リモートワークとは/テレワークと何が違うのか

リモートワークとテレワークの違いが分かりますか?両者はほぼ同じ意味で使われていますが、「リモートワーク=在宅勤務」ではありません。それに、事前準備を整えないと、導入後に様々な問題が生じます。

 

リモートワークを開始する前に基礎知識をつけておきましょう。

 

今回は、リモートワークとテレワークの違い、リモートワークのメリット・デメリット、導入時の留意点についてわかりやすく解説します。

 

1.リモートワークとは

リモートワークとは、「remote:遠隔」+「work:働く」という意味で、会社以外の場所で業務を行うこと。遠隔での業務はすべてリモートワークに含まれます。

 

■リモートワークとテレワークの違い

リモートワークと似ているのが“テレワーク”です。

 

テレワークは「tele:離れた場所」+「work:働く」なので、リモートワークとテレワークの意味はほぼ同じです。違いは、リモートワークには明確な定義がなく、テレワークには定義があることです。

 

日本テレワーク協会によると『テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと』と定義されています。

 

テレワークが日本で初めて導入されたと言われているのは1984年。その後、通産省が分散型オフィスの推進委員会を設置、関係省庁による日本テレワーク協会の設立など、日本政府が積極的に普及させているのがテレワークです。

 

テレワークとして浸透しているのは「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」の3種類。これは、日本テレワーク協会による分類です。

 

 

在宅勤務:自宅で業務を行うこと

 

モバイルワーク:顧客先にいる時や移動中にパソコンや携帯電話を使って働くこと

 

サテライトオフィス勤務:本社以外の場所にある小規模オフィスで働くこと

 

 

リモートワークはテレワークとほぼ同じ意味なので、具体的には在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィス勤務を指すと言えます。

 

2.リモートワーク導入のメリットとデメリット

働き方改革の一環としてテレワークを導入する企業が増えています。同じ意味を持つリモートワークも政府が推進している多様な働き方を実現させるために役立ちます

 

ここからは、リモートワークのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。

 

(1)リモートワーク導入のメリット

◆通勤負担の減少などで従業員の生産性が向上する

リモートワークを導入するメリットは生産性が上がることです。

 

生産性が上がる1つ目の理由は、通勤負担が軽くなるからです。通勤する必要のない在宅勤務はもちろんのこと、本社よりも自宅に近いサテライトオフィスや近所のカフェでの業務でも通勤による疲労感が減少します。その結果、仕事へのパフォーマンス向上が期待できます。

 

生産性が上がる2つ目の理由は、時間を有効活用できるからです。モバイルワークができれば出張や外回り営業中の移動時間が無駄になりません。

 

それに、育児・介護・病気療養中など、制限がある職員にとっては多様な働き方が認められている環境は非常にありがたいもの。在宅勤務ができれば、子供が体調を崩しても自宅で看病しながら業務が行えます。

 

生産性が上がる3つ目の理由は、業務に集中しやすいからです。リモートワークなら、他の社員の話し声に気をとられたり、電話対応に割く時間を減らせます。

 

また、集中しやすい時間帯は人によって様々。在宅勤務で好きな時間に業務が行えるルールにすれば、最小の時間で最大の成果を出せます。

 

生産性が上がる4つ目の理由は、従業員のモチベーションが上がるからです。

 

・自宅で好きな音楽をかけながら在宅勤務を行う

・在宅勤務の休憩時間に体を動かして気分転換をする

・お気に入りのカフェでモバイルワークを行う

・景色の良いサテライトオフィスでリラックスして仕事をする

 

など、社員のやる気をアップさせるための環境が作りやすいです。

 

◆働き方の多様化を認めれば優秀な人材を定着させることができる

リモートワークを導入するメリットは優秀な人材の離職を防げることです。働き方の多様性を認めたほうが、社員が長く仕事を続けられるからです。

 

体調不良や発病、育児・介護等の理由で本社勤務が難しくなっても、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィス勤務が認められていれば退職せずに済むかもしれません。

 

