新規事業の立ち上げを目指す起業家にとって、資金調達は避けて通れない課題です。
資金調達で頭を悩ませている時に思いつくのは、クラウドファンディングを利用して資金を集めることではないでしょうか。
クラウドファンディングで資金調達を成功させるには、仕組みやリスクを知り、正しく活用することがポイントです。本記事では、クラウドファンディングの基礎知識、利用することのメリットや注意点などについて解説します。
1 クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、インターネット上に自分のアイデアを公開し、それに賛同した人たちから資金を集める仕組みのことです。「クラウド(群衆)」「ファンディング(資金調達)」という造語からもわかる通り、クラウドファンディングは、不特定多数の人たちから、資金を募ることを目的としています。
クラウドファンディングでは、アイデアや企画など、やりたいことを公開して資金を調達する人を「起案者」、やりたいことに賛同して資金を提供する人を「支援者」と呼びます。起案者が提案するプロジェクトは、商品など目に見えるモノから、サービスや問題解決方法といった、目に見えないコトまでさまざまです。
提案されるプロジェクトのジャンルも幅広く、発展途上国支援やハンドメイドの販売、商品開発など多岐にわたります。支援者は、興味を持ったプロジェクトに出資し、支援者が多く集まれば集まるほど、目標金額を達成しやすくなります。起案者は、集めた資金でプロジェクトを実施し、リターンを支援者に渡します。
2 クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングは、仕組みの違いによっていくつかの種類にわけられます。国内の主なクラウドファンディングの種類は、「購入型」「寄付型」「融資型」「投資型」です。それぞれ詳しく説明します。
(1) 購入型
購入型は、支援者が、プロジェクトを支援する思いと共に、プロジェクト達成の見返りであるリターンを期待して、資金を拠出するタイプのクラウドファンディングです。起案者は、支援してくれた見返りとして支援者に渡すリターン含めたプロジェクトを提案します。リターンの対象になるのは、商品やサービス、権利などさまざまです。プロジェクトが成立すると、支援者は起案者からリターンを受け取ります。
購入型には「All In型」と「All or Nothing型」の2つのタイプがあります。前者は目標額に達した・達しないに関係なく、(起案者が事前に実施の確約をしていれば)プロジェクトが成立します。後者は、目標額に達すればプロジェクトは成立しますが、そうでなければ不成立となり、その場合は支援者にお金を返します。
購入型クラウドファンディングは、「非投資型」とも呼ばれているように、金銭的な見返りはありません。商品やサービスが対象になる購入型のリターンには、市場に出回っていないレアな商品など、支援者でなければ得られないモノも多く、それが購入型の魅力になっています。
(2) 寄付型
寄付型はその名の通り、支援者が気に入ったプロジェクトに対して寄付をするタイプのクラウドファンディングです。
起案者は、クラウドファンディングサイトなどで出資者を募り、賛同者からお金を集めます。見返りのない寄付型のプロジェクトは、おもに被災地支援や社会的弱者のサポートなど、慈善活動的な要素の強いものがほとんどです。
この場合、起案者・支援者双方に、金銭的・物質的なメリットはありません。しかし、純粋に人の役に立てる達成感や、良いことをしているという充実感を味わえるのが、寄付型の醍醐味と言えるでしょう。
寄付型には原則としてリターンはありませんが、実際は、感謝状のような「対価性のないリターン」が返礼になっているようです。こうした返礼は、通常の範囲であれば問題ありません。しかし、対価性がないからと言って度が過ぎてしまうと、寄付と見なされず、税制優遇が受けられない可能性も出てきます。
(3) 融資型
融資型は、いわゆる貸付タイプのクラウドファンディングで、ソーシャルレンディングと呼ばれることもあります。
起案者は、お金を貸したいと考えている複数の個人から少額の資金を集め、それを元に、プロジェクトに投資します。そして、期日までに元本に利息をつけた金額を、支援者に返済するのが融資型の特徴です。
融資型は購入型や寄付型と異なり、支援者は、金銭的なリターンを得ます。借り入れる側(起案者)は、金融機関などから融資が受けられなかったプロジェクトでも資金調達が可能となり、プロジェクトの実現が視野に入ります。
融資型には、さまざまな分野のプロジェクトがあります。中には、「再生可能エネルギーに強みがある」など、特定のジャンルに特化しているクラウドファンディングサイトがあるので、利用する際は事前にサービス内容を確認しておくことが不可欠です。
融資型のプロジェクトは、金融商品に分類されます。そのため、クラウドファンディング事業者は貸金業法など、金融商品を規制する法律に従う必要が出てきます。
(4) 投資型
投資型は、個人ではなく企業が出資を募るタイプのクラウドファンディングです。
企業は個人投資家に対して未上場企業の未公開株の取得や、特定の事業への投資を提案して、投資資金を集めます。出資者は、金銭的なリターンと共に、プロジェクトで誕生した商品やサービスなどを受け取ることもあります。
投資型は融資型と同じく、起案者は集めた資金をプロジェクトに投資し、金銭的なリターンを出資者に還元します。融資型は元本に利息を上乗せして出資者に返済するのに対し、投資型は、配当金がリターンになるため、出資者が得る金額は、プロジェクトの成果としての利益によって上下します。
