沖縄県の制度融資/中小企業の資金調達のために

沖縄県が、県内で事業を営む方やこれから創業しようと考えている方向けに実施している「制度融資」をご存じですか?

中小企業者や小規模事業者の円滑な資金調達をサポートするためにできた制度で、「一般的な融資より低金利」、「原則として、沖縄県信用保証協会が保証人になる」といった特徴があります。

 

今回は、沖縄県の制度融資の基礎知識や、さまざまな資金に対応している融資メニューのラインアップをわかりやすくご紹介します。沖縄県で事業資金の調達先を探している方は、ぜひご一読ください。

 

1.沖縄県融資制度とは

沖縄県融資制度とは、沖縄県内の中小企業者や小規模事業者、新たに事業を始めようとする方などを対象に、事業資金の融資を行う制度です。

 

融資は、沖縄県、金融機関、沖縄県信用保証協会の3者が協調して行います。

信用保証協会とは、中小企業者などの金融円滑化のために設立された公的機関です。融資を受ける際に信用保証協会が「公的な保証人」となることで、融資枠の拡大が図れる、長期の借り入れができる、万一返せない場合は信用保証協会が一時的に返済をしてくれる(代位弁済)などのメリットがあります。

 

▼信用保証協会についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています

 

通常、信用保証協会を利用するには保証料がかかりますが、沖縄県融資制度においては融資メニューによって保証料の補助を受けることもできます。

 

また、県が貸付原資の一部を負担しているため、一般的な融資よりも低い金利で融資を受けられるのも沖縄県融資制度の魅力です。そのほか「利子補給制度」といって、申請すると返済時に金融機関へ支払った利子の一部がキャッシュバックされる制度も用意されており(一部融資メニューのみ)、事業者はコストを抑えながらスムーズに資金を調達できます。

 

沖縄県融資制度を利用できるのは、以下に当てはまる中小企業者、小規模企業者、協同組合などです。

 

 

<引用>沖縄県 県融資制度の概要及び利用対象者等について

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/kinyu/documents/kin2008gaiyou.pdf

 

さらに、以下の1〜5の申込要件をすべて満たしている必要があります。

 

1.県内において、申込日時点で同一の事業歴が1年以上あること(一部資金は除く)

2.原則、県信用保証協会の信用保証対象業種に属していること

3.今回、融資申込分も含めて保証協会の保証限度額の範囲内であること

4.事業税、県民税、市町村民税などの税金を滞納していないこと

5.許認可が必要な事業の場合は、許認可等を取得していること

 

要件を満たしている場合でも、「返済能力がないと認められる者」、「金融機関から取引停止処分を受けている者」、「保証協会が行った代位弁済に対する債務の履行が終わらない者」に該当する場合は、利用できません。

 

融資制度を検討する場合、まずはご自身の事業が利用条件に合致しているか確認しましょう。

 

融資の手続きに関して、「県の融資だから、県庁などへ行かないとダメ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一般の融資と同じように銀行などの金融機関で申し込むことができます。ただし一部の融資メニューでは、商工会、商工会議所、沖縄県産業振興公社などへあっせん申し込みが必要な場合もありますので注意しましょう。

 

<参考>沖縄県 沖縄県の融資制度

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/kinyu/yuushiseido.html

 

 

2.沖縄県融資制度の概要

では、具体的にどのような資金の融資が受けられるのでしょうか?
さまざまな融資メニューの中から、特徴的なものをいくつかご紹介します。

 

(1)創業者支援貸付

県内で創業しようとしている、または、創業後5年未満の県内居住者のうち、県が設定する「融資対象」の要件のいずれかに該当する人が利用できます。

 

運転資金、設備資金を合わせて「最高2000万円」まで、「最長10年」の借り入れが可能です。融資利率は「年1.70%(令和2年4月1日現在)」で、原則として無担保、法人の代表者を除き保証人も必要ありません。信用保証協会の保証が付くため、保証料率として「0.60%」が設定されています。

 

<参考>沖縄県 創業者・事業承継支援資金(創業者支援貸付)

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/kinyu/sougyousyashienn.html

 

 

(2)ベンチャー支援資金

ベンチャービジネスなどを新たに開業、または、ベンチャービジネスの拡大を図ろうとしている中小企業者などが対象。「中小企業新事業活動促進法に基づいて知事の承認を受けている」、「新事業産業化促進事業など、県が実施する事業の採択を受けている」など、要件に該当する場合に利用できます。

 

運転資金、設備資金を合わせて「最高3000万円」まで、運転資金は「最長7年」、設備資金は「最長10年」の借り入れが可能です。融資利率は「年1.50%(令和2年4月1日現在)」ですが、利子補給制度対象メニューのため、制度を活用すると借り入れ後3年間は「年0.50%」で利用できます。

 