労働人口の減少により人手不足に悩む企業が増えていて、優秀な人材に関しては奪い合いの状態。退職した社員と同じ能力の人を確保するのは思いのほか難しく、社内にいる有能な従業員を手放すのは大きな損失です。

 

大切なことは、社の財産である優秀な社員を逃さないために、長く仕事を続けられる環境を整えること。そのために役立つのが、リモートワークの導入です。

 

◆業務資源の分散により、事業継続性が確保できる

リモートワークを導入するメリットは事業継続性が確保できること。業務を行える場所が複数か所あることがリスクヘッジになるからです。

 

自宅やサテライトオフィスからアクセスできる環境を整えておけば、災害やテロ攻撃などで本社機能がマヒした時にも事業を継続できます。

 

大規模な非常事態は滅多にありませんが、ゲリラ豪雨や台風、地震などは誰もが遭遇する可能性があります。本社出勤しなくても業務が行える環境を作っておくことは非常に重要です。

 

(2)リモートワーク導入のデメリット

◆従業員の顔が見えず、労務管理が難しい

リモートワークを導入するデメリットは、労務管理が難しいことです。

 

労務管理が難しくなる理由は、勤務中の従業員の様子が把握できないからです。同じオフィス内で業務を行っていれば、怠けている従業員を見つけたらその場ですぐに注意できますが、管理者の目が行き届かないリモートワークだと、社員がサボり放題になる恐れがあります。

 

そして、出退勤や残業の管理がしにくいことも労務管理を難しくする理由です。出退勤時間の打刻や残業・休日申請を遠隔でも行えるよう、仕組みを整えなくてはいけません。

 

労務管理が難しくなる理由としては、従来の方法では評価しにくいことも挙げられます。途中過程がまったく見えない状態だと、成果物でしか評価できません。社員に不満を抱かせないためには、リモートワークに適した評価制度を整える必要があります。

 

◆情報セキュリティに配慮したITツールの導入コストがかかる

リモートワーク導入のもうひとつのデメリットが、環境整備にコストがかかること。

 

外部から社内システムにアクセスするための環境を構築したり、安全に業務が行える対策をしないといけません。滞りなく業務が行えないと生産性が著しく低下する危険があり、セキュリティ対策が不十分なままでは情報漏洩のリスクが高まるからです。

 

3.リモートワーク導入時の留意点

リモートワークを導入する前には、デメリットを補うための対策をしておきましょう。

 

労務管理の難しさに対しては、従業員とのコミュニケーションの取り方を工夫することで勤務中の様子を把握しやすくなります。

 

・定期的にオンライン面談を行って直接話す機会を設ける

・終了時間報告時に、その日に行った業務内容も報告する決まりにする

・パソコン画面が定期的に自動保存されるサボり防止ツールを導入する

・ビジネスチャットツールやweb会議ツールを活用する

・遠隔でも簡単に出退勤時間が打刻できるシステムを利用する

・休日や残業の申請がオンラインでできる仕組みを整える

 

など、色々な方法を併用しましょう。

 

業績の評価方法に関しては、評価基準を明確にすることが大切です。

 

プロセスよりも成果を重視するのか?それとも、途中過程もすべて評価対象になるのか?を事前に決めておいてください。そうすれば、リモートワーク導入後の混乱を予防できます。

 

また、リモートワークをスムーズに行うためには通信インフラの整備が必須です。自社のシステムに外部から安全にアクセスできるVPN接続等を利用しましょう。

 

在宅勤務やモバイルワークを行う際は、必要があればポケットWiFiや据え置き型WiFiを会社負担で契約する等の対策を講じます。使用するパソコンにウイルス対策ソフトを使うことも忘れてはならない点です。

 

4.まとめ

リモートワークにはたくさんのメリットがあります。特に、遠隔での業務に支障がない、過程ではなく成果で評価したい、特別な能力を持つ希少な人材を採用したい、といった条件が重なった時にはリモートワークが最適です。

 

多様な働き方が実現するリモートワークは、働き方改革の推進に役立ちます。在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務それぞれに良さがあるので、事業の特性に合った方法を取り入れましょう。

 

執筆者:宮林 有紀(みやばやし ゆうき)

医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。