シニア起業のポイント/起業テーマや心構え

人生100年時代といわれる今、起業するシニアが増えてきています。セカンドライフを楽しみたい、生涯現役でありたい、働き続けなければならない、といった色々な観点からシニアで起業をしたいと考える方が多くなってきています。「せっかく定年後に働くなら、雇われるのではなく、自分の能力を活かし起業したい!」そんな思いを強く抱く方は沢山います。

この記事ではシニアの起業のポイントや、起業テーマの見つけ方、起業することへの心構えや注意点、シニアが起業するための公的支援制度などをお伝えしていきます。

1.増加するシニア起業

日本政策金融公庫総合研究所が行っている「2019年度新規開業実態調査」では、開業時の年齢は「40歳代」が36.0%で最も高く、次いで「30歳代」が33.4%を占めています。

引用:日本政策金融公庫「2019年度新規開業実態調査」より

これだけをみると、いわば働き盛りの若い世代の開業が多いように感じますが、開業時の平均年齢は43.5歳と調査開始以来最も高くなっており、1991年と2019年の開業時の年齢を比較すると50歳代の割合は2倍以上、60歳以上の割合は約3倍に増加していることがわかります。
また、総務省が行っている「就業構造基本調査」を見ると、起業家、起業準備者、起業希望者の平均年齢は男女共に年々上昇しています。

特に男性については、1979年から2012年にかけて男性全体の平均年齢が40.4歳から49.3歳と8.9歳上昇しているのに対して、男性起業家の平均年齢は、39.7歳から49.7歳へ10歳と男性全体平均を上回るぺースで起業家の平均年齢が上昇していることがわかります。

また、60歳以上のシニア世代の男性は、中小企業白書が発表している下記の図を見ると、周囲の起業家や経営者の影響は若い世代に比べると少なく、定年退職等を機に時間的な余裕ができたために、次の働き方として起業を選択していると推察され、これからも起業する人が増加すると思われます。

引用:中小企業白書「中小企業のライフサイクル」より

2.起業のテーマを探す

起業するにあたって、起業するテーマを探さなければなりません。起業のテーマはどのように探せばいいのでしょうか。

(1) 人生経験を活かす
まずご自身のこれまでの経験やスキルの「棚卸チェック」をすることをお勧めします。過去の振り返りにより、自分自身を客観的に見つめることから始めてみましょう。例えば、幼少期から現在まで、横軸に時間、縦軸に充実度をとり、今までの人生の出来事や以前目指していたことなどをグラフに書き表すことで、自分の強みや起業に活かせる経験が見えてくるかもしれません。

(2)社会の歪みを探す
日頃からおかしいと思っていたこと、新聞・テレビ・ラジオ・本などのメディアで新たに得た知識や自分で調べたことなどをシニアならではの経験に照らし、事業化を考えてみましょう。どんな些細なことでも、起業の道へと繋がるかもしれません。たくさんの「起業の種」がそこに存在しているのです。

3.シニア起業の心構え

それでは次にシニア世代が起業する際の心構えをお伝えしていきます。

(1)会社勤務と起業との違い
会社に勤務していると、分業して仕事をすることが多いので、自分に与えられている仕事に集中して成果を上げればよいわけですが、起業をするとそれだけではすみません。人事、営業、経理や財務、法務など、事業を動かす機能を自分ですべて管理し、最終的な責任を負わなければならないのです。

(2)経営者の孤独
経営者になると、いろいろと誰かに相談したくなることも増えてきます。会社員時代は、ボヤく仲間のことがお互いに鬱陶しかったかもしれませんが、話の通じる仲間がいたことは幸せだったのかもしれません。経営者は意外と孤独です。全ては自分の責任ですし、話の内容や、相談する相手を間違えると思わぬ火傷をしてしまうこともあります。ビジネス面で、心を許せるよき理解者を複数持つことも大切ですが、孤独に耐える能力も重要となるでしょう。

(3) やりたいこととできること
いざ起業するとなった場合、やはり今までやりたかったけれどやれなかったこと、憧れていたことを始めたいと思う方がシニアに限らず多いものです。特にシニアの場合、「やりたいこと」を胸に秘めていた時間が長かったが故に、憧れに囚われてしまうことも少なくないようです。起業するとなればそれなりの収入が入って来なければ続けることが困難になります。中にはやりたかったことや憧れていたことで起業し、夢を叶え、成功している方ももちろんいらっしゃいますが,「やりたいこと」と「できること」は必ずしも一致しません。「できること」の見極めが重要といえます。

(4) 楽しみながら働く
長年の夢が叶い、前のめりで起業に臨むシニアは、ついつい無理しがちです。最初はよくてもやはり体力的には若い頃のようにはいかないこともあるでしょう。せっかく実現した起業家の道を続けていくためには仕事自体を楽しみ、体力的に厳しくなってきたらある程度仕事を減らすなど、無理せず心身ともに健康に働くことを何よりも優先することが大切です。

4.公的支援制度

次にシニアが起業するためにかかせない公的支援の制度を紹介していきます。

(1) 生涯現役起業支援助成金
生涯現役起業支援助成金は厚生労働省が主管している補助金の1つです。これから起業を行う方、事業を開始して間もない法人事業主、個人事業主の方が活用できる助成金です。中高年齢者(40歳以上)の方が、起業によって自らの就業機会の創出を図るとともに、 事業運営のために必要となる従業員(中高年齢者等)の雇入れを行う際に要した、 雇用創出措置(募集・採用や教育訓練の実施)にかかる費用の一部を助成します。雇用創出措置助成分の助成金の支給を受けた後、一定期間経過後に生産性が向上している場合に、別途生産性向上にかかる助成金が支給されます。細かい受給条件などについては、厚生労働省のWebサイト等でご確認ください。
引用:厚生労働省 「生涯現役起業支援助成金ガイドブック」

(2)シニア起業家支援資金
シニア起業家支援資金主管している補助金の1つです。
女性または35歳未満か55歳以上の方であって、 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が受けられ、新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする資金として7,200万円(うち運転資金4,800万円)を融資してもらえる制度です。

5.まとめ

定年になったらリタイアするという人もいますが、シニアで起業を考える人も年々増えています。シニアで起業を考えるなら、シニアならではの視点や経験を活かし、身体的にも精神的にも無理なく起業することが大切です。また、起業するにあたっては公的制度も視野にいれるとよいでしょう。

執筆者:松尾 朋美(まつお ともみ)

金融機関勤務、IT会社を経て、フリーへ転身。
金融機関のオウンドメディアの執筆をはじめ、お金に関するコラム執筆を行う傍ら、広告代理店と提携し、企業のwebマーケディング業務に携わる。