契約社員と正社員/経営者から見た両者の違いとは?

契約社員と正社員、どちらもよく聞く名称ですが、それぞれの定義や具体的な内容をご存じでしょうか。新たに労働者を雇用する場合、どちらを選択すべきか迷う場合もあるかもしれません。本稿では、契約社員と正社員の違いについて簡単に説明していきます。

 

1.契約社員とは

 

契約社員は、法律上の用語ではなく、一般的に、有期雇用契約における被用者を指します。

 

通常、労働契約は原則として①期間の定めのない契約(無期雇用契約)と、②期間の定めのある契約(有期雇用契約)とに分かれています(労働基準法第14条第1項)。

 

①の無期雇用契約の被用者は、一般的に定年退職まで雇用契約が継続することを前提とし「正社員」とよばれる一方、②期間の定めのある雇用契約の被用者は一般的に「契約社員」「嘱託社員」などとよばれています。

 

有期雇用契約の期間については、最長3年(例外的に5年の場合あり)という制限が定められています(労働基準法第14条第1項)。

 

そして、有期雇用契約における被用者の立場を不安定にしないため、決められた期間中の解雇や、不必要に短期間での契約を反復更新することは認められていません(労働契約法第17条)。

 

なお「有期雇用契約の被用者」とは、「契約社員」に限定するものではなく、その名称を問わず、嘱託社員、臨時社員、パートやアルバイト等であってもこれに含まれることにご注意ください。

 

本稿では、以後、原則として有期雇用契約の被用者のことを便宜上「契約社員」とよぶことにします。

 

2.契約社員と正社員の違い

 

それでは、「契約社員」と「正社員」には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

 

(1) 雇用期間と辞職の自由

前述のとおり、契約社員が正社員と大きく異なる点はそれが「有期雇用」契約であることです。

 

有期雇用契約では、数か月や1年程度など決められた雇用契約期間が満了すれば、状況に応じ更新されることもあるものの、原則として契約はそこで終了します。

 

これに対し、無期雇用契約である正社員の場合は、解雇や自主退職など特段の事情がない限り契約期間が途中で終了することはありません。

 

この点、正社員の場合は、雇用者に対して一定の予告期間を設ければ、特段の事情がない限り自主退職できるのに対し、契約社員が期間満了を待たず一方的にその労働契約を終了させれば債務不履行となってしまうため、基本的に契約期間中の辞職は認められません。

 

(2) 賃金や待遇に関する違い

 

契約社員には一般的に昇給・昇進や、賞与、退職金等の定めがなく、福利厚生も正社員とは異なることが少なくありません。

 

とはいえ、この点については後述のように、2021年4月に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」[1]および「同一労働同一賃金ガイドライン」などにより、契約社員と正社員との間における不合理な待遇差別の禁止が強化されていますので、ご注意ください。

 

(3) 契約社員雇用のメリット

 

たとえば全国転勤のある企業においても、契約社員には転勤制度がないことが多いので、諸事情から現在の居住地を離れがたい労働者にとっては契約社員としての就労が重要になってきます。

 

また、一般的に契約社員の担当する業務は範囲が限定されていたり、残業がないなど、ワークライフバランスを重視する従業員にとって働きやすい形態といえます。

 

企業側としてもこれらのような人材を登用できることはメリットといえるでしょう。

 

また、例えば繁忙期には増員したいが、すべて正社員として雇用すると平常時には過剰人員になってしまうような場合でも、期間限定で契約社員を雇用すれば、適度な人員調整が可能となります。

 

3.無期転換ルール

 

とはいえ、契約社員の雇用には注意点もあります。

 

まず、前述のとおり、契約期間途中での解雇や、短期間の契約期間を設けて何度も更新することは認められません(労働契約法第17条)。

 

ですから、短期間での契約を繰り返せば「急に雇い止めをしたくなった場合にも簡単に更新を拒絶できる」と思うのは間違いです。

 

更新が繰り返されれば契約社員側には当然「次も更新されるだろう」という期待が生まれます。そこで、このような期待を保護して雇用の安定を図るべく、繰り返し更新された雇用契約において雇い止めをする場合には、その理由の合理性や社会相当性が必要になるのです(労働契約法第19条)。

 

また、労働契約法で定められた「無期転換ルール」(労働契約法第18条)にも注意が必要です。

 