担保は必要に応じて求められることがありますが、保証人は法人の代表者を除いて原則不要です。信用保証協会の保証が付くため、保証料率として「0.35〜0.75%」が設定されています。

 

<参考>沖縄県 ベンチャー支援資金

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/kinyu/venture.html

 

 

(3)小規模企業対策資金

県内で1年以上同一事業を営む、従業員20名以下(商業・サービス業は5名以下※宿泊業・娯楽業は20名以下)の小規模事業者を対象としています。

 

運転資金、設備資金を合わせて「最高2000万円」まで、運転資金は「最長7年」、設備資金は「最長10年」の借り入れが可能です。融資利率は「年1.80%(令和2年4月1日現在)」で、商工会議所などの経営指導を3カ月以上受けた事業者は優遇金利で申し込みできます。

 

原則として無担保で、保証人は法人の代表者を除いて原則必要ありません。信用保証協会の保証が付くため、保証料率として「0.40〜0.80%」が設定されています。

 

小規模企業対策資金には、上記の「一般貸付」のほかに、無担保、無保証人で個人事業主のみが利用できる「特別小口貸付」があります。こちらは、一般貸付の対象者要件に加え、「所得税や事業税などの延滞がない」などの要件があり、融資利率は「年1.70%(令和2年4月1日現在)」と一般貸付より低く設定されています。

 

一般貸付と同様に、経営指導を受けた場合は優遇金利で利用できます。個人事業主の方は検討してみるとよいでしょう。

 

<参考>

沖縄県 小規模企業対策資金(一般貸付)

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/kinyu/syoukiboippann.html

 

沖縄県 小規模企業対策資金(特別小口貸付)

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/kinyu/syoukibotokubetu.html

 

 

(4)オキナワ型産業振興貸付

「オキナワ型産業」といわれる沖縄県の地域特性を生かした事業を、県内で1年以上営んでいる中小企業者などが対象。事業内容が、次のいずれかに該当する場合に利用できます。

 

・健康食品産業

・バイオ関連産業

・健康サービス産業

・泡盛産業

・工芸産業

・環境関連産業

・観光産業

・情報通信関連産業

・沖縄国際物流ハブ活用事業者

 

※対象産業の詳細はこちらに掲載されています。

 

運転資金、設備資金を合わせて1企業あたり「最高1億円」まで、運転資金は「最長7年」、設備資金は「最長10年」の借り入れが可能です。融資利率は「年1.65%(令和2年4月1日現在)」、信用保証協会の保証料率として「0.40〜0.80%」が設定されています。

 

担保は必要に応じて求められます、保証人は、法人の代表者を除いて原則不要です。観光産業以外の事業は、金融機関で融資を申し込めますが、観光産業の場合は申込窓口が「事業所所在地にある商工会や商工会議所」となりますので注意しましょう。

 

<参考>沖縄県 産業振興資金(オキナワ型産業振興貸付)

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/kinyu/sanngyou-okinawa.html

 

 

(5)新型コロナウイルス感染症対応資金

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、著しい信用収縮などが生じた中小企業者などが対象。

 

・県内に本店がある

・3カ月以上継続して同一事業を営んでいる

 

といった要件のほか、「中小企業信用保険法に基づき、市町村長に特定中小企業者として認定されている」などに該当している場合、利用できます。

 

経営の安定に必要な運転資金、設備資金を、1企業あたり「最高6000万円」まで、「最長10年」の借り入れが可能です。

 

融資利率は、中小企業信用保険法の「第2条第5項第4号(セーフティネット保証4号)」「第2条第6項(危機関連保証)」の適用を受ける場合「年0.80%(令和2年4月1日現在)」、「第2条第5項第5号(セーフティネット保証5号)」の場合は「年1.60%(令和2年4月1日現在)」です。

 

借り入れから3年間に生じる利子は、「新型コロナウイルス感染症対応資金利子補給補助金」の制度で補給することができます。保証料率については、事業者の受けている認定や事業状況などにより「0%〜0.85%」が設定されています。

 

原則として無担保(既設定根抵当権を除く)、法人の代表者を除き保証人も必要ありません。この融資メニューは、取扱期間が決まっています。利用前に必ず確認しましょう。

 

<参考>沖縄県 新型コロナウイルス感染症対応資金

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/kinyu/shinkorona.html

 

 

3.まとめ

沖縄県融資制度についてご紹介しました。ご自身のニーズに合った融資メニューは見つかりそうでしょうか? 資金調達の際は、借りたお金をどのように返済していくのかという返済計画までしっかり立てておく必要があります。少しでも不安なことがあれば、まずは融資の専門家に相談してみることをおすすめします。

 

 

執筆者:吉田 裕美(よしだ ゆみ)

金融機関勤務を経て、フリーライターへ転身。

お金に関するコラム執筆をはじめ、企業のWebコンテンツやメルマガ制作など、幅広いジャンルのライティングに携わる。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級。