和歌山県中小企業融資制度は、中小企業者が低利・長期の固定金利で融資を受けられる制度です。
和歌山県で事業をしている方、これから創業予定の方は、融資対象に該当するか確認しましょう。
今回は、和歌山県中小企業融資制度のコースごとの融資対象や融資限度額・利率・期間などについてわかりやすく解説します。
1.和歌山県中小企業融資制度とは
和歌山県中小企業融資制度とは、県と金融機関や信用保証協会が協力して行っている融資制度です。
<和歌山中小企業制度の目的>
・県内の中小企業の経営を安定させるため ・スムーズな資金調達により事業の活性化を促すため |
和歌山県中小企業融資制度の特徴は「低利・長期の固定金利」で、中小企業者の負担が軽くなるよう工夫されています。さらに、信用保証料の一部を県が負担します。
対象者はこれらの条件を両方共満たしている人です。
・和歌山県内で事業を営んでいる個人・会社・組合等の中小企業者
・和歌山県信用保証協会の保証対象業種(以下の表参照)であること
そして、この表の資本金または従業員のどちらかの要件を満たしていることも条件です。
業種 | 資本金 | 従業員 |
運送業・建設業を含む製造業等 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
飲食店を含む小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
医療法人 | ― | 300人以下 |
ゴム製造業者 | 3億円以下 | 900人以下 |
旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 |
ソフトウエア・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
※対象にならない人
・農林漁業、金融保険業、サービス業の一部などの業務を営む人
・県税等の滞納がある人
・銀行取引処分を受けている人 など
和歌山県中小企業融資制度は信用保証協会が承認し、県が金融機関に融資金を委託(貸付)する仕組みで、申し込み窓口は金融機関です。
融資を希望する中小事業者の方は最寄りの金融機関で申込み手続きを行いましょう。
ただし、対象者でも無条件で利用できるわけではありません。以下のような場面に遭遇した時に申請し、承認された方だけが融資を受けられます。
◆振興対策資金
・小規模な設備の導入や原材料の仕入など、事業資金が欲しい時
・福利厚生施設や組合共同施設を整備する設備資金や運転資金が欲しい時
◆経営支援資金
・経済情勢の影響で減少した売上を補う資金が欲しい時
・自然災害により罹災証明を受けた時
・特定中小企業者(セーフティネット保証)の認定を受けた時
◆安全・安心推進資金
・防災対策資金が欲しい時
・省エネルギー、自家発電設備等の施設導入資金が欲しい時
◆短期決済資金
・短期の決済資金が欲しい時
・自然災害により罹災証明を受けた時
◆小企業応援資金
・小規模企業者であり、無担保、保証人なしで資金調達したい時
◆新規開業資金
・新規開業のために開業資金が欲しい時
◆資金繰り安定資金
・返済負担を減らしたい時
・特定中小企業者(セーフティネット保証)の認定を受けた時
・支援を受けて事業を立て直したい時
◆事業承継支援資金
・事業を承継する際に資金が欲しい時
◆成長サポート資金
・事業拡大のための人材確保資金が欲しい時
・生産性を上げるための新設備の導入資金が欲しい時
・観光関係施設の増改築資金が欲しい時
◆災害復旧対策資金
・大規模災害による被害を受けて復旧するための資金が欲しい時
2.和歌山県中小企業融資制度の概要
それぞれのコースごとに細かな要件が定められているので、いくつかをピックアップして詳しく紹介します。
(1)新規開業資金
新規開業資金の融資対象は「創業枠」「創業サポート枠」「再挑戦枠」の3種類。
創業枠は、次のいずれかに当てはまることが条件です。
A:1ヶ月以内に創業予定で具体的な計画がある事業を営んでいない人
B:2ヶ月以内に会社を設立予定で具体的な計画がある事業を営んでいない人
C:事業を営んでいない個人が創業し、創業5年未満の人
D:事業を営んでいない個人が設立した会社で、創業5年未満の会社
E:新たな会社を設立予定で具体的な計画がある中小事業者
F:事業を継承しつつ新設して5年未満の会社
創業サポート枠は、創業枠対象者であり、自ら事業計画を策定して独立創業する人で、なおかつ以下のどちらかの条件を満たす方が対象です。
・金融機関及び経営革新等支援機関の支援を受けて事業計画を策定した
・県の創業者等認定制度の認定、またはクラウドファンディングの活用支援の対象である
※経営革新等支援機関:中小企業に専門性の高い支援事業を行っていると国の認定を受けた機関
経営革新等支援機関の一覧はこちらです
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.htm
※県の創業者等認定制度:次の時代の和歌山経済をリードする創業者等を認定する制度
