株主総会の議事録/書き方をわかりやすく解説

株主総会の議事録の書き方がわからない、と悩む人も多いのではないでしょうか。株主総会の議事録は、株主総会で決議された内容を記録した書類です。議事録に盛り込む内容は、法令で決められていますが、難しい言い回しで書かれている条文の意味が理解できず、作業が思うように進まない、ということも珍しくありません。

この記事では、株主総会の議事録を作成する必要性と共に、その書き方について、わかりやすく解説します。

 

1 株主総会の議事録はなぜ必要か

株主総会の議事録はなぜ必要か、その理由は、作成を法律で義務づけられているからです。会社法第318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と、法的義務を明確にしています。

会社は、議事録を作成するだけで良い、というわけではありません。会社法では、議事録の作成だけでなく、保管や管理についても規定しています。

会社法第318条の要点を、次のようにまとめました。

・株主総会の議事録は作成する必要がある。

・株式会社は、議事録を、株主総会が開催された日から10年間、本店にて保管する必要がある。

・株式会社は、電子的記録を除き、議事録の写しを、株主総会が開催された日から5年間、支店にて保管する必要がある。

・株主と債権者は、議事録のコピーを閲覧したり、書き写したりできる(株式会社の営業時間内に限る)。

・親会社の社員は、裁判所の許可を得ることで、議事録の閲覧・謄写が可能になる。

 

参考:会社法

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#2236

 

議事録は、会社を運営するにあたり、必要になる時があります。例えば、会社を設立したり登記事項を変更したりする場合、商業登記をしますが、登記申請する際は、株主総会の議事録の添付が義務づけられています。

このように、会社にとって株主総会の議事録は、不可欠な存在です。株主総会が開催されたら必ず議事録を作成し、決められたルールに従って、保管・管理することを心がけましょう。

 

2 株主総会の議事録に記載すべきこと

株主総会の議事録には、法令によって規定されている項目を盛り込む必要があります。記載すべき項目について具体的に定めているのが、会社法施行規則の72条3項です。条文から、議事録に記載すべきことは以下の6項目になります。

①株主総会の開催日時と開催場所

株主がオンラインで遠隔地から参加した場合は、「テレビ会議システム」と記録します。

②株主総会の開催中におこなわれた内容と決議内容

何がおこなわれたか(「議事の経過」と言います)には、以下のようなものがあります。

・報告事項

・議案の内容

・採決方法

・決議に重要と考えられる株主の発言

・質疑応答

など

決議内容とは簡単に言うと、総会で話し合われた議案に対する結果のことです(会社法施行規則上では「その結果」と表現されています)。

 

この項目は、誰が賛成したかなど、事細かに記入する必要はなく、要点をまとめる程度で十分です。ただし、決議をめぐり議決権や株主提案権が行使された場合は、行使した人物の名前を記録する必要があります。

③株主総会において株主の発言や意見

どのような内容の発言または意見だったのか、概要を記録します。

④出席した「取締役」「監査役または会計監査人」の氏名

総会に、「執行役」や「会計参与」が出席した場合も、氏名を記入します。

⑤株主総会の議長名

株主総会に議長が不在の場合は、記入する必要はありません。

⑥議事録の作成者名

議事録を作成した取締役の名前になります。同じ取締役が、他の役も兼任した場合(例えば議事録作成と議長)は、「議事録作成者 兼 議長」とします。

記載すべき項目は理解できたものの、実際にどのように仕上がるのか、議事録がイメージできないという場合は、議事録のサンプルを参考にすると良いでしょう。法務省のホームページには、株式会社変更登記申請書と共に、議事録のサンプルが説明付きで公開されています。

 

参考:株式会社変更登記申請書 法務局(法務省)・<a

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001249323.pdf#search='%E6%B3%95%E5%8B%99%E7%9C%81+%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E7%B7%8F%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E4%BA%8B%E9%8C%B2

 

サンプルはあくまでも書き方の一例ですが、作成の目安になりますので、参考にしてください。

議事録の記載で多くの人が迷うのは、賛否についての書き方です。議事録に賛否の結果を記録する際は、法令用語(「可決」など)を用いて、決議要件の書き方に注意することがポイントになります。

決議要件の書き方には、一定の決まりがあります。例えば普通決議の場合は、通常「過半数の賛成」や「満場一致で可決」などの表現を用います。特別決議(定款変更など)では、「3分の2以上の多数で可決」と記載します。主語を抜いてしまうと、誰が賛成(反対)したのかがわかりづらくなりますので、「出席株主の議決権」を付け加えるようにすると、安心です。以下に、賛否の言い回しについて3通り例示しますので、参考にしてください。

・賛成の言い回し例:

本議案は、書面による議決権の行使および株主総会に出席いただきました株主様を含め、賛成多数を得たため、原案どおり可決されました。

・否決の言い回し例:

提出された動議について賛否を議場に諮ったところ、賛成が出席株主の議決権の過半数に満たなかったため否決されました。

・特別決議(定款変更など)の言い回し例:

定款の一部変更したい旨を諮ったところ、出席株主が有する議決権の3分の2以上が賛成し、原案どおりに可決されました。

 

3. まとめ

株主総会の議事録の書き方について解説しました。議事録の作成に慣れていないと、初めは手間取るかもしれません。しかし、記載すべき事項がある程度決まっていますので、経験を重ねていくうちに、難しいと感じることも少なくなるでしょう。

株式会社にとって株主総会の議事録は重要な役割を果たします。議事録を書くコツを掴み、株主総会の記録として適切な議事録を作成していきましょう。

 

執筆者:佐藤 世莉(さとう せり)

英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。