埼玉県が、中小企業者向けに実施している制度融資をご存知でしょうか。
埼玉県中小企業向け制度融資は、中小企業者に対し、資金調達の機会を提供しています。事業活動や開業など幅広い資金使途に対応し、金利が安い、長期借り入れが可能になるといったメリットがあります。
敷居が低く利用しやすさに魅力のある埼玉県中小企業向け制度融資ですが、融資要件など細かく規定されているため、事前の情報収集は必須です。
本記事では、埼玉県中小企業向け制度融資について、その概要や、実施している制度融資の種類について説明します。
1. 埼玉県中小企業向け制度融資とは
「埼玉県中小企業向け制度融資」とは、埼玉県と埼玉県信用保証協会、そして金融機関が中心となって実施している融資制度のことです。三者が協力し合い、中小規模の事業を営む個人や法人が、融資を円滑に受けられるよう支援しています。
この制度融資は、低金利で融資期間が長く(最長15年)、原則として第三者保証人は不要です。異なる資金使途や融資対象者にあわせて、複数の制度を設けているというのも、埼玉県中小企業向け制度融資の特徴と言えるでしょう。
埼玉県中小企業向け制度融資の対象となるのは、県内に事業所を構えている「中小企業者」「小規模企業者」「中小企業組合」です。各定義について、埼玉県のホームページを参考にまとめてみました。
①中小企業者
業種 | 資本金 | 従業員数 |
・製造業(「ゴム製品製造業」は除きます)
・運送業 ・建設業 ・ソフトウェア業 ・情報処理サービス業 ・鉱業 |
3億円以下 | 300人以下 |
・ゴム製品製造業
※以下の製造業は対象外です。 ・自動車、または航空機用のタイヤ及びチューブ製造業 ・工業用ベルト製造業 |
3億円以下 | 900人以下 |
・サービス業 | 5,000万円以下 | 従業員100人以下(旅館業は200人以下) |
・卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
・医業(法人) | ― | 300人以下 |
・医業(個人) | ― | 100人以下 |
・小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
②小規模企業者
常時雇用の従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の法人または個人。
③中小企業組合
信用保証対象業種に該当する事業を営んでいる、または、構成している組合員の3分の2以上が信用保証対象業種に該当している、以下の組合が対象です。
企業組合、事業協同組合、商工組合、事業協同小組合、商店街振興組合、商店街振興組合連合会、協同組合連合会、商工組合連合会、協業組合 |
・参考:ご利用になれる方(埼玉県)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0805/seidoyushi/07j-taishou.html
その他にも、次の融資要件があります。
①県内の同じ住所に事業所を構えて、1年以上同じ事業を継続している
②運営している事業は、信用保証対象業種に分類される
③事業税や県民税など、支払い義務のある税金を滞納せずに支払っている
④開業の際、必要な認可を得ている
④について、詳しくはこちらで確認できます。
・参考:許認可証(写)のご提出が必要となる主な業種
http://www.cgc-saitama.or.jp/main/guide/type.html
⑤各制度融資で決められた要件を満たしている
制度融資の申込は、融資申込書に必要事項を記入して、指定されている受付機関(中小企業者は、事業所の住所がある商工会議所・商工会で、中小企業組合は、「埼玉県中小企業団体中央会」)に提出します。
申込に必要な書類は、以下のページで確認できます。
・参考:県指定様式集
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0805/seidoyushi/07j-forms.html
2.埼玉県中小企業向け制度融資の概要
埼玉県中小企業向け制度融資には、融資対象者や資金調達の目的別に、複数の融資制度が用意されています。主な制度の概要や対象者、融資限度額などについてまとめました。
(1) 新事業創出貸付
新規事業で、運転資金や設備資金が必要な中小企業者を対象とした制度融資です。1ヵ月以内に開業を検討している個人(法人は2ヵ月以内)で、事業計画を持っている、または開業してから5年未満であれば、融資を受けられる可能性があります。
新企業創出貸付の融資限度額は1,500万円以内(金利は0.7~0.9%)で、融資期間は運転資金が7年以内、設備資金が10年以内と決められています。
(2) 独立開業貸付
独立開業貸付は、フランチャイズ事業や、すでに勤務経験のある分野で開業する人など、特定の事業を始める予定のある人が対象です。また、すでに事業を展開している場合(開業してから2年未満)は、継続して売上実績があるなど、決められた要件を満たす必要があります。
