熊本県の制度融資/中小企業の資金調達のために

熊本県が実施している中小企業者向けの制度融資の利用を、検討している人も多いのではないでしょうか。

 

県内の中小企業者の融資を支援する熊本県中小企業融資制度には、新たに事業を始めたい人や、経営している事業の運転資金が必要な人など、資金を調達する目的にあわせて、複数の融資制度があります。各融資には、融資を受けるための要件が細かく決められていますので、要件に該当しているかどうか、とまどうかもしれません。

 

そこで本記事では、熊本県中小企業融資制度について、融資対象者や融資の種類など、わかりやすく説明します。

 

1.     熊本県中小企業融資制度とは

「熊本県中小企業融資制度」とは、熊本県が中心となって実施している、融資制度のことです。

 

中小企業者が、直接金融機関から融資を受けようとする場合、保証人や利息などの壁が立ちはだかり、融資を断念するというケースも少なくありません。熊本県中小企業融資制度では、県が保証料の一部を負担したり、熊本県信用保証協会が公的保証人になったりと、融資を受けることが難しい中小企業者でも、借り入れできるよう支援しています。

 

熊本県中小企業融資制度の対象者は、県内に事業の拠点を置く「中小企業者(「小規模企業者」も含む)」と「中小企業団体等」です。

 

ここで言う「中小企業者」とは、以下のように定義されています(資本金または従業員数のいずれかに該当すると、「中小企業者」と見なされます)。

・引用:熊本県中小企業融資制度のご案内

https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/107823.pdf

 

「中小企業団体等」とは、中小企業信用保険法に定められている団体のことで、「商工組合」や「協業組合」などが該当します。また、NPO法人も、中小企業団体等に含まれます。

 

・参考:中小企業信用保険法第二条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000264

 

熊本県中小企業融資制度を利用するには、「中小企業者」または「中小企業団体等」であることに加えて、以下の要件をすべて満たす必要があります。

 

・引用:熊本県中小企業融資制度のご案内

https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/107823.pdf

 

要件に含まれている「熊本県信用保証協会の保証対象となる事業」については、以下のページで確認できます。

 

・参考:許認可業種一覧表(熊本県信用保証協会)

https://www.kumamoto-cgc.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/04/kyoninka.pdf

 

2.熊本県中小企業融資制度の概要

熊本県中小企業融資制度には、開業に必要な資金を調達したい人や、新型コロナウイルス感染症による経営悪化で、資金の支援を必要としている人など、異なる資金調達の目的に対応した、融資制度が複数用意されています。ここでは、主な融資制度についてご紹介します。

 

(1)     創業者支援資金

熊本県内で、事業をスタートさせる予定のある中小企業者を対象にした、融資制度です。創業者支援資金には、「一般枠」と「再チャレンジ枠」の2種類あります。どちらの制度も、2,000万円が融資限度額で、融資期間は1~10年以内です。

 

①一般枠

県内で事業を始める予定のある人で、以下の要件に該当する人が利用できます。

 

・具体的な事業計画を持ち、1ヵ月以内に、開業する予定のある人(「特定創業支援を受けた者」は、6ヵ月以内です)

・具体的な事業計画を持ち、2ヵ月以内に、会社を設立する予定のある人(「特定創業支援を受けた者」は、6ヵ月以内です)

・事業を始めてから、または会社を設立してから5年未満の人

 

「特定創業支援を受けた者」とは、県内で「創業支援等事業計画」の支援を受けた人のことです。

 

産業競争力強化法第2条第20項第1号に基づいて、国から認定を受けた熊本県内の各市町村では、地元の創業支援等事業者(経済団体など)と連携して「創業支援等事業計画」を実施し、支援した人に対して証明書を発行しています。

 

・参考:市区町村別の認定創業支援事業計画の概要(中小企業庁)

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/43.nintei_kumamoto.html

 

②再チャレンジ枠

廃業した経験があり、県内で事業を再び始める予定のある人が対象です。ここで言う「廃業した経験のある人」とは、以下のように定義されています。

・経営していた事業の経営状態が悪化したことによって廃業し、廃業した日から5年以上経過していない人

・役員など会社の業務を執行する立場にあり、その会社が業況の悪化により廃業し、廃業した日から5年以上経過していない人

 

「再チャレンジ枠」を利用するには、「一般枠」で設定されている、いずれかの要件を満たす必要があります。

 

(2)     チャレンジサポート資金

「認定経営革新等支援機関」と、金融機関の支援を受ける一方で、事業計画の策定から実行・進捗などの報告ができる人を対象とした、融資制度です。チャレンジサポート資金の融資限度額は8,000万円で、最長7年間利用できます。

 

