保証人と連帯保証人/何が違うのか

「保証人になってください」と言われたらなんとなく怖くありませんか。しかし、会社が事業資金について融資を受けるにあたり、代表者であるあなた個人をその保証人にするよう求められることはよくある話です。2020年4月からは改正新民法が施行され、長年の議論を受けて保証人も従来に比べ手厚い保護を受けるようになりました。そこで、この改正を踏まえ、保証と連帯保証など、いろいろな保証の要件や注意点などをチェックしておきましょう。

 

1.保証人の責任

(1) 保証契約の付従性・随伴性

たとえば主たる債務者(=主債務者)であるあなたの会社が借金を返せない場合、保証人となったあなたや配偶者は、会社の代わりにその借金を支払う義務を負います (民法第446条第1項)。これが保証契約です。

 

保証契約はあくまでも主たる債務(=主債務)に付従するので、保証債務に主債務より重い負担を課す事はできません[1]し、主債務が消滅すれば保証債務も消滅します(保証契約の付従性)。

 

また、主債務がほかに譲渡されれば、保証債務もそれに伴って新しい債権者に移ります(保証契約の随伴性)。自分が保証契約付きの債権を誰かに譲渡する際には、保証契約もこれに伴って手元から移ってしまうことに留意しましょう。

 

(2)保証契約は口頭やメールでも成立するか

「保証契約は書面でしなければ無効」とされています[2]。したがって、保証契約は口約束では成立しません。電磁的記録も「書面」とみなされる[3]ので、メール上での合意なども一応可能ですが、できれば電子署名やタイムスタンプ付きの電子契約サービスを利用されるとよいでしょう。

 

 (3)保証契約の当事者は誰か

ここで注意したいのは、保証契約の当事者です。実際のところ、保証契約を主債務者と保証人の間の契約だと勘違いしている人も少なくありません。しかし、法律上保証契約の当事者はあくまでも債権者と保証人なので、もしあなたが債権者となり、債務者に対し保証人を求める場面では、あなたと保証人との間で書面による保証契約を結ぶ必要があることに注意してください。

 

2.保証人と連帯保証人の違い

さて、皆さんは、保証人と連帯保証人の違いをご存知でしょうか。この2つには大きな隔たりがあるので、この機会にぜひ押さえておきましょう。主な違いは以下の3点です。

 

(1)催告の抗弁権

(2)検索の抗弁権

(3)分別の利益

 

(1)催告の抗弁権(民法第452条)

通常、保証人には、催告の抗弁権が認められています。たとえば、あなたが主債務者である友人Bの保証人になっていたとしましょう。債権者Aがあなたに借金を支払うよう要求してきても、あなたは「先にBに請求してくれ」という抗弁を主張できます[4]

 

ところが、もしあなたが連帯保証人であれば、この催告の抗弁は通用しません[5]。つまり債権者Aは、債務者Bに一度も請求することなく、直ちに連帯保証人であるあなたに支払いを請求することができるのです。

 

(2)検索の抗弁権(民法第453条)

たとえば債権者Aが保証人であるあなたに債務の履行を請求したとき、あなたが、

 

①主債務者Bに弁済の資力があり、

かつ、

②その執行が容易であること

 

を証明すれば、AはまずBの財産について執行しなければなりません(検索の抗弁)。

 

しかし、この検索の抗弁も、連帯保証人には認められていません[6]から、たとえBが十分資産を有していたとしても、あなたは自分の財産につき強制執行を受ける恐れがあるのです。

 

(3)分別の利益(民法第456条、第427条)

先の例で、もしあなたの他にも保証人がさらに2人いたとしましょう。そして主債務の金額が総額300万円だったとします。この場合、債権者Aからの請求を受けたあなたは、基本的に、300万円を保証人3人の頭数で割った100万円だけを支払えばよいことになります(分別の利益)。

 

これに対し、あなたが連帯保証人の場合にはこの分別の利益は適用されません。したがって、たとえほかに保証人が何人いようと、Aからの請求があれば、あなたは300万円全額を1人で支払わなくてはなりません[7]

 

以上のように、連帯保証人には、通常の保証人と比べて非常に重い責任があることが分かります。家族だからとか友人だからと、安易に連帯保証人になることは避けたほうがよさそうです。逆に、あなたが債権者であれば、できれば資力のある人と、単なる保証契約ではなく連帯保証契約を結びたいところでしょう。

 

3.2020年民法改正

法人と違って個人の保証人は、一般的に知識が不十分だったり資産が多くないことから、生活を脅かされたり破産するなど、長年、その保証制度が問題視されてきました。そこで、2020年4月1日から施行された改正民法では、主に個人の保証人を保護する規定が盛り込まれました。いくつか重要なものをチェックしておきましょう。

 

(1)個人根保証契約に関する極度額の義務付け(民法第465条の2)

