ビジネスで「売り上げを伸ばしたい」「顧客単価を上げたい」という場合、効果的なのが「クロスセル」というマーケティング手法です。
実店舗やECサイトといった物販でよく使われる手法で、言葉だけは聞いたことがある方も多いと思いますが、「くわしくはよく知らない」という方もいらっしゃることでしょう。
そこで本記事では、クロスセルとは何かという基礎知識から、クロスセルがもたらすメリット、実際にクロスセルを行う手順まで、わかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みください。
1.クロスセルとは
クロスセルとは、簡単にいうと「消費者に“あわせ買い”をすすめて顧客単価を上げる方法」です。
みなさん、こんなご経験はありませんか?
・ファストフード店でハンバーガーを注文したら、店員から「ご一緒にポテトはいかがですか?」と言われた。
・スーパーでレタスを買おうとしたら、近くに「レタスにぴったり!」と書かれたドレッシングが置いてあった。
・ネットショップでスニーカーをカートに入れて決済しようとしたら、「この商品を買った人は、こんな商品もチェックしています」と靴の消臭スプレーが表示された。
実は、これらはすべてクロスセルの一例なのです。
商品やサービスを購入、もしくは購入を検討している顧客に向けて、その商品やサービスと関連する別のものも提案して一緒に購入してもらう。それが、クロスセルの基本的なやり方です。
顧客が求めそうな商品を適切なタイミングで提案し、「確かに、おすすめの商品も買っておいた方が良さそうだな」という顧客心理を刺激。顧客1人が購入する商品数を増やすことで顧客単価をアップ、結果として総売上額もアップさせることを目指します。
2.クロスセルのメリット
クロスセルを実践するメリットとは何だと思いますか?
まずは、前述のとおり、「顧客単価を上げて、総売上額のアップを目指せる」ことがあります。これは、ビジネスを展開していく上で大きなメリットですね。
しかし、クロスセルのメリットはそれだけではありません。いくつかをピックアップしてご紹介します。
- 効率よく売り上げを伸ばせる
一般的に売り上げアップを図る場合、「顧客単価」もしくは「顧客数」を増やす必要があります。とはいえ、新たな顧客の獲得はすぐできることではないですし、手間やコストもかかります。既存顧客へのアプローチだけで、効率よく売り上げを伸ばせる点はクロスセルのメリットのひとつです。
- 顧客の満足度が上昇する
クロスセルを成功させるには、「どんな商品をすすめたら喜んでもらえる?」「顧客が求めるベネフィットは何?」など、顧客の視点に立って戦略を練ることが欠かせません。そうしたプロセスを経て行われるクロスセルは、売り上げだけでなく、「今まで知らなかったよい商品をすすめてくれた!」「おすすめの商品も一緒に買ったら、想像以上に楽しめた!」といった顧客満足度の向上にもつながります。
- リピーターの獲得にも効果
クロスセルを実践するにあたり、顧客にとってより価値のある商品を見極めたり、効果的な提案方法を考えたりすることは、競合店との差別化にもなります。それはつまり、「どうせ買うならこのお店で買いたい!」というリピーター顧客の獲得も期待できるということです。安定的な売り上げを目指すなら、リピーター獲得は重要な要素となります。
クロスセルが成功することで、顧客単価や売り上げアップ、リピーター獲得といった経営側のメリットに加え、顧客側にも「おすすめしてもらったおかげで、価値のある商品が購入できた」というメリットが生まれます。こうした顧客の感情は、自社への信頼感につながります。クロスセルは、売り上げを向上する手法であるとともに、顧客満足度を高めて顧客からの信頼を厚くする手法であるのです。
それゆえに、顧客情報や客観的なデータなどをしっかり分析し、顧客のニーズにできるだけ合った商品を提案することがとても大切です。単価を上げようとただがむしゃらに商品を「押し売り」してしまうと、クロスセルが成功しないばかりか、顧客の信頼を失ってしまう恐れもあります。
3.クロスセル実践の手順
では、クロスセルを実践する場合、どのような手順で行えばよいのでしょうか?
3つのステップにわけてご紹介します。
①顧客情報の分析
前述したように、情報分析はクロスセル成功のために最も重要なプロセスです。CRM(顧客管理システム)の機能などを活用し、客観的なデータから顧客の情報を分析します。
例えば、
・顧客が自社の商品やサービスを購入、利用した履歴や動機
・買い物をする頻度
・購入した商品の組み合わせ
・プロフィールの似ている顧客が購入、利用している商品やサービス、購入している商品の組み合わせ
といった情報を洗い出し、ターゲットにする顧客層のリストアップや、顧客の行動パターンの予測を立てます。
②具体的なアクションを考える
分析結果に基づき、ターゲット顧客にどのようなアクションをするか決めていきます。
例えば、
・どんな商品やサービスを提案するか
・実店舗の場合、商品をどのように陳列するか
・Webサイトの場合、商品やサービスの見せ方をどのように工夫するか
・アプローチのタイミングや、ポップアップなどに表示する文章はどうするか
など、具体的な戦略プランを立ててみましょう。
③見込み顧客にはダイレクトマーケティングを実施
クロスセルにマッチする潜在的な見込み顧客には、ダイレクトマーケティングを行って店舗やサイトへの誘導を図りましょう。ダイレクトメールやEメールのほか、TwitterやInstagramなどソーシャルメディアを活用したアプローチも効果的です。
収集した顧客情報、分析結果、戦略プラン、アプローチ方法など、クロスセルの実践に関する情報や決定事項は、マーケティング部門や営業部門といった部門の垣根を超えて共有し、社内全体で共通の認識を持って取り組むことが大切です。
4.まとめ
「クロスセル」についてご紹介しました。本文でも触れたように、クロスセルを成功させるには顧客情報の収集や分析が必要不可欠であり、客観的なデータに基づいて実践することが肝要です。データに基づかずに実践した場合、購入の可能性が低い売り方をしてしまったり、声をかけやすい顧客に偏ったアプローチになってしまったりと、思うような効果が期待しづらくなります。十分に注意しましょう。
金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。