秋田県の制度融資/中小企業の資金調達のために

制度融資とは、地方自治体・民間の金融機関・信用保証協会が連携して融資を行う制度。秋田県中小企業融資制度は、秋田県で事業を営んでいる中小企業者や創業予定の方が利用できます。

 

しかし、対象者の条件が細かく決められているので、誰でも利用できるわけではありません。あなたが条件を満たしているか確認しましょう。

 

今回は、秋田県中小企業融資制度の概要と、いくつかのコースの詳細情報を紹介します。

 

1.秋田県中小企業融資制度とは

秋田県中小企業融資制度とは、県が決めた条件に従って金融機関が窓口となる融資制度で、信用保証協会が公的な保証人になるのが特徴です。

 

プロパー融資との違いは以下の4点です。

【1】県が融資条件を定めている

【2】中小企業者の返済が滞った場合は信用保証協会が代位弁済する

【3】信用保証協会へ信用保証料を支払う

【4】金融機関だけでなく信用保証協会の審査もある

 

対象者は、農業、林業、漁業、金融・保険業以外の業種を営む中小企業者です。具体的には、以下の資本金または従業員数のどちらかを満たすことが条件です。

 

業種 資本金 従業員数
製造業(運送・倉庫業、建設業、不動産業、ソフトウエア業、情報処理サービス業を含む) 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業(飲食業を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下

 

特定非営利活動法人(NPO法人)の条件はこちらです。

 

業種 従業員数
製造業 300人以下
卸売業・サービス業 100人以下
小売業(飲食業を含む) 50人以下

 

他に、従業員数300人以下の医療法人も利用できます。

 

申込み手続きは、以下の取り扱い金融機関の県内にある本店・支店、または商工会や商工会議所で行えます。

 

 ・秋田銀行   ・北都銀行   ・みずほ銀行  ・三菱UFJ銀行

・青森銀行   ・みちのく銀行 ・七十七銀行  ・東北銀行

・岩手銀行   ・北日本銀行  ・山形銀行   ・荘内銀行

・きらやか銀行 ・秋田信用金庫 ・羽後信用金庫 ・秋田県信用組合

・あすか信用組合・商工組合中央金庫

 

2.秋田県中小企業融資制度の概要

秋田県中小企業融資制度には24種類のコースがあり、それぞれ対象者や融資限度額が異なります。いくつかのコース内容を詳しく見ていきましょう。

 

(1)新事業展開資金(創業支援資金)

新事業展開資金(創業支援資金)は、新規の開業や分社化する場合に利用できるコース。対象者は次のいずれかの条件に当てはまる人です。

 

①-A 事業を営んでいない個人が新しく事業を開始する場合で、1ヶ月以内に新事業をスタートさせる具体的な計画がある
①-B ①-Aのパターンで創業して事業開始から5年未満の個人
①-C 事業を営んでいない個人が新しい会社を設立する場合で、2ヶ月以内に新事業をスタートさせる具体的な計画がある
①-D ①-Cのパターンで創業して設立日から5年未満の会社
①-E 会社が自らの事業を継続して実施しつつ新しい会社を設立する場合で、新事業に関する具体的な計画がある
①-F ①-Eのパターンで創業して設立日から5年未満の会社
②-A 事業を営んでいない個人が新しく事業を開始する場合で、1ヶ月以内に新事業をスタートさせる具体的な計画があり、借入金額と同額以上の自己資金がある
②-B 事業を営んでいない個人が新しい会社を設立する場合で、2ヶ月以内に新事業をスタートさせる具体的な計画があり、借入金額と同額以上の自己資金がある
②-C 会社が自らの事業を継続して実施しつつ新しい会社を設立する場合で、新事業に関する具体的な計画がある
②-D 過去に事業を営んでいない個人が事業を開始し5年未満の場合
②-E 過去に事業を営んでいない個人が会社を設立し5年未満の場合
②-F 会社が自らの事業を継続して実施しつつ新しい会社を設立し5年未満の場合

 

①に該当する場合 ②に該当する場合
融資限度額 2,000万円 1,500万円
利率 年1.30%
保証料率 年0.60%
融資期間(措置) 10年(3年)以内

 

注意点は、申し込み前に商工会、商工会議所の推薦が必要なこと。先に推薦を受けてから金融機関で手続きを行いましょう。

 

(2)中小企業振興資金(一般資金)

中小企業振興資金(一般資金)は、県内で1年以上事業を営んでいる中小企業者(先に紹介した対象業種で資本金か従業員数の条件を満たす企業)なら誰でも利用できます。融資限度額は、一般資金働き方改革支援枠と合わせて1億円以下です。

 

設備資金 運転資金
融資限度額 1億円
利率:固定金利型 年1.95%
利率:変動金利型 年1.70%以下
保証料率 年1.55%以下
融資期間(措置):固定金利型 10年(2年)以内 7年(1年)以内
融資期間(措置):変動金利型 15年(2年)以内 10年(1年)以内

 

特徴は、固定金利型と変動金利型の2種類があること。変動金利型は、取扱金融機関の基準金利の変動により利率が変更されます。

 

また、セーフティネット保証1号~4号、6号を利用した場合は、利率が0.2%下がります。保証料率はセーフティネット保証1号~4号、6号で0.88%、5号、7号、8号で0.76%となります。

 

セーフティネット保証とは?