「一定の範囲に属する不特定の債務」を主債務とする保証契約のことを「根保証契約」といいます。たとえば賃貸借契約の賃料保証がこれに当たります。この点、賃借人が何か月も家賃を滞納したりすると、その滞納額は青天井になってしまい、保証人に過大な負担がかかってしまいます。

 

そこで、個人根保証契約においては、保証人が支払う最大限の金額=極度額を定めなければ、その契約が無効になると決められました[8]。しかも、その極度額の条項を契約書[9]に入れなければ保証契約自体が無効になります[10]。つまり、せっかく用意した保証人がいないのと同じになってしまうのです。

 

特に債権者の立場にあるなら、古い契約書のひな型を使う際には、この極度額条項を入れ忘れないように注意してください[11]

 

(2)契約締結前の情報提供義務(民法第465条の10)

主債務が事業に関するものである場合は金額が大きくなりやすく、個人である保証人にとって、主債務の詳細がわからないと保証を引き受けるのは不安です。

そこで、

 

① 事業のために負担する債務(=事業債務)の保証

または

② 主債務の範囲に事業保証が含まれる根保証の保証

 

を委託しようとする主債務者は、その保証人に対し、主債務者の財産や債務内容などに関する詳しい情報を提供する義務があります。

 

そして、主債務者がきちんとこれらの情報を提供しなかったなど特段の事情がある場合、債権者がこれを知っていたり知り得た場合は、保証人は保証契約を取り消すこともできます[12]

 

たとえば主債務者Bの資力が極めて乏しいことを、B自身はもちろん、債権者Aも知っていたのに、保証人Cだけがその事実を知らされずに保証契約の締結を行った場合には、Cはその保証契約を取り消すことができるのです。

 

(3)主債務の履行状況に関する情報提供義務(民法第458条の2)

保証人にとって、主債務の残債務が現状どれくらいか、違約金は発生しているかなど、自分が負担するかもしれない保証の範囲はできるだけ明らかにしておきたいものです。

そこで、

 

① 保証人が主債務者の委託を受けて保証した場合で、

② 保証契約の成立後、保証人からの請求があったとき

 

には、債権者は保証人に対し、債務の支払い状況などにつき情報を提供する義務を負います。

 

(4)主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務(民法458条の3)

期限の利益とは、簡単にいえば借りたお金を弁済期までは返さなくてもよいということです。

 

たとえば1000万円の借金を毎月10万円の分割払いで返済しているとき、10回支払った後で、ある日突然「残り900万円を今月中に返せ」と言われたら困りますよね。債務者はきちんと毎月の期限に決まった額を弁済してさえいれば、いきなり残額全てを請求される事はありません。これがつまり期限の利益です。

 

この点、「1回でも支払いを怠ったら残債務の全てにつき期限の利益を失う」などの契約条項がある時に、主債務者が支払いを一度でも怠れば、直ちに残った全額を支払う義務が発生します。

 

しかし、これについて保証人が何も知らないでいたら、いきなり残る全額の請求を受けるかもしれないのですから、特に個人の保証人の場合、大変な負担になります。そのため、主債務者が期限の利益を失った場合には、債権者から個人保証人に対し2ヶ月以内にその旨を通知するよう義務付けられたのです[13]

 

4.まとめ

さて、少し難しくなりましたが、いかがだったでしょうか。事業を運営していれば、自分が保証人になったり、誰かに保証人になってくれるよう頼むことも、逆に、債権者として、債務者に対し保証人を立てるよう要求しなければいけない場合も珍しくありません。どちらの場合にも、注意しなければならないことはとても多いので、この機会に詳しく調べておくことをおすすめします。

 

執筆者:豊田 かよ (とよた かよ)
弁護士業、事務職員などを経て、現在は主にフリーのライター。得意ジャンルは一般法務のほか、男女・夫婦間の問題や英語教育など。英検1級。

[1] 民法第448条第1項

[2] 要式行為。民法第446条第2項

[3] 民法第446条第3項

[4] 例外的に、Bが破産手続を開始したり行方不明になった場合には主張できません(民法第452条条但書)

[5] 民法第454条、第452条

[6] 民法第454条、第453条

[7] もちろんそれでは不公平ですから、保証人同士の間で決めていた自分の負担額以上の金額を支払った場合には、他の保証人に対し、それぞれの負担部分に応じた金額を後で請求することはできます。

[8] 民法第465条の2第1項、2項

[9] 電磁的な記録でも可

[10] 民法第465条の2第3項、同第446条第2項、第3項

[11] 極度額をいくらにするかは法律上規定がありません。家賃などに関する限り、国土交通省「極度額に関する参考資料」などを参考に話し合って決めると良いでしょう。

[12] 民法第465条の10第2項。ただし、保証人が法人の場合は適用がありません。同第3項

[13] 保証人が法人の場合は適用外です。民法第458条の3第3項