制度融資とは、事業資金の調達手段のひとつです。個人事業主や中小企業を営む方などを対象に、地方自治体、金融機関、信用保証協会が連携して融資を行うもので、
・創業したての人でも比較的審査が通りやすい
・一般的な融資より低金利で借り入れできる
といった特徴があります。
今回は、三重県の「中小企業融資制度」について、基礎知識から融資メニューのラインアップまでわかりやすく解説します。
三重県で資金調達を考えている事業者のみなさんは、ぜひ参考にしてみてください。
1.三重県中小企業融資制度とは
三重県中小企業融資制度とは、三重県で事業を行う人が経営に必要な資金をスムーズに調達できるよう設けられた制度です。
三重県、金融機関、信用保証協会(一部融資メニューでは、商工会、商工会議所など)が協力して提供することで、一般的な融資よりも比較的長期、低金利といった有利な融資条件となっています。例えば、多くの融資メニューに対して三重県が最大0.50%の補助(利子補給)を行なっており、利用者の利子負担が軽くなっています。
ここまで読んで、「信用保証協会って何?」と思う方がいるかもしれません。
信用保証協会とは、事業者が金融機関から融資を受けるとき、保証人となり融資をサポートしてくれる公的機関です。起業したばかりの人や、設立して間もない法人など、通常は審査の通りにくい事業者であっても、信用保証協会が入ると融資を受けやすくなるメリットがあります。
▼信用保証協会について、詳しく知りたい方はこちら
通常、信用保証協会を利用するには保証料がかかります。三重県中小企業融資制度では、この保証料についても県が最大0.80%の補助を行うことで(一部融資メニューを除く)、利用者負担を軽減しています。
三重県中小企業融資制度を受けるには、企業規模、事業実績、業種、許認可について、以下の4つの条件をすべてクリアする必要があります。
①中小企業者または小規模事業者であること
中小企業者 (下記いずれかに該当) |
小規模事業者 | ||
業種 | 資本金 | 従業員 | 従業員数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
サービス業(宿泊業・娯楽業以外) | 5,000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | 20人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
製造業等(運送業・建設業を含む) | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
(令和3年4月現在)
<引用>三重県 県融資制度の概要
https://www.pref.mie.lg.jp/SHINSAN/HP/77425022711.htm
②三重県内に主たる事業所があり、1年以上継続して同一事業を営んでいる、かつ、事業税等の県税を完納している
→「創業・再挑戦アシスト資金」など一部融資メニューでは、1年以上の継続事業歴を問われないケースがあります。
③中小企業信用保険法に基づく信用保険の申込み対象業種であること
→農業、林業、漁業等第一次産業に該当する業種、および、遊興娯楽業など一部の業種以外は融資制度を利用できます。
④行政庁の許認可等が必要な事業を営んでいる場合、その許認可等を受けていること
融資メニューによっては、すべて該当しなくても融資対象となったり、上記条件よりもさらに融資対象が限定されていたりといったこともあります。
申し込む際は、事前にご自身の事業内容についてよく確認するとともに、金融機関や信用保証協会、中小企業・サービス産業振興課へ問い合わせをしておくと安心です。
<引用>三重県 中小企業融資制度について
https://www.pref.mie.lg.jp/SHINSAN/HP/77426022712.htm
2.三重県中小企業融資制度の概要
事業資金と言っても、具体的にどのような資金が必要なのかは、事業者によって異なります。三重県中小企業融資制度には、そうした事業者のニーズに合わせてさまざまな融資メニューが用意されています。
その中から「新しく事業を始めようとしている方」、「小規模な経営を行っている方」、「新型コロナウイルス感染症の影響を受けている方」に向けたメニューをご紹介します。
(1)創業・再挑戦アシスト資金
「今は事業を営んでおらず、県内で新たに創業する、もしくはこれからしようとしている方」、「過去に経営悪化により事業を廃止した経験があり、再び事業を始める、もしくは始めようとしている方」などを対象にした融資メニューです。
「創業扱い」「再挑戦扱い」には、それぞれ詳しい条件が設けられているので、参考サイトをよく確認してください。
このメニューは3種類に区分されており、資金使途や融資条件などが異なります。
■創業扱い・再挑戦扱い
前述のとおり、新たに創業を計画している個人、会社、NPO法人が対象。
<資金使途>
設備資金、運転資金