 

災害や取引金融機関の破綻、大規模な経済危機等で経営が安定しない時に市町村長に申請すると受けられる認定制度

参考:https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_gaiyou.htm

 

中小企業振興資金(一般資金)を利用する場合は、金融機関で申し込み手続きを行いましょう。

 

(3)中小企業振興資金(小規模事業振興資金)

中小企業振興資金(小規模事業振興資金)は、県内で1年以上事業を営んでいる小規模企業者向けのコースです。小規模企業者とは常時使用する従業員数が20人(商業・サービス業は5人)以下の企業を指します。

 

融資限度額は、小規模事業振興資金ICT導入支援枠、小規模事業振興資金小口支援枠との合計で2,000万円以下です。

 

  設備資金 運転資金
融資限度額 2,000万円
利率 年1.95%
保証料率 年0.45%
融資期間(措置) 10年(2年)以内 7年(1年)以内

 

セーフティネット保証1号~4号、6号を利用した場合は、利率1.75%、保証料率0.50%となります。

 

中小企業振興資金(小規模事業振興資金)の申込み窓口は、金融機関ではなく商工会や商工会議所なので間違えないようにしましょう。

 

(4)中小企業振興資金(小規模事業振興資金小口支援枠)

中小企業振興資金(小規模事業振興資金小口支援枠)の融資対象は、県内で1年以上事業を営んでいる小規模企業者です。

 

先ほどの中小企業振興資金(小規模事業振興資金)と似ていますが、違いは利率と保証料率です。保証料率は0.05%高いものの、利率が0.2%低いのでこちらのほうが負担が少ないです。

 

設備資金 運転資金
融資限度額 2,000万円
利率 年1.75%
保証料率 年0.5%
融資期間(措置) 10年(2年)以内 7年(1年)以内

※融資限度額は既存の信用保証協会保証付きの融資残高の合計で2,000万円以下

 

中小企業振興資金(小規模事業振興資金小口支援枠)は、金融機関、商工会、商工会議所で申し込み手続きが行えます。

 

(5)経営安定資金(新型コロナウイルス感染症対策枠)

経営安定資金(新型コロナウイルス感染症対策枠)は、新型コロナウイルスの影響で売上が減少している企業向けのコース。具体的には以下の要件を満たす場合に利用できます。

 

・直近3ヶ月の受注高または売上高が、前年同期に比べて減少している

※直近3ヶ月の売上等が確定してない時は直近1ヶ月~2ヶ月の実績でもOK

※事業を営んでいる期間が3ヶ月以上ならOK

 

通常、新規事業を立ち上げる場合以外は1年以上県内で事業を営んでいる中小企業者が対象ですが、このコースは3ヶ月以上から対象となります。融資限度額は経営安定通常枠(8,000万円)とは別で5,000万円なので、両方を利用すれば最大で1億3,000万円の融資を受けられます。

 

設備資金 運転資金
融資限度額 5,000万円
利率 年1.35%
保証料率 年0.35~1.40%
融資期間(措置) 10年(2年)以内

 

セーフティネット保証4号を利用した場合は利率が1.15%、保証料率が0.68%、セーフティネット保証5号を利用した場合は、保証料率が0.56%になります。

 

セーフティネット保証4号とは?

 

・売上高等が20%以上減少した時に受けられる認定

参考:https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_4gou.htm

 

セーフティネット保証5号とは?

 

・売上高等が5%以上減少した時に受けられる認定

参考:https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.htm

 

経営安定資金(新型コロナウイルス感染症対策枠)を利用する際は、直接金融機関へ申し込みましょう。

 

(6)経営安定資金(危機関連枠)新型コロナウイルス感染症対応

経営安定資金(危機関連枠)新型コロナウイルス感染症対応の対象者は、以下の条件に当てはまる中小企業者です。

 

・金融取引に支障をきたしていて、資金調達が必要である

・最近1ヶ月の売上高等が前年同月比で15%以上減少していて、かつ、その後2ヶ月を含む3ヶ月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少することが見込まれること

※事業を営んでいる期間が3ヶ月以上ならOK

 

融資限度額は経営安定資金の既存枠とは別で5,000万円なので、必要があれば他のコースも同時に利用できます。

 

設備資金 運転資金
融資限度額 5,000万円
利率 年1.15%
保証料率 なし
融資期間(措置) 10年(2年)以内

 

経営安定資金(危機関連枠)新型コロナウイルス感染症対応は、利率が低いことに加えて保証料負担がありません。保証料は県と保証協会が利用者の代わりに負担するからです。また、申込み窓口は金融機関です。

 

3.まとめ

秋田県中小企業融資制度はコースごとに利率や保証料が違うので、最も有利な条件で融資を受けられるコースを選びましょう。それに、セーフティネット保証の認定など、より負担を軽くするための準備も忘れてはなりません。

 

最適なコースを選ぶコツは、資金調達の専門家に相談することです。そうすれば、自分でコース内容を比較する手間が省けます。さらに、必要な認定手続きや申し込み方法に関してもアドバイスしてもらえます。プロの意見を聞いて上手に事前準備を進め、事業資金を確保しましょう。

執筆者:宮林 有紀(みやばやし ゆうき)
医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。