徳島県の制度融資/中小企業の資金調達のために

資金調達をする方法の1つが制度融資を利用することです。制度融資の特徴は、地方自治体が融資条件を定めていること。比較的金利が低く、地方自治体が利息や保証料の一部を負担するコースもあります。

 

また、信用保証協会が保証人となり、万が一利用者の返済が滞ったら、信用保証協会が代位弁済する仕組みです。

 

資金調達に関する悩みがあるなら、制度融資の利用を検討してみましょう。

 

今回は、徳島県中小企業向け融資制度の基礎知識、いくつかのコースの詳しい内容について説明します。

 

1.徳島県中小企業向け融資制度とは

徳島県中小企業向け融資制度とは、県と金融機関、信用保証協会が協力して実施している融資制度です。プロパー融資だと金融機関からの審査のみですが、徳島県中小企業向け融資制度は金融機関に加えて信用保証協会の審査もあります。

 

<具体的な手続きの流れ>

 

①中小企業者が金融機関に申し込む

②金融機関が信用保証協会に保証申し込みをする

③信用保証協会が保証を承諾したら融資開始

 

<取扱い金融機関>

 

阿波銀行、徳島大正銀行、四国銀行、三菱UFJ銀行、百十四銀行、伊予銀行、香川銀行、愛媛銀行、高知銀行、徳島信用金庫、阿南信用金庫、徳島県信用農業協同組合連合会、商工組合中央金庫

 

対象者は、以下の業種に該当していて、資本金か従業員数の条件を満たしている企業です。一部のコースでは、医療法人等、特定非営利活動法人、組合でも利用できます。

 

業種 資本金 従業員数
製造業、建設業、運送業等 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下

※農業、林業、漁業、金融業、保険業を営む方は利用できません

 

こちらの業種に関しては以下の条件となります。

 

業種 資本金 従業員数
ゴム製品製造業(自動車や航空機用タイヤ・チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) 3億円以下 900人以下
ソフトウエア業、情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

 

注意点は、法人県民税や事業税の滞納があると利用できないことです。

 

また、他にもコースごとに決められた要件があるので、徳島県中小企業向け融資制度の内容を詳しく見ていきましょう。

 

2.徳島県中小企業向け融資制度の概要

徳島県中小企業向け融資制度は大きく分けると以下の7種類。さらに利用目的ごとに21種類のコースに分かれています。

 

◆創業者・小規模事業者支援

◆事業継承支援

◆成長産業育成支援

◆経営安定支援

◆防災減災対策

◆地域連携企業支援

◆一般支援

 

いくつかのコースをピックアップして詳しく説明します。

 

(1)創業者無担保資金

創業者無担保資金は、これから事業を開始する方や創業して間もない方向けのコースです。

 

対象者は、次の条件のどれかに該当する人です。

 

【ア】事業を営んでいない個人で、1ヶ月以内に新たな事業を開始するための具体的な計画がある

【イ】事業を営んでいない個人で、2ヶ月以内に新たな会社を設立するための具体的な計画がある

【ウ】事業を営んでいない個人が新たな事業を開始して、開始日から5年未満である

【エ】事業を営んでいない個人が設立した会社で、設立日から5年未満である

【オ】創業促進・あったかビジネス支援事業において徳島県から事業計画を認定された

 

<創業促進・あったかビジネス支援事業とは?>

 

・「徳島県特有の資源」や個人のユニークな「能力・経験等」を活かした事業

 

参考:創業促進・あったかビジネス支援事業

 

  運転資金 設備資金
融資限度額 2,000万円
融資期間(措置) 6年(2年)以内 8年(2年)以内
利率 年1.90%
保証料率 年0.50%

 

創業者無担保資金の特徴は、鳴門市・小松島市・阿南市・吉野川市・阿波市・美馬市・三好市で起業する場合は保証料率が年0.00%になることです。

 

また、対象者【オ】の「あったかビジネス支援枠」では、利率が年1.60%以内(女性の場合、年1.20%以内)、保証料率が年0.10%(女性の場合、年0.00%)となります。

 

(2)一般資金

一般資金は、県内に事業所があって、6ヶ月以上継続して同じ事業を営んでいる中小企業者、組合、医療法人等、特定非営利活動法人が利用できるコース。対象者の範囲が広いのが特徴です。

 

運転資金 設備資金
融資限度額 3,000万円

組合:4,500万円

運転資金との合計で6,000万円

組合:運転資金との合計で6,500万円

融資期間(措置) 5年(1年)以内 10年(1年)以内
利率 年2.40%
保証料率 年0.45~1.90%

 