投資型では資金調達額と投資金額に制限があり、借り手側が資金調達できる額は、年間1億円未満、出資側が出資できる金額は、1社につき50万円までです。なお、投資型クラウドファンディングを運営するには、「第一種少額電子募集取扱業」などの資格が必要になります。
3 クラウドファンディングのメリットとリスク
クラウドファンディングには、利用することで得られるメリットの他に、リスクを伴うこともあります。メリットとリスクの両方について事前に把握し、クラウドファンディングについて理解を深めましょう。
(1) クラウドファンディングを活用するメリット
起案者は、クラウドファンディングを活用することによってどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なものを挙げてみます。
・資金調達の幅が広がる
クラウドファンディングは、やりたいことを実現するために資金が欲しい人と、資金を提供したい人をつなぐ、新たな資金調達方法です。金融機関から融資を受けられないようなプロジェクトでも、クラウドファンディングなら支援してくれる人を募ることができるため、資金調達の幅が広がります。
・金銭以外のリターンを提示して資金を集めることができる
起案者は、支援者に対して自由にリターンを決められます。融資型や投資型のように、金銭的なリターンに限られるものもありますが、購入型では、金銭以外のモノやコトを見返りに、資金を募ることができます。
・商品やサービスの宣伝ができる
クラウドファンディングを利用すると、できるだけ多くの人にプロジェクトを知ってもらおうと情報を公開しますので、結果的に商品やサービスのPRになります。
クラウドファンディングで注目されれば、労力とコストをあまりかけずに、より多くの人たちに、プロジェクトの存在を広めることが可能です。
このように、クラウドファンディングには柔軟に資金調達ができる、拡散性が高いというメリットがあります。クラウドファンディングを活用することによって、新たなビジネスチャンスが広がります。
(2) クラウドファンディング利用上の留意点
クラウドファンディングにはメリットがある反面、利用する際に気をつけるべきこともあります。特に注意したい点について説明します。
・資金調達が不成功に終わることがある
クラウドファンディングを利用したからと言って、必ず資金が集まるという保証はありません。つまり、資金調達がうまくいかないこともあるのです。
思うように資金が集まらなければ、プロジェクトは失敗となります。企画からPRまで費やしてきた時間と労力を考え、「徒労に終わってしまった」と、落胆してしまうかもしれません。
・商品やサービスのアイデアが第三者に盗まれる可能性がある
クラウドファンディングには、世に出したい商品やサービスを宣伝できるというメリットがあります。その反面、アイデアを第三者に盗まれてしまうリスクも常に存在します。
誰よりも先に公開した、新しいアイデアを競合に盗まれた場合、実際に商品化した時にはすでに類似品が市場に出回っていた、ということも考えられます。
・事業遂行が計画通りに進まず、返金などの対応が必要になることがある
何らかの理由でプロジェクトが計画通りに進められず断念する場合、起案者は支援者に説明し、場合によっては返金に対応しなければなりません。プロジェクトを断念しなくても、計画に遅延や変更が発生した場合は、起案者は支援者に対して事情を説明する責任があります。
4 クラウドファンディングの流れ
クラウドファンディングの利用方法は、各クラウドファンディングサイトで異なりますが、およその流れは以下の通りです。
①クラウドファンディングを利用する目的を明確にする
何のために資金が必要なのか、プロジェクトを実現させることで社会的にどんなメリットやベネフィットが得られるかなど、プロジェクトに込めた志や目的などを整理しましょう。
②利用するクラウドファンディングサイトを決める
各クラウドファンディングサイトによって、手数料や強みを持つ分野などが異なります。予算や公開するプロジェクトの内容といった点を考慮しながら、最適なサービスを選びましょう。
③プロジェクトページを作成する
プロジェクトの審査が通ったら、プロジェクトページを作成します。プロジェクトの内容や目標金額達成後のビジョンを盛り込むなど、ページを閲覧する人たちの共感を得ることを意識しながら作成することがポイントです。
④プロジェクトを公開する
プロジェクトページを公開したら、より多くの支援者を集める工夫が必要です。具体的には、そのページをSNSで紹介したり、知り合いにクラウドファンディングで資金を募っていることを知らせたりと、できるだけ多くの人がプロジェクトページに訪れるよう広報活動を展開します。
⑤プロジェクトを終了し支援者にリターンの送付をする
募集期間が終了しプロジェクトが成立した場合、手数料を引いた金額が、運営者側から自分の口座に後日入金されます。リターンを送付するタイミングは、プロジェクトの内容にもよりますが、事前に約束している場合は、この時点でおこないます。
5 まとめ
本記事では、クラウドファンディングの基礎知識からメリットやリスク、利用の流れについて説明しました。
クラウドファンディングは誰でも取り組みやすく、魅力的な資金調達方法ですが、リスクがないというわけではありません。リスクについて資金調達の専門家に相談しながら活用を検討するのが得策でしょう。
クラウドファンディングを正しく活用し、プロジェクトの実現に役立ててください。
英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。