの制度融資です。どんな制度なのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

 

山梨県商工業振興資金には、利用目的にあわせて資金メニューが選べるなど、利用しやすい点に特徴があります。制度を利用するには、予め設定されている融資要件を満たす必要がありますので、利用前に詳細を確認しておくことは不可欠です。

 

本記事では、山梨県商工業振興資金の基礎知識から資金メニューまで、利用前に知っておきたいことについて、わかりやすく解説します。

 

 

1.     山梨県商工業振興資金とは

山梨県商工業振興資金とは、県内の中小企業者が、円滑に事業を展開するために必要な資金を調達できるよう支援する制度融資のことです。山梨県をはじめ、取扱金融機関や山梨県信用保証協会らが連携することで、「利用しやすい制度融資」を実現しました。

 

山梨県信用保証協会は、中小企業者の公的保証人として資金調達を支援しています。山梨県商工業振興資金は、原則として保証人を必要とせずに申込めますが、それは県信用保証協会が保証をつけているためです。

 

県は、山梨県商工業振興資金のルールを定め、融資の元となる融資原資を取扱機関に預託します。この仕組みにより金融機関は、利用者に対して低金利で長期間の融資を実施できるようになりました。

 

山梨県商工業振興資金を利用できるのは、原則として県内に事業所があり、1年以上事業を営んでいる(一部の資金メニューは除く)「中小企業者」「組合」「NPO法人」です。県では、各対象者を以下のように定義しています。

 

① 中小企業者

「従業員数」または「資本金・出資金」のいずれかに該当する場合、「中小企業者」と見なされます。

・引用

https://www.pref.yamanashi.jp/sangyo-sin/documents/r0304siori.pdf

 

中小企業者の中でも、次に該当する法人または個人は、「小規企業者」です。

 

・従業員5人以下の商業(小売・卸・飲食業)・サービス業

・従業員20人以下の宿泊業・娯楽業

・従業員20人以下の製造業またはその他の業種(鉱業や建設業など)

 

② 組合

「企業組合」や「商店街振興組合」など、法律に則って組織された団体や連合会が「組合」です。

 

③ NPO法人

次のいずれかの要件に該当する場合、「NPO法人」と見なされます。

・従業員50人以下の小売業を営むNPO法人

・従業員100人以下の卸売業・サービス業を営むNPO法人

・上記以外の業種で、従業員300人以下のNPO法人

 

 

以下の業種に属した事業を営んでいる人は、山梨県商工業振興資金を利用することはできません。

・農林漁業

・金融・保険業(保険代理店などは除く)

・風俗営業など、公序良俗に反する業種

・必要な許認可等を取得せずに営業している人

・銀行から取引停止処分を受けている人

・信用保証協会の代位弁済を受けている人

・借金返済(県制度における借入金の借換を除く)を目的に、融資を受けようとしている人

 

山梨県商工業振興資金の利用者は、融資と県信用保証協会の保証を、取扱金融機関の窓口にて申込みます。

 

山梨県商工業振興資金の申込みに必要な書類は、こちらからダウンロードできます。

・商工業振興資金要綱、要領及び様式集(山梨県)

https://www.pref.yamanashi.jp/sangyo-sin/youryo_youkou_youshiki.html

 

 

2.山梨県商工業振興資金の概要

山梨県商工業振興資金には、複数の資金メニューが用意されています。起業を予定している人向けの融資から事業資金を必要とする人を対象とした融資、さらに、新型コロナウイルス感染症によって悪化した業績を改善したい人向けの融資まで幅広く対応していますので、資金調達の目的にあったものが見つかりやすいでしょう。ここでは、主な資金メニューをご紹介します。

 

(1)     起業家支援融資

起業家支援融資とは、新たに事業をスタートしたい中小企業者(個人・法人)に対して、設備資金または運転資金を融資する制度です。

 

起業家支援融資を受けるには、次のいずれかの要件に該当する必要があります。

・県内で新たに事業を始める予定のある個人または法人

・創業してから5年未満の個人または法人

 

