愛媛県の制度融資/中小企業の資金調達のために

制度融資とは、地方自治体と金融機関、信用保証協会が連携して融資を実施する制度。

 

愛媛県中小企業向け融資制度は、金融機関から直接融資を受けるのが難しい中小企業者が対象です。利用目的ごとにコースが分かれているので、融資条件を確認しましょう。

 

今回は、愛媛県中小企業向け融資制度の概要といくつかのコースの詳細を説明します。

 

1.愛媛県中小企業向け融資制度とは

愛媛県中小企業向け融資制度とは、県内の中小企業者が資金調達を円滑に行うために設けられた制度です。特徴は県、金融機関、信用保証協会が連携して資金を供給すること。信用保証協会が借入金の80%~100%を保証します。

 

融資対象は信用保証協会が定める保証対象業種に属する事業を営んでいて、以下の表の資本金または従業員数に該当する中小企業者と表の下に記載した組合です。

 

業種 資本金 従業員数
製造業 3億円以下 300人以下

※ゴム製品製造業は900人以下

卸売業 1億円以下 100人以下
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下

※ソフトウエア業、情報処理サービス業は3億円以下

100人以下

※ソフトウエア業、情報処理サービス業は300人以下

※旅館業は200人以下

医療を主たる事業とする法人 300人以下
特定非営利活動法人 300人以下

※卸売業・サービス業は100人以下

※小売業(飲食店を含む)は50人以下

 

・事業協同組合

・事業協同小組合

・企業組合

・協業組合

・商工組合

・商店街振興組合

・内航海運組合

・生活衛生同業組合

・酒造組合

・酒販組合

 

申し込み窓口は金融機関と信用保証協会なので、申込み窓口一覧に記載されている場所で手続きを行いましょう。

 

申込み窓口一覧

https://www.pref.ehime.jp/h30300/1624/documents/ryuitenr3.pdf

 

2.愛媛県中小企業向け融資制度の概要

愛媛県中小企業向け融資制度は、利用目的ごとに融資限度額や利率が違います。最も有利な条件で融資が受けられるコースを探しましょう。

 

・経営安定短期資金:一般的な事業資金が必要な場合

・建設産業短期資金:建設事業者向けの融資

・経営安定一般資金:一般的な事業資金が必要な場合

・経営安定小口資金:小規模企業向けの融資

・小口零細企業資金:小規模企業向けの融資

・緊急経済対策特別支援資金:経営改善・事業再生に取り組む場合

・雇用促進支援資金:事業を拡大して新たな雇用を創出する場合

・新事業創出支援資金:これから創業する・創業後間もない方向けの融資

・チャレンジ企業支援資金:前向きな投資にチャレンジする場合

 

これらの中からいくつかをピックアップして詳しく説明します。

 

(1)新事業創出支援資金

新事業創出支援資金は、愛媛県内に住んでいる人が新しく事業を起こす際に利用できます。『創業関連資金』『創業等関連資金』『再挑戦支援資金』の3種類があり、『特例』に該当するとより優遇されます。融資対象は以下の条件に該当する人です。

 

『創業関連資金』の融資対象
①-1 ・事業を営んでいない個人

・1ヶ月以内に新たに事業を開始する予定

・新事業に関する具体的な計画がある

①-2 ・事業を営んでいない個人

・2ヶ月以内に新たに会社を設立する予定

・新事業に関する具体的な計画がある

①-3 ・新事業開始前は他の事業を営んでいなかった個人

・新たに事業を開始して5年未満

①-4 ・新会社設立前は事業を営んでいなかった個人

・新会社設立から5年未満

②-1 ・県内に事業所がある中小企業者

・会社が自らの事業の全部、または、一部を継続する

・中小企業者として県内で新しい事業を開始する

・新しく設立する会社の具体的な事業計画がある

②-2 ・県内に事業所がある中小企業者

・会社が自らの事業の全部、または、一部を継続する

・中小企業者として県内で新しい事業を開始して5年未満

 

『創業等関連資金』は『創業関連資金』と融資対象者が似ていますが、①-1と①-2に関しては「借入金額と同額以上の自己資金がある」という条件が追加されます。他の条件は『創業関連資金』とすべて同じです。

 

『再挑戦支援資金』は過去に事業を廃止したり、役員だった会社が解散した経験がある人向けの融資です。共通条件は事業廃止や会社解散から5年未満であること。それに加えて、『創業関連資金』の①-1、①-2、①-3、①-4のいずれかに該当する人が利用できます。

 

『特例』の条件はこちらです。

・公益財団法人えひめ産業振興財団が実施する地域密着型ビジネス創出助成事業、愛媛グローカルビジネス創出支援事業費補助金、または、愛媛グローカルビジネス加速化支援事業費補助金の交付決定を受けた