独立開業貸付の融資限度額は3,000万円以内(金利は0.8~1%)です。融資期間は、運転資金が7年以内で、設備資金は10年以内と設定されています。
(3) 一般貸付
事業資金の融資を検討している中小企業者または中小企業組合向けの制度融資です。資金使途は、設備資金または運転資金で、融資の上限は6,000万円(中小企業組合の場合は4億円)に設定されています。融資年率は1.2~1.4%で、設備資金は最長10年間、運転資金は最長7年間利用可能です。
(4) 短期貸付
短期貸付も、長期貸付と同じく事業資金の融資を目的としています。中小企業者のほか、知事が認定した中小企業組合、またはその組合員に対して融資が可能です。保証付き・保証なしともに、融資限度額は2,000万円までと設定されていて、合計4,000万円まで(組合員の場合は5,000万円まで)借り入れられます。融資利率は信用保証付きが1.1%、信用保証なしが1.5%と異なります。融資期間は最長1年。
(5) 小規模事業貸付
小規模企業者または組合が対象の制度融資です。融資限度額は2,000万円(金利1.0~1.2%)で、最長7年間利用できます。ただし、保証付き融資の残高がある場合は、その分と申込金額の合計が2,000万円を超えないように注意します。
(6) 新型コロナウイルス感染症対応資金
埼玉県では、新型コロナウイルス感染症の影響で、事業を継続させることが困難な中小企業者、または中小企業組合(創業してから3ヵ月以上経過していることが要件です)を対象にした制度融資を用意しています。
「新型コロナウイルス感染症対応資金」もその一つで、直近1ヵ月の売上が、前年同月と比べて15%以上減り、今後2ヵ月間(合計3ヵ月間)も前年同期と比べて15%以上少なくなる見込みがある場合(小規模個人事業主は5%以上)は、融資対象者となります。
新型コロナウイルス感染症対応資金の融資期間は10年以内で、最初の3年間の融資利率はゼロです(4年目からは1.4%以内または1.5%以内)。融資の限度額は4,000万円以内と決められています。
(7) 経営安定資金(新型コロナウイルス対応負担軽減型)
「経営安定資金」には、「災害復旧関連」と、「特定業種関連」の2種類あります。「新型コロナウイルス対応負担軽減型」は、既存の経営安定資金を、経営安定関連保証(セーフティネット保証)または危険関連保証に対応させた制度融資です。
①災害復旧関連(セーフティネット保証4号・危険関連保証に対応)
新型コロナウイルス感染症の影響により直近1ヵ月間の売上が、前年同月と比べて15%以上減り、今後2ヵ月間(合計3ヵ月間)も、前年同期と比べて売上が15%以上減少する見込みのある中小企業者または中小企業組合が対象です(セーフティネット保証4号に認定された場合は20%以上減)。1億6,000万円まで借り入れ可能(融資利率は0.5%以内)で、最長10年間利用できます。
②特定業種関連(セーフティネット保証5号に対応)
直近1ヵ月間の売上と、前年同月1ヵ月間の売上を比較した時に、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、5%以上減少していて、さらに直近1ヵ月間と今後2ヵ月間の合計3ヵ月間の売上が、前年同月よりも5%以上減ると見込まれる、中小企業者、または中小企業組合が対象です。
特定業種関連の融資限度額は1億円以内(融資利率は0.6%以内)で、10年間の融資期間が設けられています。
セーフティネット保証または危険関連保証については、中小企業庁のホームページで確認できます。
・参考:セーフティネット保証制度
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_gaiyou.htm
(8) 経営あんしん資金(新型コロナウイルス対応負担軽減型)
新型コロナウイルス感染症が原因で、直近1ヵ月間の売上が、前年同月よりも下がり、今後1ヵ月間も前年同月比で売上減になると見込まれている中小企業者(または中小企業組合)に対して、1億円を上限に融資します。融資年率は0.8%以内で、融資期間は10年間です。
(9) 緊急借換資金
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、直近3ヵ月間の平均売上が、過去3年間の同期と比べて、1回でも下がった中小企業者(または中小企業組合)が対象です。融資限度額は1億5,000万円以内で、10年以内の融資期間が設定されています。
3.まとめ
埼玉県中小企業向け制度融資の概要や、実施している制度融資の種類について説明しました。原則として第三者保証人を必要とせず、低金利で長期間借り入れできる埼玉県の制度融資は、設備投資など、まとまった資金が必要な中小企業者にとって利用しやすい資金調達方法です。
融資を利用する際は、どれを選べば良いのか、融資額はいくらが妥当かなど、迷うことも少なくありません。その場合は、資金調達の専門家に相談することをおすすめします。必要に応じて専門家の手を借り、申込手続きをスムーズに進めていきましょう。
英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。