起業家支援融資の融資限度額は3,500万円、融資期間は設備資金・運転資金ともに10年以内です。

 

起業家支援融資の申込みに必要な書類は、以下のとおりです。

・事業計画書

・借入申込書

・商工会議所や商工会等の診査書

・財務書類

・納税証明書

など。

 

(2)     事業促進融資

事業促進融資とは、通常の事業を営む際に必要な事業資金(設備の導入や改修など)を融資する制度です。この制度は、財務改善を目的とした長期の運転資金が必要な中小企業者も対象に含まれているなど、汎用性の高さに特徴があります。

 

事業促進融資は、設備資金なら5,000万円、運転資金なら2,000万円を上限に融資します。融資期間は設備資金が7年以内、運転資金は5年以内にそれぞれ設定されています。

 

事業促進融資の申込みに必要な主な書類は以下のとおりです。

・借入申込書

・商工会議所や商工会等の診査書

・財務書類

・納税証明書

など。

 

(3)     小規模企業サポート融資

山梨県内で事業を営む小規模企業者を対象に、運転資金または設備資金を融資する制度です。

信用保証料の2分の1を県が補助するため、保証料率は0.25~1.1%と低く設定されている点に特徴があります。

 

小規模企業サポート融資の申込みに必要な書類は以下のとおりです。

・借入申込書

・商工会議所や商工会等の診査書

・財務書類

・納税証明書

など。

 

小規模企業サポート融資の融資限度額は2,000万円で、融資期間は最長10年間(運転資金は7年間)と決められています。

 

 

(4)     経済変動対策融資(新型コロナウイルス感染症対策関係)

山梨県では、新型コロナウイルス感染症によって経営が悪化した中小企業者に対して、次の経済変動対策融資を実施しています。

① 不況業種対策・セーフティネット保証5号

② 経済危機関係・危機関連保証

③ 経済危機関係・セーフティネット保証4号

 

① 不況業種対策・セーフティネット保証5号

経営している事業が、中小企業信用保険法が定めている「不況業種」に属している中小企業者で、次のいずれかの要件を満たしている人が融資対象者です。

 

・最近3ヶ月間の売上高等が、前年同期と比べて5%以上減少した人

・最近1ヵ月の売上高等とその後の2カ月の売上高等が、前年同期と比べて5%以上減少すると見込まれている人

 

・参考:セーフティネット保証制度5号(中小企業庁)

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.htm

 

不況業種対策・セーフティネット保証5号の融資限度額は5,000万円、融資期間は最大10年間です。

 

② 経済危機関係・危機関連保証

新型コロナウイルス感染症の拡大が原因で、最近1ヵ月の売上高等が、前年同月と比べて15%以上減り、その後の2カ月を含む合計3カ月間の売上高等も、前年同期と比べて15%以上減ると予想される中小企業者向けの制度です。経済危機関係・危機関連保証は、5,000万円を上限に融資します。制度の利用者は、最大10年間利用可能です。

 

③ 経済危機関係・セーフティネット保証4号

新型コロナウイルス感染症の拡大が原因で、最近1ヵ月の売上高等が、前年同月と比べて20%以上減り、その後の2カ月を含む合計3カ月間の売上高等も、前年同期と比べて20%以上減ると予想される中小企業向けの制度です。融資限度額は5,000万円で、融資期間は10年以内と決められています。

 

3.まとめ

山梨県商工業振興資金の概要や主な資金メニューについて解説しました。

 

山梨県商工業振興資金は、県や県信用保証協会らが連携することで、利用者が融資を受けやすいサービスを提供しています。経営改善や事業の継続に資金を必要としているのなら、制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

山梨県商工業振興資金を利用して融資を受けるには、資金使途にあった資金メニューの選定や必要書類の作成、融資額や返済スケジュールの決定といった作業が続きます。作業の進め方や判断に迷った時は、資金調達の専門家に相談することをおすすめします。

 

制度を上手に利用して、資金調達の問題を解消しましょう。

 

 

執筆者:佐藤 世莉(さとう せり)

英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。