長崎県の制度融資/中小企業の資金調達のために

長崎県中小企業向け融資制度は、中小企業者の資金調達に関する悩みを解消するための制度。長期・固定金利で融資を受けられるのがメリットです。

 

今回は、長崎県中小企業向け融資制度の概要やコース内容について説明します。

 

新型コロナウイルスの影響でダメージを受けた中小企業やこれから長崎県で創業する人は、長崎県中小企業向け融資制度を利用できるかもしれません。融資対象に当てはまるか確認しましょう。

 

1.長崎県中小企業向け融資制度とは

長崎県中小企業向け融資制度とは、中小企業者が金融機関を通じて県からの融資を受けられる制度です。

 

<長崎県中小企業向け融資制度の目的>

 

・中小企業の経営を安定させるため

・中小企業者が資金調達を円滑に行うため

 

長崎県中小企業向け融資制度の特徴は、長期・固定金利の融資であること、長崎県信用保証協会の保証が必要になることの2点。

 

利率は年1.00%~2.15%(条件を満たせば年利0%)で、民間の銀行よりも低めに設定されています。

 

そして、融資を受ける際には、長崎県信用保証協会に保証申込をして保証承諾を得ることが条件です。長崎県信用保証協会が保証人になることで、信用力や担保力に乏しい中小企業者でも融資を受けられるのがメリットですが、中小企業者は信用保証協会に信用保証料を支払わなくてはいけません。

 

窓口は取扱金融機関・信用保証協会なので、こちらに掲載されている銀行等で申込み手続きを行いましょう。

https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2020/05/1588337742.pdf

 

2.長崎県中小企業向け融資制度の概要

 

長崎県中小企業向け融資制度には以下の9つのコースがあります。

 

◆経営安定資金

◆小規模企業者支援資金

◆下請け企業・協同組合振興資金

◆緊急資金繰り支援資金

◆創業バックアップ資金

◆事業承継資金

◆再生支援資金

◆地域産業支援資金

◆地方創生推進資金

 

これらの中から、いくつかを詳しく紹介します。

 

(1)創業バックアップ資金

創業バックアップ資金は、長崎県内で新たな事業を始める人や、事業を始めて間もない人が受けられる融資です。

 

融資対象になるのは、以下の条件①~条件④をすべて満たす人です。

 

条件①

「事業を営んでいない個人」で、なおかつA~Dのいずれかに該当する人

A:1ヶ月以内に新しい事業を開始する予定で具体的な計画がある

B:2ヶ月以内に新しい会社を設立する予定で具体的な計画がある

C:事業開始後5年未満である

D:会社設立後5年未満である

 

条件②

条件①-A、条件①-Bに該当する場合は、以下のいずれかに該当する人

・商工会議所、商工会または経営革新等支援機関の指導を受けて事業計画書を策定した人で商工会議所、商工会または経営革新等支援機関の推薦をもらった人

・開業した業種と同一事業に3年以上従事した経験がある人

・特許法、実用新案法または意匠法に基づく設定登録を受けた人で、その技術を実用化するために新しい事業を始める人

・法律に基づく資格がある人で、その資格を生かして新しい事業を始める人

 

※経営革新等支援機関:中小企業に専門性の高い支援事業を行っていると国の認定を受けた機関

経営革新等支援機関の一覧はこちらです

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.htm

 

条件③

県内に住所を有する人

 

条件④

県税を完納している人

 

創業バックアップ資金は、運転資金、または設備資金として使用でき、どちらの場合でも融資限度額は3,500万円です。条件①-A、条件①-Bに該当する場合は2,000万円に自己資金を加えた額が融資限度額ですが、一般保証を利用する場合の融資限度額は3,500万円です。

 

利率は年1.65%で、償還期間は運転資金だと7年以内(措置1年)、設備資金だと10年以内(措置2年)です。保証料率は年0.40%ですが、一般保証を利用する場合は0.05%~1.50%となります。

 

(2)小規模企業者支援資金

小規模企業者支援資金は、業種ごとに定められた基準を満たす規模の小さな企業向けの融資です。

 

小規模企業者は以下のように定められています。

※NPO法人は除く

 

卸売業 資本金の額または出資の合計額が1億円以下

または

常時使用する従業員数が5人以下の企業

小売業 資本金の額または出資の合計額が5千万円以下

または

常時使用する従業員数が5人以下の企業

サービス業 資本金の額または出資の合計額が5千万円以下

または

常時使用する従業員数が5人以下の企業

製造業などその他の業種 資本金の額または出資の合計額が3億円以下

または

常時使用する従業員数が20人以下の企業

 