(4)小口資金

小口資金の対象者は、県内に事業所があって、以下のいずれかの条件を満たす小規模企業者です。

※特定事業とは冒頭で紹介した徳島県中小企業向け融資制度の対象となる業種

 

【A】特定事業を行っていて、常時使用する従業員数が20人(商業、サービス業は5人)以下の会社や個人

【B】特定事業をメインとして行っていて、常時使用する従業員数が20人(商業、サービス業は5人)以下の会社や個人

【C】特定事業を行う事業協同小組合、または組合員の3分の2以上が特定事業を行う事業協同小組合

【D】事業に従事する組合員の数が20人以下の特定事業を行う企業組合

【E】事業に従事する組合員の数が20人以下の特定事業を行う協業組合

【F】常時使用する従業員数が20人以下の医療法人等

 

運転資金 設備資金
融資限度額 2,000万円
融資期間(措置) 7年(1年)以内 7年(1年)以内
利率 年1.70%
保証料率 年0.30~1.25%

 

(5)セーフティネット資金

セーフティネット資金の対象は、県内に事業所があり、1年以上同じ事業を営む中小企業者、組合、医療法人等、特定非営利活動法人で、次のどちらかに当てはまる方です。

 

・新型コロナウイルス感染症や災害等が原因でセーフティネット保証の認定を受けた

・新型コロナウイルス感染症や災害等が原因で危機関連保証の認定を受けた

 

参考:セーフティネット保証

参考:危機関連保証

参考:「セーフティネット保証4号,5号」の指定及び「危機関連保証」の発動について

 

<セーフティネット保証4号とは?>

 

次の両方の条件を満たす中小企業者が認定を受けられます。

 

・県内で1年以上継続して事業を行っている

・最近1ヶ月の売上高等が前年同期と比較して20%以上減少していて、その後2ヶ月を含む3ヶ月の売上高等が前年同期と比べて20%以上減少すると見込まれる

 

<セーフティネット保証5号とは?>

 

次のどちらかに当てはまる中小企業者が認定を受けられます。

 

・指定業種に属する事業を行っていて、最近3ヶ月の売上高等が前年同期と比較して5%以上減少した

・指定業種に属する事業を行っていて、原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているのに、製品等の価格に転嫁できていない

 

指定業種はこちら

 

<危機関連保証とは?>

 

・最近1ヶ月の売上高等が前年同期と比較して15%以上減少していて、その後2ヶ月を含む3ヶ月の売上高等が前年同期と比べて15%以上減少すると見込まれる場合に受けられる認定

 

運転資金
融資限度額 7,000万円
融資期間(措置) 10年(2年)以内
利率 年1.60~2.05%以内
保証料率 年0.30%

 

(6)経済変動対策資金

経済変動対策資金は、県内に事業所があって1年以上継続して同一事業を営む中小企業者、医療法人等、非営利活動法人が対象です。

 

利用できるのは、

・新型コロナウイルス感染症等の影響で5%以上売上高が減少した時

・経済不況や為替変動などの理由で経営が安定しない時

・親事業者の経営不振により資金繰りが困難になった時

・災害の影響で事業活動に支障をきたしている時 などです。

 

運転資金
融資限度額 5,000万円
融資期間(措置) 10年(1年)以内
利率 年1.90~2.05%以内
保証料率 年0.30~0.85%

 

(7)経営安定借換資金

経営安定借換資金は、県の保証付き融資制度の借入残高があって債務を一本化するために借換を行う方向けのコース。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた場合にも利用できます。

 

運転資金 設備資金
融資限度額 5,000万円
融資期間(措置) 8年(2年)以内
利率 年2.10%以内
保証料率 年0.70%

※セーフティネット保証1~4号、6号、危機関連保証を受けた場合は利率1.85%以内

 

3.まとめ

徳島県中小企業向け融資制度は中小企業が安定した経営を行い、いずれは自力で金融機関や市場から資金調達できるようになることを目標としています。プロパー融資を受けるのが難しい企業など、資金繰りに関する問題を抱えている場合は利用を検討してみましょう。

 

その際に比較対象になるのが、日本政策金融公庫など他の資金調達方法です。あなたにとってベストな方法を知るために、まずは資金調達の専門家の意見を聞くことをおすすめします。

 

プロの視点で判断すれば大きな失敗を予防でき、今後に役立つアドバイスがもらえます。資金調達への理解を深めるためにも専門家に相談しましょう。

 

執筆者:宮林 有紀(みやばやし ゆうき)

医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。