プレスリリースを上手に使うには/中小企業の広報PR戦略

広報・PR活動のひとつに「プレスリリース」があります。プレスリリースとは自社商品の情報をマスメディアに向けて発表すること。有名メディアに掲載されれば、たくさんの人に自社商品を見てもらえます。

 

でも、魅力的な内容のプレスリリースでないとメディアで紹介してもらえません。ただ情報を発信するだけでなく、戦略を練ってプレスリリースを作成することが大切です。

 

今回は、プレスリリースのメリットや配信方法、注目されるプレスリリースの内容について分かりやすく解説します。効率的にPR活動するためにプレスリリースを活用しましょう。

 

1.プレスリリースのメリット

プレスリリースとは、自社が行っている取り組みや提供しているサービス・商品についての情報を公式に発表すること。より多くの人に会社や商品の存在を知ってもらったり、企業イメージを向上させるために行います。

 

【プレスリリースの主な目的】

 

・企業やサービス等の認知度拡大

・会社のブランド力向上

・商品等の品質や価値の訴求

 

プレスリリースのメリットは、発表した情報が新聞、テレビ、ラジオ、webメディアなどに掲載される可能性があることです。プレスリリースを見たメディア関係者が有益な情報だと判断した場合には、公開した内容が新聞等に掲載されます。大勢の人が目にするメディアで紹介されたら認知度が上がるのは間違いありません。

 

時には記者から取材依頼が入るので、自社サービスについてテレビ番組で特集を組んでもらえた、より詳細な商品情報を消費者に届けられた、といった嬉しい展開も期待できます。

 

もうひとつのメリットが、信頼度が高いメディアに掲載されれば、商品やサービスの価値を信じてもらいやすいことです。広告だと企業が発信する情報がダイレクトに消費者に届くのに対して、プレスリリースがメディアに掲載された場合には間にマスメディアが入るのが違いです。

 

<広告の場合>

企業が発信する情報→消費者

 

<プレスリリースがメディアで紹介された場合>

企業が発信する情報→テレビなど→消費者

 

例えば、広告で商品の質の良さを訴えても簡単には信じてもらえませんが、テレビ番組で取り上げられたら「テレビで紹介されているのだから人気があって良い商品に違いない!」と思われて購買に結び付く可能性がアップします。

 

それに、低コストで情報発信できるのもプレスリリースのメリットです。配信サービスを使うと利用料金がかかりますが、広告を出すよりも費用が抑えられることが多いです。

 

他には、投資家からの支援を受けたり、業務提携の提案をされる可能性が上がることもメリットだと言えるでしょう。積極的にプレスリリースをすれば、自社に魅力を感じた投資家や他の企業から声がかかるかもしれません。

 

2.注目されるプレスリリースの内容とは?

プレスリリースの難しさは、マスメディアに掲載される保証がないこと。毎日大量のプレスリリースが発表されているので、競合他社よりも優れている内容にしないと採用されません。

 

商品・サービスの良さをアピールするだけでなく、「消費者にとって価値がある情報だ」「うちの番組で取り上げたい」とメディア関係者に思われる内容を目指しましょう。

 

そのために必要なことは、この3点です。

 

①必要な情報を漏れなく提供する

②数字やデータ・図表を活用する

③事実を正確に書く

 

◆必要な情報を漏れなく提供する

プレスリリースには必ず書かないといけない必須項目があります。マスメディアの媒体ごとにプレスリリースの内容が若干異なりますが、これから紹介するのはどの媒体にも共通している記載項目です。

 

・配信日

プレスリリースは基本的にニュースとなる出来事(新商品発売、サービス改定など)があった時に発信するものなので、公開時期を明確にするために配信日を記載します。

 

・タイトル

プレスリリースでは、タイトルが最も重要です。なぜなら、メディア関係者が興味を持てないタイトルだと内容に目を通してもらえない恐れがあるからです。最も伝えたいキーワードを盛り込んで、かつ、注目されるよう工夫しましょう。

