北海道の制度融資/中小企業の資金調達のために

事業資金の調達を考えている、北海道の事業者のみなさん。「北海道中小企業総合振興資金」をご存じですか? 道内の中小企業者や、これから道内で事業を始めようしている方を対象にした制度融資で、一般的な融資よりも低金利かつ、さまざまな資金メニューが用意されています。

 

本記事では、北海道中小企業総合振興資金とはどのような制度なのか、具体的にどのような資金の融資が受けられるのかといった基礎知識をわかりやすくご紹介します。

 

 

1.北海道中小企業総合振興資金とは

北海道中小企業総合振興資金は、北海道内の中小企業者に対し、「北海道」、「金融機関」、「北海道信用保証協会」の3者が連携して提供している低金利の融資制度です。

 

北海道が、銀行、信用金庫、信用組合といった金融機関に一定の資金を預託(融資原資の一部を預け入れること)することで、金融機関に中小企業者への融資枠を確保しています。

 

「信用保証協会って何?」と思う方がいらっしゃるかもしれません。信用保証協会とは、融資を受けようとする中小企業者に対して「信用保証」を行い、円滑な資金調達をサポートする公的機関です。

 

▼信用保証協会については、こちらの記事でくわしく説明しています。

信用保証協会とは/起業時の強い味方

 

創業間もない企業や、これから創業しようという企業は、実績が少ないため、銀行の一般的な融資では審査に通りづらい場合があります。ですから、信用保証協会が保証人になってくれる制度融資は、資金調達手段のひとつとして必ず考えておきたいところです。

 

北海道中小企業総合振興資金を受けられるのは、原則として、以下の3つの要件をすべて満たした方です。さらに、利用する資金メニューごとの要件にも該当する必要がありますので注意しましょう。

 

1.道内に事業所を有する中小企業者等であること

2.許認可等を必要とする事業にあっては、その許認可等を受けていること

3.北海道信用保証協会の保証業種に該当する事業を営んでいること

※保証対象業種の一覧表はこちらに掲載されています。

※農業、林業、漁業および遊興娯楽や金融・保険業などの一部の業種は非対象です。

 

 

要件にある「中小企業者等」や「信用保証協会の保証業種」については、業種、資本額、従業員数などの詳細が定められています。利用を申請する前に、ご自身の事業が当てはまるかどうかよく確認しましょう。

 

北海道中小企業総合振興資金の申込みの流れとしては、以下の2種類があります。

 

・あっせん申込み

融資申込者が商工会議所や商工会を通して申込む方法

 

・直接申込み

融資申込者が金融機関へ直接申込む方法

 

<引用元>北海道 中小企業総合振興資金の概要

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/csk/kny/yuushi/shikingaiyo.htm

 

 

2.北海道中小企業総合振興資金の概要

「事業を立ち上げるための資金が欲しい」「規模が小さい会社でも融資は受けられる?」「コロナで経営に打撃が…」というように、事業のための資金といっても、その使途は企業者によって異なります。

 

北海道中小企業総合振興資金には、そうしたさまざまなニーズに合わせた資金メニューが用意されています。代表的なものを4つご紹介します。

 

(1)創業貸付

以下の融資対象にあるように、道内で新たに事業を始める人や、創業して5年未満の人向けの資金メニューです。事業資金として最大3500万円、最長10年間の融資が受けられます。

 

  • 融資対象

・事業を営んでいない個人で、「1カ月以内に新たに事業を開始する」、あるいは「2カ月以内に新たに会社を設立して事業を開始する具体的な計画がある」もの

 

・中小企業者で、「新たに中小企業者に該当する会社を設立して事業を開始する具体的な計画がある」もの

 

・事業を営んでいない個人で、個人または会社設立により事業を開始して5年を経過していないもの

 

・中小企業者が、新たに設立した中小企業者に該当する会社で、設立後5年を経過していないもの

 

金利は、融資期間や金利タイプにより異なり、年1.1%〜1.7%です。担保の有無や償還方法は、取扱金融機関の定めるところによります。もし信用保証協会の「創業等関連保証」、「再挑戦支援保証」を受ける場合には、無担保、無保証人での借り入れが可能です。ただし、法人の場合は原則として代表者を保証人に設定します。

 

申込方法は「あっせん申込み」となるので、商工会議所、商工会に「融資あっせん申込書」とその他必要な書類を提出します。

 

<参考>北海道中小企業総合振興資金 創業貸付

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/csk/kny/yuushi/01sogyo.htm

 