・えひめ産業振興財団に確認を受けた

・認定特定創業支援事業により支援を受けた

 

創業関連資金 創業等関連資金 再挑戦支援資金
融資限度額 2,000万円 1,500万円 2,000万円
融資期間(措置) 運転7年(1年)以内

設備10年(1年)以内

利率 年1.50%
保証料率 年0.80%

※創業関連資金と再挑戦支援資金を合わせて2,000万円まで

※創業関連資金、再挑戦支援資金、創業等関連資金を合わせて3,500万円まで

 

『特例』に該当すると、融資限度額は上記と同じですが、利率が1.30%になるのがメリットです。

 

また、『創業関連資金』『創業等関連資金』『再挑戦支援資金』の全てにおいて、融資申し込み時に保証協会の債務残高がない場合には、保証料を県が全額負担します。

 

(2)経営安定資金(一般資金)

経営安定資金(一般資金)は、先に紹介した信用保証協会の保証対象業種、資本金、従業員数の条件を満たす中小企業者や組合なら誰でも利用できます。

 

融資限度額は5,000万円、融資期間(措置)は運転資金だと7年(6ヶ月)以内、設備資金は10年(1年)以内です。利率は年2.15%、保証料率は0.35~1.72%となっています。

 

(3)経営安定資金(小口資金)

経営安定資金(小口資金)は、従業員数が20人以下(商業、宿泊業と娯楽業を除くサービス業は5人以下)の小規模企業者が対象です。他の条件は県内に事業所があることだけです。

 

運転資金 設備資金
融資限度額 2,000万円
融資期間(措置) 7年(6ヶ月)以内 10年(1年)以内
利率 1.80% 0.80%
保証料率 0.35~1.40%

 

さらに以下の条件を満たす場合は、通常よりも融資期間が長く利率や保証料率が低い“特別小口保険”を利用できます。

・県内で1年以上同じ業種の事業を行っている

・最近1年間の所得税、事業税または住民税の所得割のどちらかを完納している

・他の保証付き融資を利用していない

 

他に、6ヶ月以上商工会議所などの指導を受けている場合も特別小口保険が利用可能です。

 

(4)小口零細企業資金

小口零細企業資金の融資対象はこちらです。

・従業員数が20人以下(商業、宿泊業と娯楽業を除くサービス業は5人以下)の小規模企業者

・県内に事業所がある

・保証協会への保障債務残高が2,000万円以下である

 

運転資金 設備資金
融資限度額 2,000万円(保障債務残高を含む)
融資期間(措置) 5年(6ヶ月)以内 10年(1年)以内
利率 1.65% 0.65%
保証料率 0.50~1.87%

 

特徴は設備資金の利率に対して1.0%の補助があることで、利用者の負担が軽くなるよう配慮されています。

 

(5)緊急経済対策特別支援資金

緊急経済対策特別支援資金は、以下のいずれかに該当する人が対象です

 

・新型コロナウイルス感染症等の影響により、最近1ヶ月の売上高が過去3年間のいずれかの同期に比べて3%以上減少している。

・最近3ヶ月の平均売上高が、過去3年間のいずれかの同期に比べて3%以上減少している。

・愛媛県知事が指定した大規模災害の影響で事業活動に支障がある

・原油価格高騰等の影響で、最近3ヶ月間の売上高に占める原材料等の費用が過去3年間のいずれかの同期に比べて3ポイント以上増加している

・再生手続開始申立等をした事業者に対して債権がある

信用保険法第2条第5項第2号から第8号のいずれかの市町村の認定を受けた

信用保険法第2条第6項の市町村の認定を受けた

・愛媛県中小企業再生支援協議会の支援を受けて再生を図っている

・雇用調整助成金に係る計画届を労働局長に提出した

・国が認定した経営革新等支援機関のサポートを受けて経営改善に取り組んでいる

 

運転資金 借換資金
融資限度額 企業:5,000万円

組合:1億円

企業:8,000万円

組合:1.6億円

融資期間(措置) 7年(1年)以内 10年(1年)以内
利率 年1.65%
保証料率 年0.35%~1.72%

 

3.まとめ

実績のない中小企業者が金融機関から直接融資を受けるのは非常に難しいです。資金調達に関する悩みがある場合は、愛媛県中小企業向け融資制度の利用を検討しましょう。

 

県からの利子補給や保証料の割引があるのがメリットですが、融資条件が細かく定められているので、自社に最適なコースを見つけるのが難しいかもしれません。

 

おすすめなのは、資金調達の専門家に相談すること。プロの目で見極めてもらって、資金調達で失敗するリスクを減らしましょう。

 

執筆者:宮林 有紀(みやばやし ゆうき)

医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。