<融資条件>
融資限度額は「最大2000万円」、「10年以内」の融資期間で借り入れできます。融資利率は固定で「1.40%」で、信用保証協会の保証料率は「0.6%(NPO法人は0.45〜1.50%)」です。
■商工会・商工会議所斡旋扱い
創業扱いまたは再挑戦扱いの要件に該当し、さらに商工会または商工会議所の創業支援を受ける個人、会社、NPO法人が対象。
<資金使途>
設備資金、運転資金
<融資条件>
融資限度額は「最大2000万円」、「10年以内」の融資期間で借り入れできます。融資利率は固定で「1.35%」、信用保証協会の保証料率は「0.6%(NPO法人は0.45〜1.50%)」です。
■スタートアップ支援扱い
三重県が承認する海外展開計画に基づき、海外進出を行う個人、会社が対象。
<資金使途>
運転資金
<融資条件>
融資限度額は「最大2000万円」、「10年以内」の融資期間で借り入れできます。融資利率は固定で「1.40%」、信用保証協会の保証料率は「0.50%」です。
※以下の内容は、すべての区分で共通しています。
・返済方法
毎月一定の元金と、借入残高に応じた利息を返済していく「元金均等月賦返済」です。
・担保、保証人
原則必要ありません。ただし、法人代表者については連帯保証人として徴求されます。
・申込先
<参考>三重県 創業・再挑戦アシスト資金
https://www.pref.mie.lg.jp/SHINSAN/HP/77437022725.htm
(2)小規模事業資金
小規模な事業を展開する個人、法人、NPO法人を対象とした融資メニューです。必須条件として、以下の4つがあります。
1.県内に主たる事務所があり、同一事業を引き続き1年以上営んでいること
2.常時使用する従業員が20人(商業・サービス業は5人)以下であること
3.事業税等県税の納付を行っていること
4.商工会議所または商工会の指導を受けていること(NPO法人を除く)
上記を満たす「一般扱い」に加えて、「三重県週小企業・小規模企業振興条例」に基づく認定を受けた人向けの「みえ経営向上支援扱い」、過疎地域などで事業を営む方向けの「過疎・東紀州地域扱い」など、全部で7種類の扱いに区分されています。詳しくは、参考サイトを確認してください。
資金使途や融資条件などは、以下の表のとおり、扱いによって異なります。
<引用>三重県 小規模事業資金
https://www.pref.mie.lg.jp/SHINSAN/HP/77436022724.htm
※以下の内容は、すべての区分で共通しています。
・返済方法
毎月一定の元金と、借入残高に応じた利息を返済していく「元金均等月賦返済」です。
・担保、保証人
担保は、信用保証協会または取扱金融機関の定めるところによります。保証人は、原則必要ありません。
・申込先
事業を行っている場所の商工会議所、商工会など。ただし「商工貯蓄共済制度加入者扱い」は商工会、NPO法人は取扱金融機関へ申し込みます。
<参考>三重県 小規模事業資金
https://www.pref.mie.lg.jp/SHINSAN/HP/77436022724.htm
(3)新型コロナウイルス感染症対応資金
三重県では、新型コロナウイルス感染症によって経営状況に影響が出ている中小企業、小規模企業向けに、以下の資金繰り支援策を実施しています。
■セーフティネット資金
中小企業信用保険法第2条第5項に基づき、特定中小企業者1号〜6号の認定を受けた方、中小企業信用保険法第2条第6項に基づき、特例中小企業者の認定を受けた方を対象に、「経営安定関連保証」や「危機関連保証」を実施するメニューです。
■リフレッシュ資金
最近3カ月の売り上げが減少している方、経営の安定に支障を生じている方などを対象に、経営基盤の強化を図るための運転資金、設備資金を融資するメニューです。支援策の拡充措置により、保証料補助の上乗せが実施されています。
■創業・再挑戦アシスト借換資金
創業・再挑戦アシスト資金の利用者で、創業前か事業歴が3カ月未満の人を対象にした融資メニューです。
それぞれの資金使途、融資条件など詳しい内容は、以下のサイトを参照してください。
<参考>三重県 コロナ関連融資制度一覧
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000921604.pdf
3.まとめ
三重県の中小企業融資制度についてご紹介しました。「自分の事業には、どのような融資メニューがマッチしているのだろう」といった疑問や、「ほかの融資制度とも比較してみたい」といった希望がある場合、資金調達の専門家などプロに相談すると、よいアドバイスが得られることがあります。一人で悩まずに、ぜひそうした相談窓口を活用してみてください。
金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。
お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。