 

・要約

要約はプレスリリースの概要をまとめたもの。大事な情報を漏らさずに入れて、なおかつコンパクトにまとめることも大切です。読んだ人が短時間で全体像を把握できる内容にしてください。

 

・本文

要約の次は商品やサービスの本格的な紹介文です。本文の基本は可能な限り詳しく書くこと。要約では伝えきれなかった情報を記載します。

 

ただ、情報量が多いと読んだ人が理解しづらい内容になる恐れがあります。読みやすい文章にするために、見出しを作成して全体のおおまかな流れを先に決めておきましょう。

 

配信日

 

タイトル

 

要約

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本文

見出し①

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~~~~~~~~~

 

見出し②

~~~~~~~~~

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見出し③

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~~~~~~~~~

 

企業情報・問合せ先
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分かりやすい内容にするためには、箇条書きを取り入れる方法も効果的です。文章ばかりで読みにくさを感じた場合には、重要点をまとめて箇条書きにするとスッキリします。

 

文章よりも箇条書きが向いているのは、サービス名、利用料金、開始日、場所、対象者、申し込み方法等です。

 

また、商品やサービスに関する内容だけだと味気ない印象を与えるかもしれません。そんな時は、商品開発の経緯を取り入れれば、ストーリー性のある文章になって魅力が増します。

 

もうひとつのオススメは、サービス開始のきっかけとなった社会的背景を盛り込むことです。社会で必要とされているタイミングだからこそ、今このサービスを始めたことを強調しましょう。

 

マスメディアが求めるのは、消費者が必要としている情報です。社会的関心が高まっている物事とサービスの関連性があると判断されれば掲載される可能性が高くなります。

 

・企業情報

商品やサービスの情報だけでなく企業情報も必須事項です。会社名等の基本情報や自社HP、プレスリリースした商品の紹介HPなどを記載します。

 

・問合せ先

問い合わせ先に記載するのは、会社名、今回のプレスリリースの担当者、電話番号、メールアドレス等です。

 

◆数字やデータ・図表を活用する

本文で商品説明をする際には数字やデータを入れると客観的な事実を証明できます。「たくさんの人に愛用されています」よりも「3万人以上の愛用者がいます」のほうが説得力があります。

 

しかし、数字やデータなら何でも良いわけではありません。誰でも知っている数字では意味がないので、普通の人が知らないデータや自社が独自調査した結果を使うのがおすすめです。

 

テレビやwebメディアなど視覚に訴えるメディア媒体の場合には、図表を活用するのも効果的です。代表的なのは、割合を示す円グラフ、変化をあらわす折れ線グラフや棒グラフです。

 

情報があちこちに散らばっていて分かりにくい時は一覧表にまとめましょう。商品の写真やイメージ画像も活用すると、メディア関係者の心に強く訴えかける内容になります。

 

◆事実を正確に書く

プレスリリースは、マスメディアの担当者に注目されるようなインパクトのある内容が向いています。

 

<注目を集める要素の例>

 

・新商品や日本初上陸など「目新しさ」

・オンリーワンや唯一などの「希少価値」

・圧倒的に価格が安いなどの「驚き」

・ブームになっているものなどの「流行」

・全額返金保証などの「安心感」

 

こういった工夫をすれば他のプレスリリースと差別化できますが、誇張した表現は避けるべきです。プレスリリースの大原則は、発表内容に関する事実を正確に書くこと。自社の信用に関わるので、誤解を招く書き方はやめましょう。

 

特に数字を用いる場合は、正確さを確保するために十分な情報を出す必要があります。アンケート結果を載せるなら、集計結果だけでなくアンケートをとった人の性別や年代、人数等も記載してください。

 