無期転換ルールは5年ルールともよばれています。簡単にいうと、契約社員を通算5年雇用した場合には、無期雇用に転換しなければならない制度です。

 

基本的に規模を問わずすべての企業が対象となり、また「契約社員」「パート」「アルバイト」といった名称を問わずすべての有期雇用労働者が対象となります。

 

無期転換ルールが適用されるのは以下の3つの要件をすべて満たした場合です。

① 同一使用者との間での有期雇用契約が通算5年以上

② 契約更新の回数が1回以上

③ 申入れ時点で同一使用者との間で契約している

 

以下、各内容を説明しましょう。

 

① 同一使用者との間での有期雇用契約が通算5年以上

 

ここでいう同一の使用者とは、労働契約の主体(たとえば企業)単位で定められるものであり、事業場が変更になっても同一企業内であれば対象となります。

 

同一使用者との間で有期雇用契約を締結していない「無契約期間」が一定以上の長さにわたる場合には、この期間は「クーリング期間」として扱われ、通算契約期間には算入されず、いったんそこまでの通算期間もリセットされます。

 

② 契約更新の回数が1回以上

通算5年の期間内に契約更新が1回以上行われていることが、無期転換申込権発生の要件です。

 

③ 申入れ時点で同一使用者との間で契約している

申入れ時点でも、通算5年の期間契約を継続してきた相手と同一の使用者との間で、有期雇用契約を締結していることが必要です。

 

なお、無期転換を避けるべく企業が5年の期間直前で使用者を変更したり雇い止めをしたりすると、労働契約法第16条の解雇権濫用や、同法第17条の途中解雇、同法第19条の雇い止め法理等により無効とされる可能性がありますので、ご注意ください(参考;厚生労働省無期転換ポータルサイトQ1-3等)。

 

以上の要件を満たした場合に、契約社員等から無期雇用契約への転換申入れがあった場合には、原則として企業はこれを拒むことはできません。

 

なお、無期雇用に転換したからといって、契約社員が自動的に正社員に変わるわけではありません。あくまでも期間の定めのある労働契約から期間の制限がなくなるだけで、その他の労働条件には特に変更がないのが通常です。

 

もちろん、この点に関する対応方法は企業により様々です。企業が無期転換適用者を「正社員」等に変更するよう、就業規則や労働契約であらかじめ定めておくことも可能です。

 

 

4.社会保険などの取扱い

 

契約社員であっても一定の条件を満たした場合には雇用保険や健康保険に加入する義務があります。また、労災保険については必ず加入させなければなりません。

 

詳しい条件については厚生労働省「人を雇うときのルール」や同労災保険に関するQ&Aなどをご確認ください。

 

また、契約社員であっても同一事業主に引き続き1年以上雇用されていることなど一定の要件を満たした場合には育児休業が認められます(参考:厚生労働省育児休業給付Q&A)し、同様に、所定の条件を満たす場合には有給休暇も付与する必要があります(参考:厚生労働省労働基準行政全般に関するQ&A「年次有給休暇とは」)。

 

なお、前述のとおり、2020年4月1日(中小企業への適用は2021年4月1日)に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」[2]、および「同一労働同一賃金ガイドライン」により、契約社員と正社員との間における不合理な待遇差別の禁止が強化されています。

 

したがって、同じ企業内の正社員と契約社員との間に(同じ業種や職種であっても別の会社の労働者と比較するものではない)不合理な差別待遇は認められませんし、待遇差について契約社員から説明を求められれば、その待遇差が不合理でない旨説明しなければなりません。

 

5.まとめ

近年、働き方の多様化に伴い、さまざまな雇用形態が存在しています。企業としては、正社員と契約社員どちらを雇用するべきか、その違いやメリット・デメリットなどをよく理解したうえで、自社に最適な雇用形態を選ぶのが良いでしょう。

 

 

執筆者:豊田 かよ (とよた かよ)
弁護士業、事務職員等を経て、現在はフリーライター。得意ジャンルは一般法務のほか、男女・夫婦間の問題や英語教育など。英検1級。

[1] 政府広報オンライン暮らしに役立つ情報「2021年4月1日からパートタイム・有期雇用労働法が中小企業も適用に」 参照

[2] 政府広報オンライン暮らしに役立つ情報「2021年4月1日からパートタイム・有期雇用労働法が中小企業も適用に」 参照