「認定経営革新等支援機関」(「認定支援機関」)とは、中小企業者が抱える経営上の悩みを解決することを目的とした、国認定の公的機関のことです。熊本県内の認定支援機関は、以下のページで検索可能です。

 

・参考:経営革新等支援機関認定一覧について(中小企業庁)

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.htm

 

(3)     小規模事業者おうえん資金

県内で事業を営んでいる小規模事業者に対し、運転資金または設備資金を融資します。熊本県信用保証協会の保証付融資残高がある場合は、その残高と、「小規模事業者おうえん資金」の借入額との合計額が、2,000万円以下になることが要件です。融資期限は、最長7年間利用できます。

 

(4)     新型コロナウイルス感染症対応資金

新型コロナウイルス感染症の影響で経済的なダメージを受け、資金調達を必要としている中小企業者を支援するための融資制度です。新型コロナウイルス感染症対応資金の融資を利用するには、事業所のある市町村長から、以下の保証制度の認定を受けている必要があります。

 

①セーフティネット保証4号

②セーフティネット保証5号

③危機関連保証

 

各保証制度の定義は以下のとおりです。

 

①セーフティネット保証4号

同じ事業を1年以上継続して営んでいて、「突発的災害」(新型コロナウイルス感染症など)が原因で、直近1ヵ月の売上が、前年同月と比べて20%以上減少し、今後2ヶ月間(合計3ヶ月間)の売上も、前年同期と比べて20%以上減ると見込まれている人。

 

・参考:セーフティネット保証制度(4号)

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_4gou.htm

 

②セーフティネット保証5号

「指定業種」に属する事業を展開していて、直近3ヶ月間の売上が、前年同期と比べて5%以上減った中小企業者。

 

「指定業種」を含めたセーフティネット保証5号の詳細は、以下のページで確認できます。

 

・参考:セーフティネット保証制度(5号)

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_5gou.htm

 

③危機関連保証

「認定リスト」にある要因(新型コロナウイルス感染症など)によって、直近1ヶ月の売上が前年同月よりも15%以上減り、今後2ヶ月間(合計3ヶ月間)の売上も、15%以上減少すると予測される人。

 

「認定リスト」など、危機関連保証制度の詳細は、以下のページで確認できます。

・参考:危機関連保証制度

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_crisis.htm

 

新型コロナウイルス感染症対応資金の融資限度額は6,000万円までで、最長10年間利用できます。

 

(5)     金融円滑化特別資金(新型コロナウイルス感染症分)

新型コロナウイルス感染症の影響で、業況が悪化した中小企業者に対する、融資制度です。この制度を利用するには、最近1ヵ月の売上が前年同月よりも減少した、または、今後2ヶ月間の売上が、前年同期と比べて減少すると見込まれていることが要件です。融資限度額は8,000万円で、最長10年間利用可能です。

 

金融円滑化特別資金(新型コロナウイルス感染症分)には、「県独自分」の他、「国指定分」として、「セーフティネット保証4号新型コロナウイルス感染症対策分」と、「危機関連保証新型コロナウイルス感染症対策分」の2種類あります。前者は、セーフティネット保証4号に認定された人、後者は「危険関連保証」に認定された人が対象です。融資限度額はどちらも8,000万円までで、融資期間は1~10年以内に設定されています。

 

各金融円滑化特別資金(新型コロナウイルス感染症分)の詳細は、こちらで確認できます。

・参考:【熊本県】(県制度融資)新型コロナウイルス感染症に係る資金繰り支援について

https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/61/64473.html

 

3.まとめ

熊本県中小企業融資制度の概要から融資対象者、融資制度の種類についてご紹介しました。

 

資金調達を必要とする中小企業者が、一人でも多く融資を受けられるために、県は熊本県中小企業融資制度を設置して、資金繰りの支援を展開しています。

 

直接金融機関から融資を受けるよりも敷居が低いという点が、この制度の大きな特徴です。県内で開業するために資金を調達したい、事業の資金繰りで困っているなどという場合は、制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

熊本県中小企業融資制度には、複数の融資制度が用意されていて、各制度によって融資要件が設定されています。どの制度に申し込むべきか迷ったら、資金調達の専門家に相談すると良いでしょう。専門家のアドバイスを参考に、条件にあった融資制度を選択していきましょう。

 

佐藤 世莉(さとう せり)

英国の大学と大学院で社会学、国際政治学、国際関係学を学び、2018年、フリーランスのWebライターとなる。幅広いジャンルの記事を執筆し、得意分野はビジネス、起業、就職、教育。「考えて書く」ことをモットーに、Webコンテンツをはじめ文章構成や要約文、論文、翻訳など、さまざまなライティング活動を展開中。ロジカルシンキングマスター、論理的思考士、WEBライティング実務士の資格を保有。