3.プレスリリースの配信方法

プレスリリースの配信方法は、各メディアに直接届ける方法と配信サービスを利用する方法の2種類。それぞれ詳しく説明します。

 

(1)各メディアに直接届ける方法

プレスリリースを配信したい場合は、掲載を希望する媒体に合わせた場所にメールや郵送等で届けましょう。

 

例えば、新聞社、出版社、テレビ局、ラジオ局などに訪問、郵送、FAX、メールといった方法で直接届ければOKです。

 

媒体ごとに採用基準が違うので、自社商品・サービスと似通った分野のプレスリリースが紹介されているメディアを選ぶのが掲載確率を上げるコツです。

 

また、規模が大きくて人気がある媒体ほど競争率が激しくなる傾向があります。大手ばかりを狙うのではなく、競合他社が少ないメディアを選ぶのもひとつの手です。

 

闇雲にプレスリリースを送るのではなく、戦略を立てて取り組みましょう。

 

(2)プレスリリース配信サービスを活用する方法

プレスリリース配信サービスとは、プレスリリースに関する様々なサポートが受けられるサービス。登録すれば提携している複数のメディアへのプレスリリース配信を代行してくれます。

 

メリットは、自社とはつながりのない有名メディアにもプレスリリースを届けられること。影響力のあるマスメディアに掲載されるチャンスが生まれます。

 

それに、運営しているサイトに自動掲載されるサービスを使えば、自社のプレスリリースがインターネット検索に引っかかる状態になるのもメリットです。マスメディアの担当者はネット検索をして様々な情報を集めているので、自社商品を発見してもらえるかもしれません。

 

また、プレスリリース配信サイトを情報収集の場にしている人もいます。サイトに掲載されれば一般消費者の目に触れる機会が増えるので、認知度拡大につながります。

 

プレスリリース配信サービスは無料と有料があり、両者の違いは、有料のほうが提携先の数が多い、提携先の質が高い、プロによる作成代行・添削等の様々なサポートがある、など。利用料金やサービス内容を確認してから登録先を決めましょう。

 

4.プレスリリースは万能ではない

プレスリリースを活用すれば効率良く自社サービスをPRできます。しかし、プレスリリースは万能ではありません。注意点は、以下の2点です。

 

①作成・配信に相応の手間とコストがかかる

②内容によっては逆効果になる

 

◆作成して配信するために相応の手間とコストがかかる

プレスリリースの難しさは、作成や配信に時間や手間がかかることです。魅力的な内容にするためにはそれなりの作成時間が必要で、各メディアに届ける手間もかかります。

 

専門的な知識やスキルがある人材がいない企業は予想以上に苦労するかもしれません。代行サービスを使えば時間と手間を省けますが利用料金が必要です。

 

そして、最終的にマスメディアに掲載されないと、かけたコストが無駄になります。プレスリリースをしても確実に効果が出るわけではないことを覚えておきましょう。

 

◆内容によっては逆効果になる

運良くプレスリリースがメディアに掲載されても、消費者からの反応が良いとは限りません。最も怖いのは自社商品が炎上することです。拡散されるとたくさんの人の目に触れるので、思わぬトラブルに発展する恐れがあります。

 

例えば、ユーモアのつもりで使った言葉が、思いがけず「性的マイノリティの人を侮辱している」と受け取られると、企業イメージが大きくダウンします。色々な視点からプレスリリースの内容を精査して、失敗を予防しましょう。

 

5.まとめ

プレスリリースを上手に使えば知名度が高まるだけでなく、企業のイメージアップにもつながります。それに、効率的に広報・PR活動が行えれば、コストをかけずに売上を大きく伸ばせるでしょう。

 

プレスリリースを作成する時の重要ポイントは、注目される内容にすることです。他社にはない強みをアピールしたり、メディア関係者が関心を持つ内容にすれば掲載される確率が上がります。しかし、事実を正確に伝えるという原点を疎かにするのは本末転倒です。誤解を生む表現になっていないか確認してからプレスリリースを公開しましょう。

 

執筆者:宮林 有紀(みやばやし ゆうき)

医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。