個人事業主のメリット/起業の第一歩は個人事業主として

法人と違い開業手続きが簡単な個人事業主。起業の第一歩として検討される方も多いことでしょう。

この記事ではそもそも個人事業主はフリーランスや法人とどう違うのか、個人事業主を始めるときにはどのような手続きが必要なのかなどをお伝えしていきます。

そもそも個人事業主とは、

  • 会社員ではない 
  • 自ら事業を営んでいる 
  • しかし法人は設立していない

人を指します。

個人事業主のことを株式会社の社長と同じものとして理解している方も多いのですが、あながち間違いではありません。個人事業主は会社を設立していないため、本来会社の社長ではありませんが、肩書として社長と呼ぶことがあります。

対して会社の社長(法人経営者)は個人事業主ではなく、そのまま社長もしくは経営者などと呼ぶのが一般的です。

1. 個人事業主とフリーランスの違い

個人事業主とフリーランスは似ているようで異なります。その大きな違いは税務署に開業届を出しているか、いないかという違いです。

フリーランスとは単発の仕事ごとに契約を結び、案件ごとに業務を行う働き方のことをいうのに対し、税務署に開業届けを提出した人を個人事業主といい、税務上の所得区分で法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人のことを意味します。

2. 個人事業主と法人の違い

次に個人事業主と法人の違いですが大きく分けて、事業開始の手続き、税金の仕組み、廃業の手続きの3点の違いがあります。

まず1つめの事業開始の手続きについて、個人事業主の開業届の手続きは、「書類に必要事項を記載して税務署に提出する」だけですが、法人の場合は、形態(種類)によって手続き方法や、申請から登記完了までにかかる期間も、数週間から数ヶ月とさまざまです。

2つめの税金の仕組みについて、個人事業主は「所得税(所得の5~40%。所得に応じて税率が変わる)」を所得に応じて支払いますが、法人にはこの所得税の代わりに「法人税(所得の15~25.5%)」を利益に応じて支払います。また住民税は納付する自治体によって異なりますが、個人事業主はおおよそ所得の10%+4,000円であるのに対し、法人の場合、法人税額の15~25.5%(+最低税額70,000円)です。
さらに法人になると、個人事業主よりも経費にできる項目が増えます。個人事業主の経費項目はそのまま法人にもあてはめることができますが、さらに経営者本人、家族従業員への給料や、生命保険料、住宅賃料(社宅など)、出張費や休日出勤の日当なども経費として計上できます。

そのため、個人事業主よりも法人の方が経費計上による節税には有利だと考えられます。

そして3つめの廃業の手続きについて、個人事業を廃業する場合の手続きは、所定の様式に必要事項を記入し、所轄の税務署及び管轄の都道府県税事務所に提出することで完了です。しかし法人を廃業する時には、解散・清算の手続きが必要です。原則的には、法律に従って会社を解散・清算しなくてはならず、そのためにはさまざまな手続きが必要となり、個人事業主と比べ手間がかかってきます。

3. 個人事業主のメリット、デメリット

では個人事業主になった場合、メリットとデメリットはどのようなものが挙げられるのでしょうか。

(1)個人事業主のメリット

個人事業主のメリットは、開業手続が簡単であることと、青色申告で節税できることです。

個人事業主の開業届けを出すだけで、個人事業主になることができます。(厳密にはこの届出を出さなくても、事業所得があれば確定申告しなくてはいけないので、個人事業主となります。)

そして個人事業主の確定申告では「白色申告」と「青色申告」の2種類の申告方法があり、青色申告の方が白色申告と比べ、控除額が大きく、節税のメリットが大きいと言えます。

(2)個人事業主のデメリット

個人事業主のデメリットは、社会的信用が得られにくいことと、課税所得が増えれば税制上不利であることです。

個人事業主は法人よりも簡単に設立や運営ができる分、社会的な信用は法人よりも劣り、個人との契約を避け、法人との取引を希望する企業も多くあります。さらに法人でないと許可が得られない業種があるので注意が必要です。

また個人事業主は、所得(利益)が増えると法人よりも多く税金を納めなければならないこともあります。所得税は累進課税のため、所得金額が増えるごとに税率が上がる。

4. 個人事業を始めたら

個人事業を始めた場合、しなければならないことをお伝えしていきます。

(1)社会保険

個人事業主の場合は社会保険の切替手続きや加入手続きを自分で行わなければいけません。

社会保険の1つである国民健康保険は、自治体が運営する健康保険制度で、加入手続きを行わなければなりません。会社員が退職後に加入する場合には、退職の翌日から14日以内に手続きが必要です。会社員が退職して個人事業主になる場合、退職前に継続して2カ月以上の期間にわたって会社の健康保険に加入していれば会社の健康保険に任意継続加入もできます。しかし会社員時代のように会社が保険料の半分を負担するわけではないため、保険料額が原則2倍になります。任意継続加入をする場合、会社の健康保険の資格喪失日から20日以内に手続きが必要なため、他の健康保険制度とも比較した上で早めに手続きをしましょう。

また個人事業主は国民年金の手続きも行う必要があります。厚生年金に加入していた会社員が退職した場合等には14日以内に市区町村で手続きを行わなければならないため、注意しましょう。

(2)開業届

新たに事業を開始したときは開業届を税務署へ提出しなければなりません。開業届は事業の開始などの事実があった日から1カ月以内に提出します。提出期限が土・日曜日・祝日などに当たる場合は、これらの日の翌日が期限で、手数料はかかりません。

国税庁[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続より
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm

(3)青色申告

青色申告をする場合、申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始などの日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2カ月以内。)に申請書を作成し、持参または送付により提出します。なお、提出期限が土・日曜日・祝日などに当たる場合は、これらの日の翌日が期限です。

国税庁[手続名]所得税の青色申告承認申請手続より
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm

(4)名刺やホームページなど

個人事業主として仕事を始める上で必要なものは業種によってさまざまですが、共通して必要なものとしてパソコンやプリンタ、名刺やホームページの作成などが一般的です。

名刺やホームページなどは、いちから自分で作るものや、全て業者に依頼するもの、最初は業者に依頼し、話し合いをしながら自分で作っていくものまで種類も多く、値段も安いものから高いものまでさまざまです。自分自身が納得したものを使いましょう。

まとめ

以上、個人事業主についてお伝えしましたが、個人事業主は開業も廃業も法人と比べ、簡単です。また個人事業主であれば定年もなく働き方も自由なので、自分好みに働くことができるといえます。起業をしたいと思った際、法人と比べさまざまな手続きが簡単な個人事業主。最初の第一歩として検討してみると良いでしょう。

執筆者:松尾 朋美(まつお ともみ)

金融機関勤務、IT会社を経て、フリーへ転身。
金融機関のオウンドメディアの執筆をはじめ、お金に関するコラム執筆を行う傍ら、広告代理店と提携し、企業のwebマーケディング業務に携わる。