県の創業者等認定制度についての詳細はこちらです
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/063100/sougyo.html
再挑戦枠は、創業枠A~Dのどれかに該当し、なおかつ過去5年以内に経営者として事業廃止・会社解散を経験して新たに創業したい方が対象です。
【新規開業資金の融資条件】
創業枠 | 創業サポート枠 | 再挑戦枠 | |
融資限度額 | 3,500万円以内 | 3,500万円以内 | 2,000万円以内 |
融資利率 | 年1.20%以内 | 年0.50%以内 | 年1.60%以内 |
保証料率 | 年0.70% | 年0.5% | 年0.70% |
融資期間 | 10年(措置1年)以内 | 10年(措置1年)以内 | 10年(措置1年)以内 |
(2)小企業応援資金
小企業応援資金の融資対象は「一般枠」「組合枠」「小口枠」「特小枠」の4種類。
一般枠は、従業員数20人以下(商業・宿泊業・娯楽業をのぞくサービス業は5人以下)の小規模企業者が対象です。
組合枠は、次のすべての条件を満たす小規模企業者が対象です。
・中小企業団体の組織に関する法律第3条第1項に規定する中小企業団体や商工組合中央金庫の融資対象となる組合の組合員
・和歌山県中小企業団体中央会の指導員による指導を受けている団体の構成員で中央会会長の推薦を受けた人
小口枠は、一般枠と同じ方が対象ですが、融資条件に違いがあります。
特小枠は、以下のすべてに当てはまる方が対象です。
・小規模事業者の個人、法人、事業協同小組合又は企業組合
・県内で1年以上に渡って同一業種に属する事業を行っている
・税額のある次の諸税のいずれかが課税され、かつ完納している
ア:源泉徴収による所得税以外の所得税(法人の場合は、法人税)
イ:事業税
ウ:県民税又は市町村民税の所得割又は法人税割
・協会保証付きの債務がない
【小企業応援資金の融資条件】
一般枠 | 組合枠 | 小口枠 | 特小枠 | |
融資限度額 | 設備
3,000万円以内
運転 3,000万円以内
|
5,000万円以内 | 2,000万円以内
※既存の保証協会の保証付き融資残高も含む |
2,000万円以内 |
融資利率 | 年1.40%以内 | 年1.40%以内 | 年1.20%以内 | 年1.20%以内 |
保証料率 | 年0.45%~1.30% | 年0.45%~1.30% | 年0.50%~1.50% | 年0.70% |
融資期間 | 設備
10年(措置1年)以内
運転 7年(措置1年)以内 |
設備
10年(措置1年)以内
運転 7年(措置6ヶ月)以内 |
設備
10年(措置1年)以内
運転 7年(措置6ヶ月)以内 |
設備
10年(措置1年)以内
運転 7年(措置6ヶ月)以内 |
(3)経営支援資金(新型コロナウイルス感染症対応枠)
経営支援資金(新型コロナウイルス感染症対応枠)の融資対象は、新型コロナウイルス感染症の影響により売上高等が減少した中小企業者です。
特徴は、3年間無利子・無担保・据置期間最大5年の融資枠があること。セーフティネット(SN)保証4号・5号、危機関連保証のいずれかの認定を受けた場合に、保証料が半額またはゼロになります。
セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証は事業所所在の市町村による認定で、売上高の減少率に応じてランクが決まります。
・セーフティネット保証4号:20%以上減少
・セーフティネット保証5号:5%以上減少
・危機関連保証:15%以上減少
【無利子 ・保証料減免の要件】
売上高5%以上減少 | 売上高15%以上減少 | |
個人事業主 | 保証料ゼロ・金利ゼロ | 保証料ゼロ・金利ゼロ |
小・中規模事業者 | 保証料1/2 | 保証料ゼロ・金利ゼロ |
【新型コロナウイルス感染症対応枠の融資条件】
個人事業主、小・中規模事業者 | |
融資限度額 | 6,000万円以内 |
融資利率 | SN4号・危機関連 1.2%以内、SN5号 1.4%以内 |
保証料率 | 0.85% |
融資期間 | 10年(措置5年)以内 |
新型コロナウイルスの影響で売上高が5%以上減少した方は、まず市町村にて認定を受けてから、金融機関で申込み手続きを行いましょう。その後、金融機関が保証協会に審査を申込み、承認されたら金融機関を通じて県が準備した融資金が受けとれます。
3.まとめ
和歌山県中小企業融資制度のメリットは「低利・長期の固定金利」で利用者の負担が軽いことです。
ただ、細かな条件があるので、融資対象に該当するかの判断が難しいかもしれません。それに、融資を受けるためには、申込み書類の作成も必要です。
そのため、和歌山県中小企業融資制度を利用したい場合は、資金調達の専門家に相談するのがおすすめです。プロの助けを借りて、スムーズに申込み手続きを行いましょう。
医療機関勤務を経てフリーライターへ転身。起業家向けメディアへの執筆をはじめ様々なジャンルのサイトにて執筆。