(2)一般貸付

道内のすべての中小企業者等を対象にした資金メニューです。事業資金として、最大8000万円、最長10年間の融資が受けられます。

 

金利は、融資期間や金利タイプによって異なり、年1.5%〜2.1%です。変動金利は、融資期間が3年を超える場合のみ選択でき、該当しない場合は固定金利となります。担保の有無や償還方法は、取扱金融機関の定めるところによります。

 

申し込みは、「あっせん申し込み」、もしくは「直接申し込み」が可能です。決算書または2期分の確定申告書、登記簿謄本(登記事項証明書)、設備資金の融資を受ける場合は見積書など、必要書類を確認しましょう。

 

<参考>北海道中小企業総合振興資金 一般貸付

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/csk/kny/yuushi/07ippan.htm

 

(3)小規模企業貸付

従業員20人以下の中小企業者等を対象とした融資制度です。信用保証協会の小口零細企業保証の対象となる小規模企業者向けの、【小口】タイプも用意されています。

 

事業資金として、最大5000万円(【小口】最大2000万円)を、運転資金は「最大7年間」、設備資金は「最大10年間」借り入れできます。融資期間は1年以内の設定も可能です。

 

金利は、融資期間や金利タイプにより、年1.3%〜1.9%です。変動金利は、融資期間が3年を超える場合のみ選択できます。

 

担保や保証人は原則として必要ありません。ただし法人の場合は、原則「法人代表者」を保証人に設定します。償還方法は取扱金融機関によりますが、1年以内の短期借り入れは一括償還ができます。

 

申し込みは、「あっせん申し込み」、もしくは「直接申し込み」が可能です。決算書または2期分の確定申告書、登記簿謄本(登記事項証明書)、設備資金の融資を受ける場合は見積書などの書類が必要となります。

 

<参考>北海道中小企業総合振興資金 小規模企業貸付

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/csk/kny/yuushi/08shokibo.htm

 

(4)新型コロナウイルス感染症緊急貸付(短期資金)

新型コロナウイルス感染症によって、経営に影響が出ている中小企業者等を対象にした資金メニューです。

 

具体的には、「最近1カ月の売上高等が、前年または前々年の同月と比べて5%以上減少している中小企業者」が融資対象者として定められています。(※)

 

(※)業歴が3カ月以上1年1カ月未満の方は、最近1カ月の売上高等が、令和元年10月以降の連続する3カ月の平均売上高等に比べて5%以上減少している場合も対象

 

運転資金として、最大8000万円を1年以内の融資期間で借り入れできます。金利は年1.0%の固定金利のみで、担保の有無は取扱金融機関によって異なります。

 

  • 取扱金融機関

北海道銀行、北洋銀行、道外本店銀行道内支店、商工組合中央金庫、農林中央金庫、信用金庫、信用組合、北海道信用農業協同組合連合会、信用金庫、信用組合

 

すべて信用保証協会の保証付き融資となります。契約時に保証料がかかりますが、保証料の1/3または全額(小規模企業者かつ売上高等が15%以上減少の場合)を北海道が補助してくれます。

 

「あっせん申込み」、もしくは「直接申込み」となりますが、市町村の認定があるかどうかで方法が異なります。専用申込書や2期分の決算書、商業登記簿謄本(法人の場合)などが必要です。

 

この資金メニューには取扱期間が定められています。申し込みの際は、最新情報をチェックしましょう。

 

<参考>北海道中小企業総合振興資金 新型コロナウイルス感染症緊急貸付(短期資金)及び信用保証料補助のごあんない

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/csk/kny/yuushi/shikin_korona-yuushi.htm

 

 

それぞれの資金メニューにおいて、金融機関の審査、また必要に応じて北海道信用保証協会の保証審査が行われます。審査結果によっては、貸し付けを受けられない場合もありますので留意が必要です。

 

 

3.まとめ

北海道中小企業総合振興資金についてご紹介しました。北海道で事業を営んでいる方は、参考にしてみてください。資金の調達手段を考えるにあたり、自分の会社にとって何がベストの選択なのか悩む方は大勢いらっしゃいます。ご自身でいろいろ調べてみるのもよいですが、情報がありすぎて余計に迷ってしまうことも。まずは資金調達の専門家に相談し、プロにアドバイスを求めた上で検討することをおすすめします。

 

執筆者:吉田 裕美(よしだ ゆみ)

金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。

お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。