これらの条件に当てはまる小規模企業者であり、なおかつ保証協会の保証による借入が小規模企業者支援資金の借り入れを含めて2,000万円を超えない場合に融資を受けられます。

 

融資対象の条件は次のどちらかに該当する小規模企業者です。

 

ア:県内で事業を継続していて県税を完納している

イ:特別小口保険を利用する場合は、県内で同一の業種に関わる事業を1年以上継続していて、今回の借り入れ申し込み日以前1年間に源泉徴収による所得税以外の所得税(法人の場合は法人税)、事業税または県民税、市町村の所得割のいずれかを完納している

 

資金の使い道は運転資金でも設備資金でもOKで、融資限度額は2,000万円です。

 

利率は年1.90%以内、償還期間は運転資金だと7年以内(措置1年)、設備資金だと10年以内(措置2年)となっています。保証料率は0.50%~1.60%ですが、セーフティネット1~8号は0.45%、特別小口保険は0.45%です。

 

セーフティネット1~8号とは、一般保証枠とは別枠で保証を行う国の制度。経営が不安定になった中小企業者へ資金を供給することがセーフティネット保証制度の目的です。

 

1号:大型倒産事業者に売掛債権等があって資金繰りが困難になった中小企業者

2号:事業活動の制限を行っている事業者と取引を行って売上等が減少した中小企業者

3号:事故等で売上高が減少している中小企業者

4号:自然災害で売上高が減少している中小企業者

5号:全国的に業績が悪化している業種に属する中小企業者

6号:破綻金融機関と金融取引があって借入の減少等が生じている中小企業者

7号:金融機関の支店の削減等により借入れが減少している中小企業者

8号:RCC(整理回収機構)へ貸付債権が譲渡された中小企業者で事業の再生が可能な者

 

特別小口保険は、先ほどの融資対象の条件「イ」に当てはまる人だけが利用できるものです。

 

(3)新型コロナウイルス感染症対応

緊急資金繰り支援資金の一種である新型コロナウイルス感染症対応は、新型コロナウイルス感染症の拡大により経営状態が悪化した中小企業者に向けた融資です。

 

融資対象は、県内で事業を継続していて、かつ、県税を完納している中小企業者の中で以下の①~③のいずれかの認定を受けた人です。

 

①セーフティネット保証4号:以下の両方の要件を満たしていて、市区町村長の認定を受けた者

 

・県内で事業を1年以上継続して行っていること

 

・原則として最近1ヶ月の売上または販売数量が前年同月に比較して20%以上減少、かつ、その後2ヶ月間を含む3ヶ月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減ることが見込まれること(売り上げ減少の原因は新型コロナウイルスに限る)

 

②セーフティネット保証5号:以下の要件を満たしていて、市区町村長の認定を受けた者

 

・指定業種に関する事業を行っていて、最近3ヶ月間の売上高等が前年比5%以上減少した

 

指定業種一覧:https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2021/210119_5gou.pdf

 

③危機関連保証:以下の両方の要件を満たしていて、市区町村長の認定を受けた者

 

・金融取引に支障があり資金調達をする必要がある

 

・原則として、最近1ヶ月の売上高等が前年同月比で15%以上減少しており、かつ、その後2ヶ月を含む3ヶ月間の売上高等が前年比で15%以上減少することが見込まれる(売り上げ減少の原因は新型コロナウイルスに限る)

 

新型コロナウイルス感染症対応は、運転資金にも設備資金にも利用でき、融資限度額は令和3年2月に4,000万円から6,000万円に引き上げられました。利率は年1.30%(条件を満たせば貸付から3年間は利率0%)で、償還期間は運転・設備ともに10年以内(措置5年)です。

 

保証料率は売上高等の減少率が15%以上の個人事業主かつ小規模企業者は年0%、それ以外の方は0.425%です。

 

3.まとめ

今回は長崎県の中小企業向けの融資制度を紹介しましたが、対象となる条件には細かな決まりがあります。

 

それに、新型コロナウイルス対応など、先に市区町村の認定を受けなければないコースに申し込む場合は、手続きの順番を間違えないよう気を付けてください。

 

県の融資制度を利用したい場合は、資金調達の専門家に相談することをおすすめします。そうすれば、手続きを円滑に進められるでしょう。

 

執筆者:宮林 有紀(みやばやし ゆうき)

医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。